ぼくらはみんなサイコパス/生憎の雨。
1. 嘔吐 (Remastering ver.)
2. 草草草
3. 自殺願望第一
4. 眠剤
5. 不純異性交遊
6. インスタ映えない (Remastering ver.)
7. 404 NOT FOUND
R指定のVo.魔喪によるソロプロジェクト、生憎の雨。の1stミニアルバム。
現時点では、配信限定でのリリースとなっています。
変わらない部分は変わらずに。
アップデートする部分は最新に。
気が付けばすっかりシーンを引っ張る側にまわった魔喪さんですが、生憎の雨。については、気負いなく自由にクリエイト活動を展開している印象。
MVの映像制作も自ら手掛ける等、多才さを発揮していました。
変わらない部分としては、"現代のリアル"を切り取った歌詞でしょう。
J-POPでは触れにくい闇の部分に肉薄し、多くのリスナーの受け皿になる。
"メンヘラ系"というサブジャンルを確立するまで影響力を増し、その結果、アプローチとしては陳腐化した感もありましたが、やはり本家の切れ味は違うなと。
時事ネタも詰め込みつつ、過剰な演出なく、だけど耳に残るリリック。
言葉の選び方については、本当に上手いですよね。
アップデートしているのは、当然、その音楽性。
ヴィジュアル系バンドとしての遺産には頼らず、純粋に、現代のリスナー層にどんな音が響くのか、それだけを追求しているのですよ。
バンドサウンドへのこだわりとか、ソロだからこそのアプローチとか、音楽について制約を設ける方向に考えるのではなく、HIPHOPもあれば、お洒落なロックに、しっとりした歌モノ、なんでもござれ。
歌詞の世界観を表現するのが最優先で、サウンドはそれを構築するひとつの要素でしかない。
そんな矜持が見え隠れしています。
そのため、言ってしまえば節操がないのですが、好きな曲だけプレイリストに入れて聴く、現代のスタイルを反映しているように思うのは、考えすぎでしょうか。
どうせオリジナルのプレイリストにぶち込まれるのだから、通して聴かせる必要はなく、1曲でも当たれば良い。
あるいは、普段から節操なく音楽を聴いているなら、ちょっと構成が強引でも気にならないでしょ、という割り切り。
魔喪さんなら、そんな戦略を思い浮かべていても不思議ではなく、配信のみというリリース形態も、それを裏付けている気さえしてきます。
なお、先行配信されていた「嘔吐」と「インスタ映えない」は、リマスタリングが施されての収録。
この2曲だけでも、本作のバラエティ性は約束されていたようなものですが、リードトラック扱いになる「眠剤」をはじめ、1曲ごとに衝撃が待っている。
「草草草」における反体制的な鋭さや、「不純異性交遊」で見せた若さ特有の危うさ。
音楽性に変化はあれど、この質感、間違いのない魔喪節でした。
<過去の生憎の雨。に関するレビュー>