「なんでもいい。
笑っていれば
それでいい。」by三つ子母ちゃんの願い
超未熟児 先天性側弯症...
言葉も出ない不安と恐怖は、ようやく私を母にしてくれた。
21年後の奇跡に、今、思う。
みつご事件簿ー入院編ー
・
3つ子 0歳
手王切開後、2日目
看護師さん
「3つ子ちゃんたちに会いに行きましょう。」
やった。楽しみだ。
午後
夫がくる
「ちょっと先に、見てきたよ。
3番ちゃんが、背骨が少し曲がっているけど、大丈夫。
みな、元気だから。」
私
「え?背骨が曲がっているの?」
「大丈夫。小さく生まれてNICU(赤ちゃんの集中治療室)に入るときに
脳波や心臓などすべて検査するんだ。
普通に生まれたあかちゃんは、
そこまでしないよ。
それで、レントゲン撮ったときに
背骨が少し曲がっていることが、わかったんだ。
わからないまま、大きくなる子もいるんだよ。」
大丈夫?
いつもより元気そうに話をする夫の様子に
これ以上聞くのをやめた。
午後
・
車いすに乗り、点滴を持ちながら、NICUへ。
主治医と、小児科、NICUの医師が、
保育器のそばにいる。
小さい
手のひらに乗るほどの赤ちゃんは初めて見た。
元気そうに動いている。
少しして
主治医がレントゲンを私に見せた。
「側彎(そくわん)があります。
他は異常なしです。」
言葉がなかった。
怖かった。
はっきりと、S字の形をした背骨。
夫を見る
大丈夫だよ。これから検査するから。
主治医の腕をつかんだ。
「あの。この子、歩けるんですか?
お座りとか、できるんですか?」
聞きたいことはたくさんあるのに、
言葉にならない。
「わからないです。
これから整形外科など専門に、診てもらいます」
わからない?
夫
「調べるから。大丈夫だよ」
車いすを押されてベットに戻る。
「お医者さんなのに、
わからないって、なんで?」
夫が話し出した。
「専門のことは専門にしか
わらないことがあるんだよ。
医者は
すべてわかります。ということはない。
ぎゃくに、
わからないです。
と、答える医者のほうが
信頼できるってことだよ。
整形外科の専門医に聞こう」
そうなのか。
ベットに戻り一人になる。
レントゲンに映るS字の背骨が頭から離れない。
♬ こんにちは、赤ちゃん
わたしーがーまーまーよ ♬♬
病室に流れたBGMに
突然涙があふれた。
私、ママなのに。
私がちゃんとしていなかったから、
3番目の背骨がまっすぐに育たなかったんだ。
シャワー浴びたからか?
そういえば、最初のころ、
自転車でお腹をぶつけた。
それでなの?
ママなのに。
ごめんなさい。
泣いた。
点滴のチェックに来た看護師さんが
私の様子に気づき、
そっと箱ティッシュを
テーブルの上においてくれた。
感謝
一晩泣いた翌朝、
決心する。
歩けなくっても、座れなくってもいい。
私が一生、この子の車いすを押す。
ようやく母になった瞬間であった。
・
20年後
・
「大学で野球やる、監督に入部届出した。」
20歳の3男空(そら)は、
高校卒業後
アメリカカンザス州で
コミニュティカレッジに通った
そ。いいんじゃない
と答えながら、
「奇跡」って普通にあるんだな。
と、しみじみ思う。
「先天性側彎」
今でも背骨は曲がっている。
経過観察、手術なし。背は少し小さいけれど、
歩いている。
走っている。
笑っている。
野球をしている。
彼がたどった人生のすべてに、
いつも母は「奇跡」を見てきた。
今では、
「ママ、そういうところ、頑張ろうよ。
ちょっとぬるいよね」
「おい、陸、勉強できるようになったのか?」
と家族中が認める、
毒舌チャッカマン。
現在
21歳 コロナで一時帰国中。
・
6月1日18:00
・
ジョナサンの
バイトから戻る空(そら)
ねえ、今日20:00に
全国でサプライズ花火やるんだってー
へー。
どこでやるかは報道されてなくて、
今日の20:00って時間だけ知らされてるんだよ。
へー
神宮球場で花火、
ワンチャンありそうじゃね?
(ワンチャンス。もしかして、の意味)
そうだね。
今日のランは20:00ね
わかった。
(コロナ自粛依頼、夜にランニングしている。)
・
19:50
・
まま、行くよ。
はいよー。
神宮までって、結構な距離じゃない?
へっへっ
(毎度息が上がる運動不足母ちゃん)
花火を見ようと
町の人たちがぱらぱら。
・
20:00
・
しーん。
音、しないね
うん。神宮はなかったかあ。
かえろ。
うん。
花火は見ることができなかった。
けれど、
21年前
彼の足になって車いすを押して歩こうと
決心した私が、
こうして、彼の後ろをついて走ることの奇跡と
見に行こうぜ。
と言う、
いつも、楽しむ何かを求めて笑う
空(そら)の笑顔は
母にとって、花火よりもサプライズ。
コロナの終息を祈る花火に
感謝
家に戻り。
空(そら)
東京は調布でやったらしいよ。
しゃーない。
「府中の老舗花火店がサプライズ全国一斉プロジェクト」はこちら★
つづく
前回の事件簿→「大学附属に通う弟を見て、進学校に通う三つ子の兄が感じること弁論大会原稿本人直筆」
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「考えすぎなくていいんだよ。」と、3つ子子育て20年間の経験をお伝えしてます。
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