ゴミ箱 -8ページ目

ゴミ箱

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『僕は君に永遠の忠誠を誓おう。君と共に歩もう。』
そう言ってライは俺の手の甲に口付けた。
そのライは今スザクの所にいる。
二人は月下の前で何やら楽しそうに喋っている…俺がいるにも関わらずだ。
大変面白く無い。
俺は苛々しながら仮面ごしにスザクを睨み付ける。
訳の分からない怒りで手が震える。
―早く消えろスザク!―
普段なら絶対思わないような思いが胸に広がる。
「ゼロ…大丈夫ですか?」
固く握り締めた手をそっと握られる。目の前には銀。
心配そうな青紫の瞳。
「大丈夫だ。」
俺の口元が勝手に緩む。
俺はそっとライの頬に触れた。
その熱が俺の心を落ち着ける。
―残念だなスザク、ライは譲らない―
今までずっと僕の周りは変化し続けてきて、これからもそれは変わらない。
けど、この感情だけは変わって欲しくない。
そう思うんだ。

生徒会室で仕事をしていたライは、ふと顔をあげ、すっかり暗くなってしまった窓の外を見た。
先程まではミレイさんがいたが、彼女もほどほどにしておきなさいよ。と言い残して去っていった。
時々無性に消えたくなることがある。
記憶が戻ってからは、特に。
そう思っているときに皆が声を掛けてくれて、どうにか足を踏ん張っているけれど・・・。
居るべき場所に戻るべきなんじゃないか、等と考えてしまう。
今を大切に・・・それを忘れたわけじゃない、それでも・・・。

「ライ・・・大丈夫ですか?・・・・・・ライ?」
会議はとっくに終わったというのに、控えていた場所からなかなか動かない僕を見て不思議に思ったのだろう、皇女殿下がわざわざ僕の肩を揺さ振りに来ていた。
あまりの激しさに吐き気がしてくるほどだ。
「だ・・・大丈夫ですから、あ・・・あまりゆさぶらない・・・で、下さ・・・い。」
その言葉に安心したのか、皇女殿下はほっとした顔を見せて微笑んだ。
「ライがぼんやりするなんて珍しいですね、心配事ですか?」
「いえ、たいしたことでは。」
安心させるように笑顔を作る。
「そうですか、何かあれば遠慮せずに言って下さいね。いつも私ばかり助けて頂いて、もっとライの役に立ちたいのです。」
「いえ、とんでも御座いません。救っていただいているのは私の方です。・・・・そろそろスザクも帰ってくる頃ですね、迎えに行かれますか?」
「え、えぇ。勿論。」
皇女殿下は少し寂しそうな顔をした後、歩き始めた。

自室のドアを開けると、ベッドの上にここ数ヶ月で見慣れた黄緑の色をした髪が散らばっているのが眼に飛び込んできた。
ついでにピザの匂いまで充満している。
「また君か、いつも言うけど、ベッドに転がるのは構わないが、ピザをベッドの上で食べるのは止めてくれないか。」
「そうけち臭いことを言うな、お前も食べてみれば分かる。ベッドの上で食べるピザは格別だぞ。」
何処で食べても同じだろうと思いながらも、それ以上は何も言わず、C.C.が寝そべっているところの近くにイスを引き寄せ、腰掛けた。
「今日はどうしたんだ?」
「ふるーふはひんはい・・・していたぞ。」
ピザを口に入れながら喋ったため、最後しか聞き取れなかった。
「物を口に入れたまま喋られても何が言いたかったのか分からないんだが・・・。」
「だから、ルルーシュが心配していたぞ。と言ったんだ。」
「ルルーシュが?」
C.C.は指先を舐めながら頷く。
「ユーフェミア皇女殿下にも何か言われなかったか?今日の会議中お前は始終上の空だったからな。」
「そんなに酷かったのか・・・。」
眉間にしわを寄せながらそう言えば、C.C.は少し呆れた顔をしながら言った。
「あれが酷くなければ何を酷いと言うのだろうな。」
僕は溜息をつくことでそれに応える。
「まぁ、考えていること等予想がつくが・・・あまり余計なことを考えるなよ・・・ボウヤ。」
それだけ言うと、C.C.は立ち去っていった。

