洗脳/生憎の雨。
1. 洗脳
2. 第三次世界大戦
3. ロックのせいにしないで
4. わたしの彼はバンドマン
5. ねぇ、先生?
2020年10月31日の始動から1周年という節目に発表された生憎の雨。の2ndミニアルバム。
前作同様、配信限定でのリリースとなっています。
約半年という短いインターバルで届けられたミニアルバム。
音楽性としては、引き続きデジタル気質の強いアプローチを多用していますね。
バンドであるR指定とは区別をして、という捉え方もできるのでしょうが、彼の場合、もっとシンプルに、今格好良いと思うサウンドを鳴らしているだけ、と見たほうがしっくりくる。
ジャンルにとらわれないというのは、こういうスタンスの上で言えることなのだろうな、と。
お経と言うのか、呪文と言うのか、ダンサブルなデジタルサウンドに不気味な旋律を重ねる表題曲、「洗脳」でスタート。
2分台というショートチューンであるにも関わらず、何時間も電波を浴びせられていたかのような、タイトル通りの"洗脳"を受けると、シームレスに「第三次世界大戦」に続けていきます。
ダークなトラックに、魔喪さんらしい痛烈なリリック。
ヒップホップの要素も自然体で取り込んで、スタイリッシュに仕上げながら、世界観としてはディープに潜っていくところに、ただ流行を追っているだけではない最先端のクリエーターとしての矜持を見ました。
歌モノとしての役割を持ちながら、ダラダラと引っ張ることなくコンパクトにまとめたのは「ロックのせいにしないで」。
歌謡曲調で、カラオケ風のMVも面白いのですが、ポイントとなるのは関西弁で展開される歌詞なのかな。
汎用的な言葉で小奇麗に仕立てるよりも、登場人物に血が通っているように感じられるひと工夫。
これだけで、ストーリーがより立体的に想像できるようになるのですよ。
"ロック"が、音楽なのか、お酒なのか、ダブルミーニング的になっているのも効いていました。
後半の2曲は、魔喪さんの本領発揮。
メンヘラ系ブームの主犯格である彼が歌うことでニヤリとしてしまう「わたしの彼はバンドマン」の切れ味は相変わらず鋭く、リスナーのリアルに寄り添う「ねぇ、先生?」も、特定の層には深く刺さるのでしょう。
インパクトに特化するわけではなく、音楽を洗練させたうえでの衝撃作。
方向性がクリアになった感もあり、アルバムとしての聴きやすさは増したのでは。
前作が7曲を収録していたのに対し、本作は5曲。
ボリューム的には、幾分物足りなさはあるのですが、粒が大きい生憎の雨。ブランドは健在。
ヴォーカリストとしての成長も感じさせる作品です。
<過去の生憎の雨。に関するレビュー>