ぼくの神様/生憎の雨。
1. ぼくの神様
5ヶ月ぶりのリリースとなった、生憎の雨。のデジタルシングル。
エレクトロなトラックに、メランコリックなメロディを重ねる音楽性。
ラップも板についてきて、ソロとしてのスタイルも定着したと言える魔喪さんですが、歌詞については本作でも、精神面での不安定さや、それに伴う依存性の危うさを切り取っていて、メンヘラ系の第一人者としての矜持を貫いていました。
サウンド面では、"過去のもの"になってしまうことを危惧する味方も出てきたV系シーンにおいて、古き良きに迎合しない最先端を志向。
バンドサウンドとはかけ離れた境地に達した彼ですが、歌詞のスタンスにおいては、メンヘラ系の勢いがひと段落して、メタ的な意味合いを持ち始めた中にあっても、頑なに変えずにいるというのは、改めて考えると意外な気もしてきます。
もちろん、R指定の歌詞に刺さって今に至るファンにとっては、だからこそ帰るべき場所になっているということ。
若者の脆さ、危うさを代弁しつつ、精神性としては変わらないメッセージを放ち続け、サウンド的には新しいフェーズへ進んで、より刺さりやすい世代のリスナーを開拓することも出来るようになった生憎の雨。
このリアルタイム性を5年後、10年後も見据えてどう捉えるか、という戦略的な駆け引きはあるものの、やはり強いな、といったところですね。
バックバンドを抱え込むのではなく、映像も含めてセルフで完結させるミニマムなスタイルにこだわるのも、ちゃんと世の中的なメインストリームを押さえて選んでいるのだろうな、と。
この「ぼくの神様」は、そんな彼の楽曲の中でもキャッチー性が高く、バンド経由でも受け入れやすいメロディを用意。
フックとなるサビのフレーズも、一度聴いたら忘れないであろうシンプルさと、それ故のインパクトがあって、これが魔喪さんの歌声で響くことでテンションが上がるリスナーも少なくないはず。
どこまでもリアルをパッケージしようとする、これを待っていたと叫びたくなる1曲です。