今日は特派でシュミレーターに乗ることになっている。
何でも新機能のテストだとか。
ロイドさんが楽しそうに話しているのを、ぼんやりと聞いていた。
「そういえばライ君、最近ちゃんとスザク君とは話できてるの?」
ロイドさんのことを完全に無視してセシルさんが訊いてくる。
「えぇ、この前もユーフェミア様と一緒にスザクを迎えに行きましたけど?」
「そう意味じゃぁ無いんだよねぇ。」
ロイドさんは説明を止めて、会話に入ってきた。
「二人でちゃんとじっくり話したり、スキンシップとったりしてないんじゃなぁい?」
「スキンシップですか?」
「最近仕事ばかりで、二人が一緒に楽しそうにしている所を見かけてない気がして・・・。とにかく気分転換とかが必要なんじゃないかと思うの。だからね、しばらくお休みしてもらおうかと思うの。」
「休み・・・ですか?」
「最近治安も大分落ち着いてきたし、少しなら大丈夫なはずよ。もし緊急事態があった時に困るから、あまり遠くには行って欲しくはないんだけどね。」
「お~めでと~!ライ君は明日からしばらくお休みだ。休んで数値が元に戻るなら一向に構わないからねぇ。」
苦い顔をするライにロイドは笑いながら、とりあえず今日の仕事の為に僕をシュミレーターへと促した。
「いやぁ、さすがに二人そろってこれだけ数値が落ちるなんてねぇ・・・セシル君はどう思う?」
「数値事態はロイドさんが言うほど落ちてないじゃありませんか。けど、二人は二人でここまで来ましたからね、まだ今の状況に慣れないのかもしれませんよ。」

軍の仕事が無いのならば、学校に行くしかないと思い、ライは共に休みを貰ったスザクと学校に来ていた。
そんなに久々というわけでもないのに、スザクを懐かしく感じる。
正直、何を言ったらいいのか分からない。
だから、逃げるように僕は屋上に来ていた。
ここに来ると落ち着く、荒れていた心が凪ぐ。
「ここにいたのか。」
さぁっと風が髪を撫で、声を運ぶ。
「ルルーシュか。」
「ユフィに聞いたぞ、しばらく休みになったらしいな。」
僕は苦笑しながら肯定する。
「数値が良くない!って怒られてしまったんだ。どうしてスザクまで休みなのかはよく分からないんだけど。」
「はぁ・・・知らないのか?」
溜息をつきながら呆れた顔をルルーシュにされて焦る。
何を僕が知らないって言うんだ。
「・・・・・・スザクの奴も様子がおかしいんだよ。」
「スザクも?」
ルルーシュはスザクが校庭を全力で走ってこちらの方へ来るのを見つけ、薄く笑みを浮かべた。
「そうだ、スザクもだ。きっとお前の言う『数値』だって悪いんじゃないか?」
スザクに限ってそんなことは・・・と思いながらも、ルルーシュの言葉を否定できないでいた。
C.C.に余り余計なことを考えるなと言われてから、できるだけ考えないようにしていたこと、それがじんわりと心の奥底からにじみ出る。
僕のせいで悪いんだろうか。
「そのことには僕のことも関係あると思うか?」
「それは俺にはわからないが・・・無いことも無いんじゃないかと思うぞ、少なくとも俺は。」
ルルーシュがそう言うのと、勢いよく扉が開いたのはほぼ同時だった。

