前回までの話→第一話第二話第三話第四話第五話第六話第七話第八話第九話第十話 第十一話 第十二話第十三話第十四話第十五話







今目の前で、彼が居る


それが例え、二人きりではなくても・・・・


それだけで、こんなにも


うれしいなんて――――――



もう一度君に恋をする  第十六話




私は自分の作ってきたお弁当をクオン監督に渡し、

私は、監督用に用意されていたロケ弁を・・・・・

何故か監督の控え室で、ご馳走になっていた。


・・・・・・きっと社さん、今頃心配しているだろうな・・・・・


監督の控え室に行くとは言っていかなかったから

どこへ行ったのか心配してると、思っていた。



「・・・・・・うまいっ!!!」



目の前に座っていた監督が、私のお弁当を一口食べて、そういった。


その後、ガツガツと夢中で食べていく姿を見て・・・・

ちょっと違和感を覚えた。


―――――――――あっ、そうか・・・・・・


敦賀さんは、そんな食べ方、しなかったんだ。

それに・・・・・・・

この食べ方、ちょっと先生に似てる・・・・・

って、当たり前か。

親子、だったんだもんね・・・・・・・・


私はそんなことを考えながら、渡されたロケ弁に手をつける。


いつもと同じなはずなのに、いつもより美味しく感じるのは・・・・・

監督と一緒に、食べているからかな???


監督は、私がずっと見つめているとは知らずに

食べることに夢中になっていた・・・・・。




*




「・・・・・ご馳走様でした。」



手を合わせ丁寧に言う監督は、やっぱり敦賀さんと一緒。

でも、食べる姿は違う・・・・


本当に不思議。



「・・・・京子さん、本当にありがとう。

とても・・・・美味しかった。」



「いえっ・・・・そんな・・・・・・

私には、これくらいしかできませんから・・・・・」



監督から渡されたお弁当箱を受け取り、あわててお礼を言うと

ふと思ったことを聞いてみた。



「お二人とも・・・・・お食事中は何もお話されないんですね。」



それを聞いた監督は、目をパチパチして驚いていた。



「そうなんだよねぇ~~~!!!!!

クオンのヤツ、初めて一緒にご飯を食べたときに

”食事中はしゃべるな”って怒ったんだよっ!!!!

そのとき、かなり怖かったから、それ以来食事の間はしゃべらないようにしてたんだ・・・・

って・・・・・京子さんも、静かだったよね・・・・???」



「お食事中にしゃべらないのは、当たり前ですから・・・・・」



「・・・・・・そうなの???」



「そうです・・・・・」



本当は、この話をしたかったんじゃなくって・・・・・



「・・・・お食事中に、今日の演技のことを聞かれると思ったので・・・・・」



ボソッと聞きたかったことを、言葉を選びながら言うと



「・・・・・・い・・・・今から言うよ、なっ?!クオン???

・・・・・・・・クオン???」



監督は、ジョーさんの呼びかけにハッとすると、

コホンとひとつ咳払いをして口を開いた。



「さっきのシーン・・・・・覚えてる??」


「はい、もちろん。

それは・・・・・・・」



「瑛多と再会した紅子は、純粋な瑛多に少しずつ惹かれていく。

さっきのシーンは・・・・・

紅子が、瑛多への思いを自覚してからのシーン・・・・だよね??」



「・・・・・そう・・・・・ですね・・・・・・」



なんとなく・・・・・何が言われるのか、わかってきた。



「・・・・あの表情じゃあ・・・・・紅子じゃない。」



っ!!!!!



「君は・・・・・・今も、紅子を演じている。

きっと、ずっとそうやって演じてきたんだろう。

けど・・・・・・・本当は、違うんじゃないのか???」



クオン監督の言葉が、私の胸に突き刺さった。

私は、もう監督の顔を見ることができずに

控え室の床を、見つめていた。



「前なら、気づかなかった。

きっと・・・・・今のままでOKを出していただろう。

けど・・・・・・昔の君の演技を見てしまったから・・・・・・

あの時の君は、演じていたんじゃない。


その役そのものに、なっていたんだ・・・・・・


だから、君も・・・・・・紅子になってほしい、と思ってる・・・・・・」



私は、監督の言葉を聞きながら・・・・

ただ床を見つめることしか、できなかった。


とそのとき―――――


バンッ!!!!!!


大きな音がして、顔を上げると

監督の控え室に、社さんが入ってきた。

そして、足早に監督の前まで来ると、胸倉をつかんだ。



「そんな言い方、するなっ!!!!

この4年間の・・・・・彼女の苦労も知らないでっ!!!!!!!

元々・・・・・彼女の演技が変わったのは、他でもないっ!!!!!

お前がっ・・・・・・蓮が居なくなったからなんだぞっ!!!!!!」



・・・・・・・あっ・・・・・・・


社さんの言葉に、私は思わず涙が出てきそうになった。


ジョーさんは、訳もわからず、二人をただ眺めていた。


クオン監督は・・・・・訳がわからない、といった表情をみせている



「・・・・・・・どうして・・・・・・・・

どうして、いつも・・・・・・・・お前なんだよ・・・・・・・・」



社さんは、苦しげな表情でこういったあと、

監督の胸倉をつかんでいた手を離すと



「キョーコちゃん・・・・・行こう・・・・・・」



私の手をつかみ、控え室から出るように促した。


私はそのまま、社さんと部屋から出ようと歩いていくと



「・・・・・待ってっ!!!!!」



扉の近くに差し掛かったときに、声をかけられた。


振り向くと、クオン監督が悲しげな表情をして、こちらを見ている。



「・・・・・今の・・・・・・本当??」



あっ・・・・・・

私は、何も言えなかった。

確かに・・・・・敦賀さんが居なくなって・・・・・

前のような演技はできなくなった。

でも、それは・・・・・・

敦賀さんが居なくなったことが影響してはいるけど

敦賀さんの、せいではない。


何も答えられないでいると・・・・・・



「蓮と・・・・・・君は・・・・いったい・・・???」



小さな声で、つぶやくように言った言葉に、社さんがすぐに反応した。



「・・・蓮とキョーコちゃんは、ただの事務所の先輩後輩の間柄だっ!!!!

だから・・・・・何も心配しなくていいっ!!!!!

それより・・・・・・

彼女には、ちゃんとした彼氏も居るんだから、

今度からお弁当も作らないし、控え室にも一人では行かせないっ!!!!

・・・・・わかったなっ!!!!!」



はき捨てるように言ったその言葉に、私自身が傷ついた。


社さんに手を引かれ、部屋から出されそうになる。


もう一度、監督の顔を見たら

明らかに・・・・・傷ついた表情をしていた。


あっ・・・・・・・・・・・


私は思わず、社さんの持っている手を振り払い、

すぐさま監督のそばへと駆け寄り、目の前にたった。


「・・・・ただの、先輩後輩なんかじゃ、ありませんっ!!!!

私は・・・・・・私は、敦賀さんのこと、好きでした。

ただ・・・・・お互いすれ違って、二人の気持ちは通じ合わなかったけど

敦賀さんも・・・・・・私のこと、好きだって言ってくれたんです。

だから・・・・・・・・

だから、そんなに、苦しそうな顔をしないでっ!!!!!」


私の口からは・・・・・本当の想いがこぼれ出てしまっていた。




第十七話へ、つづく・・・・




はい、今回はここでいったん切ります。

社さんが、ドンドン嫌なやつになってきてしまい・・・・

何故か今回、キョーコちゃんが暴走してしまいました。

(思っていた話から、ドンドンそれていく・・・・・)

ハハハ・・・・・

まぁ、なるように、なるかっ!!!!!