国税庁の民間給与実態統計調査によると、勤労者の昨年(2019年)の平均給与は436万4000円で、前年より1.0%の減少だった。非正規は174.6万円である。この調査は1949年に始まり、約1万8500事業所を対象としているが、あくまで前年が対象であるためコロナによる影響は含まれていない。
我が国の所得水準が下げ止まらない。一時的には上がったものの四半世紀以上に渡って下げ続けている。これが何を物語るだろうか。世界第二位まで上り詰めたかつての面影はもうない。為替レートを加味しても低開発国へと(逆戻り)一直線なのだ。このままなら先々はどうなってしまうだろうか。世界の低所得国は下記の如くである。
〈低所得国ランキング〉
(1)中央アフリカ共和国 656ドル
(2)コンゴ民主共和国 784ドル
(3)ブルンジ共和国 818ドル
(4)リベリア共和国 882ドル
(5)ニジェール共和国 1113ドル
(6)マラウイ共和国 1139ドル
(7)モザンビーク共和国 1228ドル
(8)ギニア共和国 1271ドル
(9)エリトリア 1321ドル
(10)マダガスカル共和国 1504ドル
最下位の中央アフリカ共和国が年率10%で伸びたとしよう。656ドルは約7万円である。すると、一年で7.7万円、2年で8.47万円、10年では18万円、30年後には112万円に増え、43年後には今の日本に並んでしまう。10位のマダガスカルなら34年だ。既に100万~200万円で、(日本の)非正規社員並みの水準にあるアジア各国には、あと十年もすれば抜き去られてしまう計算が成り立つ。もし、15~20%で伸び、方や(日本が)凋落するなら、その差は一段と早く縮まってゆくことを意味する。
日本もかつては同じだった。昭和30年代初頭の平均給与たるや1万円にも満たず世界でも下位に属する極貧国家であった。文明の利器と言えば、ラジオに裸電球、それに自転車ぐらいしかない。それが、オリンピックや高度成長を経た昭和40年代後半には世界に名だたる先進国であり経済大国の仲間入りを果たしていた。その間、僅か十数年である。四半世紀前、誰が韓国に抜かれ、中国に追い付かれると思っただろうか。
〈主要各国の所得水準の変遷〉
現在、我が国は少子高齢化もあって深刻な人手不足にある。コロナ渦もあり、この先しばらくは失業者で溢れるだろう。しかし、それも業種によってだ。農林水産業は絶対数が足りない。老人介護の分野に至っては対象者が増えるばかりにある。団塊世代の介護にはとても足りない。失業者の受け皿になる保証もない。バブル崩壊にリーマンショックと大量の失業で溢れた時代であれ、これらの職種には寄り付かないのだ。豊かな生活を味わった以上、如何に貧しくとも汚れ作業(失礼!)だけは絶対にやりたくない、といったところか。
そこで浮上するのが外国人の活用だ。不足する労働力を外国人就労で補う案だが、これがなかなか上手くいかない。前述の如くアジア諸国は成長の一途にある。韓国、中国(都市部)に続いて、次々と日本をゴボウ抜きしそうな状況にある。誰が好き好んで自国や周辺各国の高収入を捨ててまで賃金の安い日本に来ようか。今や、移民も流入でなく、日本人の海外流出が大きな社会問題になりつつあるのだ。農業に限らず介護の分野でも日本人のスキルは極めて高い。高収入を餌に、日本人の方が、これらの国々に流れてしまうのではなかろうか。
(2020年現在の人口構成)
2019年の出生数は前年より5万3166人少ない86万5234人。一方、65歳以上の高齢者は30万人増えて(2020年9月15日推計)3617万人。年々その差は拡がるばかり。より少ない若者がより多くの高齢者を看ねばならなくなるのだ。国の指針では、外国人の活用と共に登場するのが「AIが解決する」だが、これとて怪しい。高齢者問題のピークは団塊世代が80歳を超えるこの先数年にある。今現在普及していなければ間に合わないのだ。
それでも永田町や霞ヶ関は夢物語ばかり。非現実的な政策しか打ち出さない。このままなら若者はこの国から消え失せてしまう。ならばどうだ。絵空事しか示さない政治家や官僚なんていらない。その金で介護士だけでも優遇してはどうか。中国や中東、シンガポールなどでは日本の数倍の報酬(500~800万円)を得ている。年収1000万円なら(日本に)とどまって貰えると思うが・・。
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《余談》
コロナ渦で大減速の世界経済を尻目に中国市場だけが急回復している。あたかも一人勝ちの様相である。トヨタも9月の中国販売は前年同月比25.3%増の17万9400台に達し、単月の販売台数としては過去最高であったという。経済界にあっては、神様、仏様、中国様といったところか。
覚えているだろうか。四半世紀前には中国からの違法就労で溢れ、その一部の犯罪が大きな社会問題になった。それが今、T・W・Kなどの著名な大学でも中国からの留学組が多数を占め、アルバイトに忙しい日本の学生を尻目に高級車で通学している。AIでは日本の5年から10年先を行き、経済力でも大きく水を開けられつつある。著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で21世紀は日本の時代を予測したエズラ・ファイヴェル・ヴォーゲル(中国名:傅 高義=フー・ガオイー)は、こうした現実をどう見るだろか。