しんと静まり返る屋上。
最初に口を開いたのは、駆け込んできた者でなく、意外なことに近くに居たルルーシュだった。
「そんなに急いでどうしたんだ、スザク。」
「ライがルルーシュと居るのが見えたから。」
ルルーシュはくつくつと笑うと、スザクに言った。
「そんなに急がなくても、別にとって食ったりなんてしないぞ?」
とってくう?とそこでスザクが来て初めて僕は言葉を口にした。
「ルルーシュ!!」
スザクは焦ったようにルルーシュの名前を呼ぶと、こちらへ足早に近付いてきた。
ぐいっと引き寄せられる体。
周りの景色がスローモーションのように流れる。
「え?」
ぽすっと僕はスザクの腕の中に納まる。
「え?」
「ライと何してたの。」
いつもより大分不機嫌そうな声が近くから聞こえる。
「何も、ただお前だけじゃなくてスザクの様子もおかしいのを知らないのかと聞いただけだ。」
「本当に?」
これは僕へ向けられた言葉だ。
こくりと頷くと、腕の力が緩んだ。
「あぁ、あと、スザクの調子が悪いのにライも関係あるんじゃないかと、少なくとも俺は思う・・・・・・とも言ったな。本当のところはどうなんだ?ライに言ってやってもいいんじゃないか?」
僕がようやくスザクの腕の中から抜け出して、ルルーシュを探すと、ちょうど屋上から出て行こうとしている所だった。
「る・・・・・・」
急いでルルーシュに声をかけようとすると、スザクの手で口元を覆われた。
その様子を見てルルーシュは軽く笑うと、手を振って消えてしまった。

「ライ・・・聞いて欲しいことがあるんだ。」
優しく口元を覆っていた手を離され、ライは体勢を整えると、スザクを正面から見た。
「聞いて欲しいこと?」
「うん。」
「聞く。」
スザクが僕と話したいと言ってくれている。
その事実が何より嬉しかった。
枯れていた心に、あたたかなものが一気に広がって、心を満たす。
「僕はいつでもライの声を聞いていたい、側に居て欲しい、君を感じられないのは寂しくて切ないんだ。」
ぎゅっと手を握られて、スザクの温もりが伝わってくる。
「それが不調の原因?」
こくりと頷くのを見て、僕は口を開いた。
「僕が悪いとか、居ない方がいいとか、そういうのじゃなくて?」
そう言えば、スザクは眼に力を込めて僕を見た。
「そんなこと思うわけ無いだろ。」
あまりにも力強い言葉で、僕は次に言うべき言葉を捜せなかった。
「ちょっとライとすれ違って、会えなくて、話をまともにできなかっただけでこんなになっちゃうのに、そんなこと・・・思うわけ無いだろ。もし、ライが居なくなったりしたら・・・なんて考えたくも無い。」
じんわりと手のひらに汗をかいてきた。
「消えたりなんてしたら困る・・・のか?」
「困る・・・なんて所じゃないよ。」
再び手をひかれ、スザクの腕の中に納まる。
そろそろと手をスザクの背中へとまわすと、ぎゅっと抱きしめる力を強くされた。
それに応えるように僕の腕の力も強まる。
「本当・・・なんだよな?」
「本当。嘘なんて言わない。」
「そっか・・・スザクは温かいな。」
「ライだって。」
「幸せ・・・ってこういうことを言うんだろうな。」
「うん、幸せすぎて泣きそうかも。」
そんなことをスザクが涙声で言うものだから、こちらまで視界が霞んできた。
「僕のいるべき場所はスザクの隣だって思ってもいいか?」
「それがいい、そうじゃないと嫌だ。」
「うん、うん、ありがとう、スザク。」
さっきよりもっと強くスザクに抱きついた。

「あら?ライ、元気になったのですね。」
にこにこと笑いながら皇女殿下にそう指摘されて、僕は思わず真っ赤になってしまった。
ここへ来る前日に特派でシュミレーターに乗って、セシルさんに「元気になったみたいね。」と同じように微笑まれながら言われたばかりで、そんなに表情に出ているのかと恥ずかしくなった。
「スザクも元気になったみたいで、よかったです。これからは無理せず、学校にも行って下さい。私にはお姉さまも、ゼロも、皆もいますから。少し位気を抜いても大丈夫ですよ。あと、スザクとの時間も大切にして下さい。今まで二人で一緒に成長してきたのを私は見ていますから、二人の関係を大切にして欲しいのです。」
本当にそう思っているのだろう、優しい顔でそう言われ、素直に頷いてしまった。
「はい、スザクは大切な親友であり、戦友ですから。」
「えぇ!」


