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どうして、君の声を聞くと・・・・・

穏やかな気持ちになるのだろう。


どうして、君がそばに居ると


心が、温かくなるのだろう・・・・



――――――どうして??




もう一度君に恋をする  第十三話




<クオンside>



今、この状態は、いったい何なのだろう・・・・・


今から、この部屋でDVDをみんなで観るんだなんて・・・・・


大体・・・・・・

記憶を無くしてしまう前の、俺の姿なんて・・・・・・

本当は見たくなんかないのに。


――――――今の自分とは、全然違うのだから――――――


じゃあ、なぜ俺は受け入れてしまったのか・・・・・??


それは・・・・・・・・・・



今目の前で、自分のマネージャーである社さん、という人と

ソファの位置でもめている、この京子、という女優の願いだから・・・・・・。


どうして、彼女の言葉は・・・・・・聞こうと思えるのだろう。


この答えは・・・・・・・・

俺のなくしてしまった記憶の中に・・・・・・あるのだろうか。




*



「じゃあ、再生するぞぉ~~」



ジョーの声と共に再生されたVTR・・・・



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ドラマの撮影のスタジオ内。

撮影しているのは、ドラマの監督本人のようで・・・・

他のスタッフに”監督ぅ~”と声をかけられている。



しばらく移動していると、出演者たちが休憩しているところへやってきた。


その中には・・・・・・・

昔の、記憶を無くす前の俺・・・・・俳優、敦賀蓮も居る。

それに・・・・・・・・彼女は・・・・・・・????



「・・・・・監督、これはどうしたんですか??」



穏やかに笑いながら言う、敦賀蓮。

コンコンと音がするから、きっとこのカメラの上でも叩いているのだろう。



「あぁ・・・・敦賀くん。これは・・・・・

一応記念に撮っておこうと思って・・・・・

このドラマのメイキングだよ。」



「・・・・・記念、ですか??」



「そう。・・・・・・ほとんど私用目的だから、安心して普段どおりにしていて

かまわないから。」



「えぇ~~~~?!ホントですか???

何かの特典でついてくる、とかいうのに使うのじゃなくって???」



声がしたほうに画面が変わり、髪の長い女性が映った。



「・・・・・はい。ちゃんと、そういった特典映像は・・・・・

また違うときにきちんと撮影しますから、安心してくださいね、百瀬さん。

皆さんのリラックスした姿を撮りたいので・・・・・・」



「・・・・・わかりました^^」



可愛らしく笑っている、百瀬さん、と呼ばれた女優は、安心して

他の出演者と話し出していた。



「さて・・・・・・そ。

あっ!!!いたいたっ!!!!」



監督の独り言の後、少し歩いて、一人の女性の前に止まった。

(っ!!!)



「京子さん。初めてのドラマ出演だけど・・・・・・感想を教えてくれないかな??」



「ふえっ???

っ!!!!!って・・・・・これって・・・・・・カ・・・・・カメラ・・・・・ですよね????」



声がして振り向いた京子さんは、一瞬驚いた顔をしたかと思うと

おびえるような顔つきをした。



「・・・・・これは、自分用のメイキングを撮影しているだけなので

全然気にしないで、普段どおりの京子さんで居てくださいね。」



「えっ???

あっ・・・・・・・はい。

ええ~~~っと・・・・・・・・

初めてのドラマは、いろいろ緊張もして失敗もありましたが・・・・・・

とても勉強になりましたし、楽しいですっ!!!!」



ニッコリと笑うその顔は・・・・・・

今の、彼女からは想像もできないような、清らかな笑顔。


(・・・・・・これって・・・・・・)


チラリと京子さんのほうを見ると、彼女はジッと真剣な表情で観ている。

そして、その隣に座る社さんは・・・・・・

かすかに目が潤んでいた。


(・・・・・・・なぜだ???)


TV画面のほうへ見直すと、今度は違う俳優がなにやら聞かれていたのだが

画面の片隅のほうで・・・・・・

敦賀蓮と京子さんが、二人で話している・・・・・


(っ!!!!な・・・・・何だ・・・・あれは・・・・・・)


その、隅で映っている敦賀蓮の表情が・・・・・

最初のときとは全然違う。

あの表情は・・・・・・・・・

もしかして―――――――???




