厚生労働省は5年に1度、将来の人口推計に関する原案を作成する。これによると1億人を割り込むのは2053年前後とし、前回の推計と比べて5年ほど遅くなった。人口減少の速度は鈍化すると見ているようだ。
同じく(厚生労働省の)国立社会保障・人口問題研究所が公表した50年後の日本の人口推計では、近年、30代から40代の結婚や出産に上向き傾向が見られるとして、合計特殊出生率(女性の生涯出産数)も前回の推計(1.35)を訂正し、1.44程度まで上昇すると予測している。
この結果、日本の総人口は、2060年に8674万人まで減るとした前回の推計から、2065年には8800万人の見通しと上方修正された。
本当だろうか。計算上は正しいとはいえ実態から乖離しているのではなかろうか。高齢化率の高い人口構成を考慮した試算とは思えないのだ。30代から40代の上向き傾向も然りで、第2次ベビーブーム世代の駆け込みであり、あくまで人口構成の歪みが生んだ一過性に他ならないのだが。
2020年11月1日現在、我が国の高齢者(65才以上)人口は昨年(6月)より43万人増の3621万人で、いずれ4000万人を超える。最多層である団塊世代は各年代毎に約250万人が存在するが、これとて不老不死ではない。如何に医学が進歩したところで50年後にはまずいないだろう。
もし、50年後の平均寿命を90才とするなら、現在の40代は50年以内には90才を超える。現在、40才から64才の人口は約4222万人だ。すると、65才以上の3621万人に、この4222万人を加えて7843万人となる。即ち、50年後には、この7843万人の大半はいないものとして計算しなければ整合しない。
日本の総人口は、1億2577万人(住民基本台帳に基づく2020年11月1日現在)である。ならば50年後の人口は、12577-7843=4734万人に、90歳以上(現在244万人)と、その後の出生数を加算して成り立つ。だが、これは50年後に今現在0才から39才まで全員の存命が前提であり、実際は85%が上限であろう。
すると、4734×0.85+400(90歳以上の推定人口)=4118万人となり、これに新たな出生数を加えた数字が50年後の人口となる。
昨年の出生数は、86万5234人(出生率1.36)と、4年前に100万人を割って以降も急減である。1.44で推移したにせよ1世代(約30年)後には70万人近くまで下がってしまう。50年後なら50万人がやっとだ。平均しても60万人に届かない。50年間の合算でも3000万人に満たず、上記の4118万人を足しても7200万人程度しかない。
これで、どうして8800万人になるのか。上述の如く合計特殊出生率の回復傾向も年齢構成の歪みから生じた一過性であり信頼に値しない。このままジリ貧なら確実に半減してしまう。半減なら6300万人であり、それも50年単位で半減する日本の未来を想像して欲しい。その連鎖は絶滅を意味する。残された時間は僅しかない。政府省庁は、本当に、この国の未来を案じているのだろうか。
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《余談/コロナの行方》
(1)安心材料と(2)不安材料
新型コロナの拡大が止まらない。寒くなるにつれ一段と増加傾向にある。欧米では死者数まで激増である。日本の場合はどうか。案ずるべきか、そうでないのか、先ずは以下のデータを見て頂きたい。
(インフルエンザによる年間死者数)
(1)例年のこと、この季節からはインフルエンザが蔓延する。医療機関は風邪(の患者)で溢れ、学級(校)閉鎖も相次ぐ時期である。だが今年はそれがない。一説では平年の600分の1とか。そう、その大半がコロナに移行してしまったのだ。死亡者数でも然り。現在の数字であれ、インフルエンザで亡くなる平年値(上表)と同等か、それ以下ではないか。案ずることはない。
(2)でも、1月となると、そうはいかない。上表通り大きく上昇している。なんと、12月の10倍から20倍にも跳ね上がっているのだ。そして2月から3月へと持続してゆく。今現在が既に1月の水準なら、それこそ恐ろしい現実に直面するかも知れない。発熱だけて診察を拒否する我が国の脆弱な医療体制。これで本当に大丈夫だろうか。
世界各国で一斉にワクチンの緊急投与が始まった。日本ではそのメドさえたっていない。副作用(反応)は心配だが、あまり公表されないだけで、インフルエンザワクチンであれ相当な問題になっていると聞く。新型肺炎は1月から2月に山場を迎える。国の指針(4月以降)ではとても間に合わないのだ。一概には(風邪と新型肺炎の)比較は出来ないものの、この数ヶ月の立ち後れが、より深刻な事態を招かねば良いが・・。