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とてもとても・・・・

長い夢を見ていた気がする―――――――




もう一度君に恋をする  第二十三話



〈クオンside〉


ツインテールの大きな瞳の少女が、駆け寄ってきた


「あなたは、妖精さん―――?」


あどけなく笑う笑顔は、あまりにも眩しい。




「・・・大丈夫?」


夏の熱さにバテた俺に、川の水で濡らしたハンカチを渡してくれた。



「・・・・キョーコと呼び捨てにしていいのは、ショーちゃんだけだから・・・・・・」


怒っている顔も、可愛らしい・・・・。



「・・・・・いかないで・・・・・」


泣きじゃくっている、幼い君に・・・・
俺は、大事な物を渡したんだ。

アレは――――――――――?




「コォォォォーーーーーーーーン・・・・・・・・・」


事務所の非常階段から、必死におりてきた君。



「よかったぁ~~~~~~~」


君に、君の“コーン”を渡した時の、笑顔。




君との、想い出のかけらが・・・・・・

ひとつ、ひとつ

――――――よみがえる。







「・・・・・・・・・・オ・・・ン・・・・・」


誰かが、呼んでる。
目を覚まさなくては。

そう思うのに、俺は君との思い出に酔いしれていたい気分だった。


「・・・・・クオン・・・・」


もう一度、声が聞こえる。
暖かい、愛しい人の声。

――――泣いているの?
少し、掠れている。

君を、泣かせたくはなかった俺は・・・・・
いつの間にか目を覚まし、傍で泣き続けている最上さんの頬へ、手を伸ばした――――――




*


〈キョーコside〉


私は、久しぶりにこの思い出の地へ来て、自分の世界に浸っていた。

クオンの存在を、忘れていた訳じゃないけど・・・・
心が踊っていて、それどころではなかった。

――――――そうしたら

急に後ろから、ドサッと大きな音がしたかと思って振り返ると


「・・・・・・っ・・・・・」


頭を抱え、苦しそうにうずくまるクオンの姿があった。


「っ!!!!!!クオン!!!!!!」


弾かれるように傍へと駆け寄ると、私がわかったのか、クオンと目が合った。


「・・・・・キョーコ・・・・ちゃん・・・・・」


―――――――えっ!?


その言葉を残して、クオンは気を失ってしまった。




*




私は急いで、ショーの実家でもあり、ここから歩いてすぐの老舗旅館へと行き、

”男性が倒れてしまったから”と、男性従業員を数人の手を借りて、

旅館にある空いている部屋へと連れて来てもらった。

この部屋は―――――――

私が使わせて貰っていた部屋だった。

そのあとすぐに、社さんとジョーさんにも連絡を入れて、二人にもここに来てもらった。


二人とも、かなり心配している。

でも私は、お世話になっている女将さんにも
駆け付けて来てくれたお二人にもあまりきちんと説明できず、
ただ・・・・・・クオンの手をとり、呼び掛ける事しか出来なかった。

ずっと、とめどなく流れる涙も拭わずに、譫言のように


「・・・・・クオン・・・・」


愛しい彼の名前を呼ぶ。
記憶が戻らなくたって、いい。

ただ、貴方が生きていさえ居てくれたら―――――。

だから、お願いだから、もう・・・・・・・
一人にしないで―――――――――


涙でかすんだ視界の中、急に頬に温かい感触があったかと思うと


「・・・・・泣かないで・・・・・、最上さん・・・・・・・。」


いつの間にか目を覚ましていたクオンの、その柔らかい声と、困ったような顔を見て・・・・・

寝ている彼の胸に飛び込み、思い切り泣いてしまった。

クオンは嫌がることなく、私が泣き終わるまでずっと・・・・・
頭を撫でていてくれた。




*



どれくらいこうしていたのだろう・・・・・

私が落ち着いた頃には、もうすっかり日が落ちていた。


ずっと、クオンの胸の中にいたい、と思う気持ちと・・・・

東京に戻って、明日からの仕事もこなさないと、と思う気持ちが混ざり合っている。



「・・・・・・落ち着いたようだね・・・・・」



抱きしめられたまま言われた言葉は、彼の胸から響いてくるように感じた。



「・・・・・・ん」



短く返事をすると



「体、起こしたいから・・・・・・

少しだけ離れてくれる、かな・・・・?」



遠慮がちに言われて、私はそっと彼から離れて起き上がった。


その後、彼も起き上がってきたから、彼の様子を見てみると・・・・・

何か・・・・・・・違う、気がする。


私の表情が、とても不思議そうにしているのがわかったようで

フワッと・・・・・・それはそれは、神々しい笑顔を浮かべると



「・・・・・・・ただいま・・・・・・・最上さん。」



その一言で・・・・・・・私はわかった。



「つ・・・・・・・つ・・・る・・・が・・・・・・さん・・・・・・?」



もう一度、止まったはずの涙が・・・・・溢れてくる。


涙が頬をつたう前に、敦賀さんは私の両頬に手を伸ばし

親指で、あふれ出そうになる涙を、拭ってくれた。



「ずっと待っててくれて・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・」



私はもう、何も言えずにただ・・・・・頷くしかできなかった。


ギュッと力強く抱きしめられると、一言。



「・・・・・・・・・・・会いたかった。」



私もずっと・・・・・・貴方に、会いたかったです――――――


言葉にはできなかったけれど、きっと

敦賀さんはわかってくれてる。



「・・・・・でも、どうして・・・・・・・・??」



私は、少し不思議だった。


確かに、あの場所は私にとっては思い出の地だけれど、

クオン=敦賀さんにとって私との思い出の地は・・・・・

どちらかといえば、軽井沢、よね・・・・・??


似ているから、とはいえ

こうもあっさり記憶が戻るかしら・・・・・???



「あぁ・・・・・・・それは・・・・・・・・」



敦賀さんが言いかけたところで・・・・・

ふすまが開く音がした。



「クオンッ!!!!!大丈夫だったかぁ~~~っ????」



「キョーコちゃんっ!!!!!!泣き止んだかな???」



ジョーさんと社さんが、入ってきてしまって、それ以上聞けなくなってしまった。





第二十四話へ、つづく・・・・・・





間に合ったぁ~~っ・・・・・・


ただいま、8時半でございます。

家事を無理やり中断し、PCに向かって最終入力です。

(今日は途中まで携帯で話を書いてました)


ふぅ~~~・・・・・・

とりあえず、忘れないうちに打ち込めてよかった、カナ??


相変わらず、最後のところが当初の予定通りにすすめなかった。

というのも・・・・・・


(まぁ、そこらへんは、この話のあとがきでしっかり書いてしまおう。)


ここで、補足なんですが・・・・

社さんとジョーさんは、クオンが目を覚まして

キョーコちゃんが泣き出した後、二人きりにさせようと

部屋を出て行きました。


旅館の従業員の人たち(女将さんも含む)も部屋には居ません。

旅館が忙しいから、と、一応キョーコちゃんは知っている子なので

安心しているのでしょうかね??



さて、クオンの記憶も戻ったということで・・・・・

ラストスパート、ですね。


うん、どうしようかな、ラスト。

(って、最後の最後は最初から決まってますが、ね。)



今回も最後まで拝読、ありがとうございます。