「まだ親友のままなんですね・・・。」
というユフィのスザクを労わる声はライの耳には届かなかった。

「もうすぐクリスマスかー。」
スザクとライは特派へ向かう道を歩きながら周りを見回した。
「クリスマスってキリスト教の?ブリタニアってキリスト教だったか?」
「いや、違うと思うよ。でも宗教は抑えてないみたいだし、そもそもイレブンが宗教にあまりこだわって無かったから12月にはクリスマスがあるよ。ミサに行くとかじゃなくて、単純に楽しんでるって感じかな。」
「そう考えるとブリタニアはグローバルな国なんだな。」
キラキラ光るクリスマスツリーや、様々な種類のケーキが店に並んでいる。
そういえばミレイさんがクリスマスのイベントをしたいとか言っていたような気がする。
「クリスマスの頃はもう学校が休みに入ってるからどうするんだろ。」
スザクも同じことを考えていたようで、疑問を口にしていた。
「生徒会だじぇがクラブハウスに集まってする位しかできないんじゃないか?」
「だよね。・・・うー、寒っ。」
ふるると体を震わせたスザクは制服にマフラーを巻いただけという12月とは思えないかっこうをしていた。
まぁ、ライも似たような姿な訳だが。
「確かに寒いな。ミレイさんが言うようにコートの一枚位買ったほうがいいかもな。」
寒さからか二人の歩調が速まる。
「ね、ライ。手繋いでもいい?」
ピタリと二人は止まると互いを見詰めた。
ライの頬が少し赤く染まる。
「特派の前までならな。」
ライはしっかりとスザクの手を握って顔を見られないように背けた。
それでもスザクは幸せそうに笑う。
「あら、二人とも仲がいいのね。」
うっかり離すのを忘れていた二人がそのまま特派に入ってしまい、セシルさんに温かい目で見られてしまった。
それでも互いに手を離しがたいと思ったのは気のせいでは無い。
「最近忙しそうだよな。」
ベットの上でアーサーを構っていたライが、そうアーサーに話しかけた。
すると、アーサーは耳を垂れさせながら、にゃぁと鳴いた。
「やっぱりアーサーもそう思う?」
指を口の近くに持っていくと、アーサーはそれをぺロリと舐める。
「今日は帰ってくるといいな。」
ライはアーサーの喉下をくすぐると、目を閉じた。
アーサーも目を細めて身を横たえる。
そのまま一人と一匹は眠りへとおちていった。

「久々に帰ってきたら…これ?」
スザクはベットで気持ちよさそうに眠っているライとアーサーを見て、複雑な気持ちになった。
「今夜はつきあってもらおうかな。」
そっとライに近付き、軽く頬に口付けた。
「この馬鹿スザク!」
ごかんと頭を拳で殴られたスザクは頭を抱えて座り込んだ。
何故殴られたかと言えば、先頭で無茶をしたとしか言いようが無いのだが・・・。
それを今ライが叱り飛ばしている所だった。
「無茶するな、僕に声をかけろと何時も言っているだろう。」
「でも、そっちの気をそらしたら危険じゃないか。」
「それで死ぬようなら僕の修行不足だ。そこまでの人間だったって事さ。」
「ライ!そうじゃないんだ、僕が言いたいのは・・・!」
ギャーギャーと二人が喧嘩するのをロイドとセシルは遠くから見守っていた。
「二人ともお互いが大切なのね。」
「お互い理解しあえてない部分があるみたいなんだけど・・・そこはどうなのセシル君。」
「いいんですよ、こうやって築き上げていく友情もあります。すこしずつ成長していくんですよ。」
「ふ~ん。」
こんな事を言われていても、言い合う二人は気付かない。
最近スザクとはすれ違ってばっかりだった。
僕には何だか特別な任務が与えられる事が多くなったし、スザクもユーフェミア様の騎士の仕事で忙しいみたいだ。
そんなこんなでスザクに会っていない。
軍人だから仕方が無いと言われればそうなのだが、納得してしまうのはどうかと思う。
今日ようやく僕は長期の任務からロイドさんと共に帰って来た。
「おかえりなさい。」
向かえてくれたのはセシルさんだけだった。どうやらスザクは留守らしい。
昨日まではいたらしいが、今日急に仕事が入ったらしい。
僕は胸が痛んだ。よく分からない痛みだった。
それから僕には黒の騎士団からの要請でしばらく特派を留守にする事になった。
またスザクが遠ざかる。
妙な違和感をかき消すように仕事に打ち込んだ。
学校で会えるかもしれない。会ったら何を話そうか。
そんな事を考えるだけで僕はやる気が起こったし、嬉しい気分にもなった。
早くスザクに会いたい!
けど、そう思っていたのは僕だけだったのかもしれない。