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<キョーコside>



VTRが始まり・・・・

緒方監督の優しい声を聞いて、懐かしく思っていると

急に・・・・・・

敦賀さんが映って・・・・・・

久しぶりの、ずっと心の中にいた彼が、目の前に映し出されて

私は、胸が締め付けられそうになった。


この頃の私は・・・・・・

今とは違って生き生きしていて・・・・・

この後の・・・・・絶望を知らない。

自分の、何も知らない、無垢な笑顔に、少しだけ腹がたった。


その後、貴島さんが映っているとき、その画面の奥で

敦賀さんと私が、なにやら話しこんでいた。


確かこのときは・・・・・・・

”最上さん・・・・・さっきは何を聞かれていたの??”

とか・・・・・・

”最上さんが有名になったら・・・・

きっと、このメイキングがいつか出てきたりしてね。”

とか言われて、からかわれたんだっけ。


フフフッと思い出しながら笑っていると、ふとクオン監督が気になって

チラリと彼のほうを見てみると

彼は・・・・・TV画面を観たまま、固まっている。


・・・・・・・・・・どうしたんだろう??


私は、その後ずっと・・・・・・

クオン監督を見つめていた。




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「キョーコちゃんっ!!!!」



社さんに呼ばれ、社さんのほうへ向きなおすと



「もう・・・・・・VTR終わったよ??」



「あっ!!!!・・・・・・すいません。」



「(コソッ)・・・・・・監督のこと、ずっと見てたの??」



耳元で小さな声で言われて、私は頷いた。



「・・・・・・懐かしかったね。

昔の・・・・・・蓮と、キョーコちゃんが居て・・・・・・

一番、幸せなときだったのかもしれない。」



その言葉に、私は・・・・・・

何もいえなかった。


”そうですね”とも”違います”とも・・・・・・・・


ただ・・・・・・社さんをジッと見つめることしかできなかった。



「・・・・・・・クオン???どうかしたのか????」



ジョーさんの声がしたほうに振り向くと、監督はあれからまだ

ずっと固まったままだったようで・・・・・

呼びかけられてわれに返ったようだった。



「・・・・・なんでもない。ちょっと・・・・・・考え事をしていただけだから・・・・・」



「・・・・ならいいんだけど・・・・・」



安殿表情を浮かべるジョーさんと・・・・・

まだ何か考えてるような表情のクオン監督。

クオン監督をずっと見ていたら、バチッと目が合ってしまった。


彼は表情を変えることなく、ジッと私を見ながら



「さっきの・・・・・・昔の京子さん・・・・・だよね??」



「はい・・・・」



「・・・・・・この作品って・・・・・タイトルは??」



「ダークムーンです」



「・・・・・・」



クオン監督は黙って少し考えた後、ジョーさんのほうを見ると



「この作品って・・・・・用意してある??」



「もちろんっ!!!!敦賀蓮が演じてたものは、すべて用意してある。

大丈夫だ。」



この言葉を聞いて、監督は社さんと私のほうへ向き直り



「申し訳ないけど、今から急いで昔の作品を観てみるから

このまま帰っていただいてもいいですか??」



「あっ・・・・・」



「わかりました。キョーコちゃん、行こう。」



私は少しでも長くそこに居たかったのだが、社さんは私を行かせようと促した。


ペコリと一礼をして、退室しようとすると



「・・・・・・京子さんっ。」



振り返ると、クオン監督が私を見つめたまま



「今日は・・・・・ありがとう。

また今度・・・・・・ゆっくり話を聞かせてくれないか???」



「・・・・・・えっ????」



「昔の俺のこと。

きっと・・・・・・あなたに聞くのが、一番いいような気がするから・・・・・」



えっ―――――――

どうしよう・・・・・・・すごく・・・・・・・うれしいっ!!!!!



「はいっ!!!!」



私は、敦賀さんが居なくなってからずっとできなかった満面の笑みを浮かべていた。





第十四話へ、つづく・・・・・・・・





今回は、かなりの変則な書き方をしてしまいました。

でも・・・・・VTRを見ながらのそれぞれの気持ちを、表したかったので・・・・・

読みづらかったら、申し訳ないです。


ちょっとずつ、二人の距離が縮まってきてますね。


これから、どうしようかなぁ~。


実は、少し話が変わってきているので、最初考えていた筋書き通りにすすまられるのか

心配です。

こうなったら・・・・もう一度練り直し??


それは・・・・・時間がかかりそうですね。


ハァ~~~・・・・・がんばろう。