203x年、この国は老々互助によってのみ維持されていた。街に若者はいない。見渡せば、どこもかしこも年寄りばかり。商業施設では80歳を優に超した“青年”しか目にしない。それも客ではない。歴とした社員なのだ。非正規にせよ良く働く。いや働かなくては食っていけないのだろう。不思議なのはAI機器が消えてしまっていることだ。聞けば「使い熟せる人材がいない」という。いても、メンテナンスが出来ない以上、「壊れてしまえば只のガラクタ」というから悲しいやら情けないやら。

〈軍艦島が暗示する日本の近未来〉
(画像はネットから借用)

 医療や介護の分野とて同じだ。医者に看護、介護士と高齢化著しく、その覚束ない足取りからは、どちらが関係者で、どちらが患者(入所者)なのかの区別さえつかない。それでも、医療・介護保険制度が崩壊した今、診療や介護を受けられるだけでも恵まれているというべきか。しかも、最先端の医療機器は、ここでも見ない。買えない、使えない、あっても補修が出来ないのでは無用の長物でしかないのだ。

 今や、この国に製造業は存在しない。老骨に鞭打ち農業や水産業の一部だけが辛うじて生き延びている。1ドル200円にまで下がった為替レートに救われたのだろう。輸入食材など、余程の高額所得者でもない限りは、とても高くて手が出せないからだ。だが、これも風前の灯火にある。後継者はいない。年齢的にも、これまでのような重労働には耐えられるものではない。農業の近代化も今は昔で、外国人がいなくなった現在、頼りは自分自身の肉体だけなのだから。

 かつて、この国は「高齢化社会は『AI』が救う」とする文言で溢れた。しかし、それも無惨に潰えた。人材(若者)がいない以上、研究棟は砂上の楼閣に成り果てている。財政破綻の影響も計り知れない。海外から輸入しようにも財源がない。仕方なく老朽化した機器を使い続けたものの既に限界に達した。一時、在籍した外国人技術者も誰一人として残っていない。本国より遥かに貧しい国家に成り下がってしまったのでは、これも当然といったところか。

(凋落の一途にある我が国の所得水準)
(ネットから引用)

 唯一の頼りは海外からの送金である。2020年代も後半になるや貧困に耐え兼ねた多くの若者が海を渡った。中国や欧米、中・南米だけではない。豊かさを求めて、アジアからアフリカと、それは全世界に及んだ。最早、半世紀近い凋落の結果、我が国より貧しい国など数える程しかない。何処へ行っても日本よりは稼げるのだ。こうして残された家族を支えたものの、それも月日と共に途絶えてゆく。何せ、二世、三世と代替わりしてまで仕送りを続ける者など滅多にいないからだ。収入源を失った社会がどうなったか、、この先は言うまでもない。

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 こう書くと、誰だって「そんな馬鹿な!」と思うだろう。憤懣やるかたない気持ちになる方だっているかも知れない。でも考えて欲しい。昭和30年代の初頭、文明の利器といえば、ラジオに裸電球、それに自転車ぐらいのものだった。それが、昭和30年代の後半から40年代になるや、カー、クーラ、カラーテレビの時代である。いわゆる三種の神器だが、この間10年で今と変わらない時代を迎えているのだ。ならば、この逆があっても不思議ではあるまい。社会の盛衰は早い。「そんな馬鹿な!」と、どうして断言出来ようか。現に、バブル崩壊後は『失われた30年』と呼ばれ、凋落の一途にある。ともあれ、この国の未来に奈落の悪夢が取り憑かないことを願うばかりだ。

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【悪化するばかりの我が国の人口動態】

 厚労省が(6月)3日に発表した昨年(2021年)の人口動態統計によると合計特殊出生率は前年から0.03ポイント低下の1.30だった。出生数も前年より2万9231人少ない81万1604人と、こちらも過去最少を大幅に更新。一方、死亡者数は前年より6万7745人多い145万2289人だった。これは東日本大震災当時の11年(約5万5千人)を上回って戦後最大である。新型コロナウイルスだけではない。高齢者が増えれば、それだけ死者が増えるのは当然のことだが・・。


 問題は先行きである。少子化に改善の兆しでもあれば心配はないのだが、それもない。悪化するばかりにある。出生率は一旦下がるとなかなか回復しないもの。しかも、コロナ渦による影響は計り知れない。あと数年後には、死者数160万人、出生数60万人が現実味を帯びる。一年で百万人の人口が消失するのだ、これが如何に恐ろしいことか。


 もし、今年の出生者(81万1604人)が結婚年齢に達し、晴れて健全とされる出生率(2.07)を回復したとしよう。これでやっと、出生数は一世代(30数年)後に置換水準まで戻るものの、それでさえ81万人に過ぎない。最大の危機はこの10年から20年先にある。これでは何の意味も成さない。ただ単に『焼け石に水』であり『座して死(滅亡)を待つ』以外の何ものでもないのだ。冒頭の駄文だって笑い話で済まされる保証はない。お上はどこまで認識しているのだろうか。

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《《余談》》

〈地元スタバに掲げられている益子焼を紹介するイラスト〉

 黒板に描かれた簡素なイラストではあるがリアルで実に上手い。聞けば近隣の大学生が描いているとのこと。全店舗で展示しているだけに絵の内容や力量は様々だが、一体、どういった人物が描いているのだろうか。