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核心/マイナス人生オーケストラ

¥2,400
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1. あしたのあたしシアター ~Tomorrow Once More~
2. スプーン曲げの少年
3. とある厭世家の遺言
4. 寄生人
5. 厭世

"心の旅"は、まだ終わってはいなかった。
凍結からの解凍を果たしたマイナス人生オーケストラの、新体制第一弾となる5thミニアルバムです。

Ba.小川"ホンコン"小太郎の脱退による凍結から半年。
新たなBASSOIDとして、ex-ツヅキマシテ、の矢沢"オーガニック"もとはるが加入。
個性の強いバンドに、別ベクトルの強烈な個性が加わったということで、どのような化学反応を見せるのかに注目が集まりました。

結論として、音楽性に大きな変化はなし。
メインコンポーザーである栗山"HaL"ヰヱスさんが、引き続き作詞・作曲・編曲を手掛けていることもあり、メンバーチェンジによる大幅なテコ入れがあったという印象は受けません。

とはいえ、まったく従来通りかと問われれば、そんなこともなく。
跳ねたリズムで、内面的な激しさを表現するような「とある厭世家の遺言」など、これまでにはなかったタイプの楽曲が生まれ、「あしたのあたしシアター ~Tomorrow Once More~」や「厭世」といった、彼らにとっての王道的なナンバーと融合しているのですよ。
変わらない部分と、進化した部分。
双方をバランス良く提示しており、サウンドのクオリティ面も踏まえれば、総合的な完成度は過去最高かもしれないぞ、と。

タイトルの言葉遊びも記憶に残りやすい「あしたのあたしシアター ~Tomorrow Once More~」は、アップテンポでメロディアス。
サビが2つ用意されているような構成で、トップバッターとしてのインパクトは抜群です。
序盤に、サブタイトルから連想されるカーペンターズのオマージュも挿入され、実に気の利いた楽曲に仕上がりました。

激しさを見せつつ電波を発信する「スプーン曲げの少年」は、皮肉たっぷりな歌詞が彼ららしい。
パートごとにダークになったりポップになったり、という強弱のつけ方は、ありそうでなかった感覚。
掛け合いが新鮮な「とある厭世家の遺言」も含めて、マイナス人生オーケストラの新機軸を見せていくのが、この部分と言えるでしょうか。

しんみりしたバラードナンバー、「寄生人」は、一気に状況をひっくり返すオチが秀逸。
もともとメロディに定評がある彼らですが、この仕掛けによって、切なさが異常性に切り替わってしまうから面白いものだ。
ラストは、マイナーコードで疾走するお得意のデジタルチューン、「厭世」。
タイトルからして、まさにど真ん中。
復活を高らかに告げる、リスナーがもっとも期待していたであろう楽曲となっていたのでは。

それにしても、彼らの場合、5曲で2,400円がやたら高く感じてしまうなぁ。
もちろん、今までのCDの価格設定が良心的すぎただけで、シーン全体を見れば適正価格なのは重々承知しているので、そこが精神的な障壁にならないことを祈るばかり。
内容が充実しているだけに、購入を躊躇っている人がいるのであれば背中を押して線路に突き落としたい1枚。

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