今…僕は何を見た?
優しい彼だから当然の行為だったと思う。
彼がしたことには僕は納得するし、賛成もする。けど、僕は見たんだ。
スザクに助けられた女の子の頬が染まっていたのを。
瞳が恋する乙女だったのを。
女の子はずるいと思う。
僕にはあんな顔できないし、可愛くも無い。
だから、あの光景を見たときに妙に納得してしまったんだ。
それがどうしようも無いくらい悔しい。ああ、スザクにはやっぱり可愛い女の子が似合ってる。
そう思った事が、嫌で嫌で仕方ない。
これ以上スザクと女の子を見たくなくて僕はその場から逃げ出した。
瞳から涙があふれてきたが、そんなの気にならなかった。
みっともない、情けない、どうしようも無い。
ああ、僕は嫉妬してるのか?
去り際に見た女の子に微笑み返したスザクに。
何て醜いんだろう。
綺麗なスザクに僕は関わっちゃいけないんじゃないのか?
グルグルグルグルまとまらない考えが頭を支配する。
スザクが好き。誰よりも好きだって思う。
だけど心に生まれた小さな違和感。納得してしまった僕。
これは…そう、あれだろう。
自分の思いを抑えろと言う事じゃないのか?
そうだ、心を殺せば醜い気持ちも生まれなくなる。
そうだ、スザクを好きだと思わなければいいんだ。
ライは校舎を突っ切って、校門へと真っ直ぐに走った。
後ろから声が聞こえた気がするがきっと気のせい。後ろから忙しく足音が追いかけてきているような気がするけど気のせい。
「ライっ!!」
後ろから勢い良く抱きつかれた。
「っ!」
背中越しに伝わるあたたかさ、香り。
すべてが僕に彼だと伝えてくる。
「ス・・・ザク。」
「久しぶりに会えたのに何で逃げるの?僕はライに会いたかった。」
ぎゅっと抱きしめられて、僕は心臓がバクバクいって言う事をきかない。
嬉しい。
会いたかったと思われていただけで。
「御免。僕も君と会いたかった。会えて嬉しい、来てくれて本当に嬉しいんだ。」
そっとスザクの手に自分の手を重ねて目を閉じた。
零れ落ちそうなほどの星を捕まえた空が、それを川みたいに流す。
キラキラキラキラ光る星達。
織り姫と彦星を年に一度だけ会わせてくれる。
いつだったか雨が降ると天の川が洪水をおこすから会えないとか、雲に隠されて川が流れないとか言っていた人がいた気がするけど、本当はそんな事は無く、雲の上は晴れ渡っている。
だから絶対に織り姫と彦星は会えるのだ、一年に一度。

「ライは何書くの?」
ひょいと覗き込んできたシャーリーは、すでに自分の願いを書いた短冊を笹につるしていた。
今日は7/7、七夕。
イベント好きの会長がこんなイベントを見逃すはずも無く…生徒会室には大きな笹が用意されていた。
笹は生徒会室にだけでなく、各所にも笹は設置されている。
「まだ何も。」
ピラリと短冊をシャーリーに向ける。
何を書いたらいいか分からないせいでペンが進まない。
この短冊を書き終わり次第、悪夢のようなイベントがある事も影響しているのだが。
「そうだなぁ…例えば…~したい。~が欲しい。とか…私だったら…。」
「有難うシャーリー…参考になっ…た……よ?」
ルルと…キャー!!とか何とか言いながら妄想に走ってしまったシャーリーを目の前に、少したじろぎながらも短冊に願い事を書くと、それを笹に吊さず綺麗に折り畳むとポケットにしまった。
『ピーン・ポーン・パーン・ポーン…こんにちは、生徒会です。ミレイ会長よりお知らせがあります。』
「あ…僕達行かないと…。」
「そうだね。お互い無事を祈ろう。」
我にかえったシャーリーに別れを告げるとライは椅子から立ち上がり、着物を揺らした。
『ハァーイ!ミレイよ、もう短冊に願いは書き終えた?それでは、先日説明したイベント内容を確認します。』
イベントの内容はこうだ。
男女逆転した織り姫と彦星のコスプレをした生徒会役員を捕まえ、その生徒会役員に願いを一つ叶えてもらう。
(叶えられる範囲のものを。)
それとあと一つ、一日デート権!
これが問題だった。
女子はズボンだから普段よりずっと動きやすいだろうが、男子はスカート…という説明でいいのか不明だが、とりあえず普段より走りにくい服装になっている。
そういえば、スザクはあのビラビラした所を持ち上げればいいんじゃない?て言って、脚が剥き出しだったな。
ルルーシュは、かなり似合っていたが、真っ先に捕まりそうだった。
リウ゛ァルは…何であんなに化粧が濃いかったんだろう。
あれは気持ち悪かった。
走りながらそんな事を考えていたら図書室に来ていた。
「…?」
誰か…いる?
気配を感じた机の影に、そろりと近づくと、そこにはしゃがみ込んだスザクを見つけた。
「スザク…何してるんだ?」
「ん?君を待ってたんだよ。」
ぐっと腕を引かれスザクの腕の中に転がる。
「何を…。」
文句を言ってやろうと口を開くと、スザクがぽつりと何か呟くものだから思わず言うのを止めた。
「思ったんだけど、僕らがお互いを捕まえれば問題無い企画だよね。」
聞いたとたん顔に熱が集まるのを感じた。
そう、スザクとライは付き合っている、デートは問題では無い。
「確かにそうだが…男同士で有効な企画なのか?」
「何でもアリなんじゃない?とりあえず生徒会室…行こっか。」
ライを開放し、立ち上がるのを見届け、その後でスザクも立ち上がる。
二人で生徒会室に向かいながらぽつぽつ話す。
他の生徒達は他のメンバーを追い掛けているらしく、非常に幸運だった。
「スザクは短冊に何書いたんだ?」
「ライ、そういう願いは人に言わない方がいいんだよ。だから秘密。」
口に人差し指をあてて言う。
「そうなのか。」
「でも言いたい願いごともあるなぁ。」
ちらりとライを見てくるものだから、ライは気になって何?と尋ねた。
「あとから言うね。」
そうスザクが言うのとほぼ同時に生徒会室の扉が開いた。
まだ誰も帰ってきていない。
生徒会にある笹にライは近付いて、見えにくい位置に短冊を吊した。
――大好きな人達が幸せを感じ、平和でありますように――
色んな事が様々な形で平和であればいい。
「星見れそうだね。」
窓越しに空を見上げながらスザクが言う。
「そうだな。」
「このイベントの後、星を見るって会長が言ってたような。」
時計を確かめればイベント終了まであと一分。
汗だくになった生徒会のメンバーが飛び込んで来ることだろう。
あと三十秒という所でスザクがライに抱き着いた。
「ライ…星にも織り姫と彦星にも願わない、ただ君に願うよ………。」
耳元で囁かれ、くすぐったく思ったのもつかの間…一気に顔が赤くなるのをライは感じた。
スザクが離れたのを見計らい、ライが叫ぶ。
「こっちの台詞だ!」
叫んだ所で他のメンバーが生徒会室に入ってきたのはご愛嬌。
「お仕置きだよ…ライ。」
そう言ってロッカールームにある簡単なソファーにライを押し倒したスザクは、手慣れた手つきで服を乱し始めた。
いつスザクの地雷を踏んだのかさっぱり分からないライは、すっかりその事に捕われ自分の状況にまで頭には無かった。
「スザク…なんでこんな事になっているのか教えてもらいたいんだが。」
服を脱がされ、二人きりの密室状態にも関わらず、いたって冷静に見える恋人にスザクは笑いかけた。
「今日は何日?」
「七月十日だな。」
そこまで言ってセシルさんとの会話を思い出す。
『ライ君も午前中に来れればよかったんだけど…。』
『仕方ありませんよ…生徒会での仕事がたまっていましたし、でも最近スザクと会わないんですよね。』
『あら…そうなの?今スザク君ならロイドさんと息抜きに行ってるのよ。めずらしい事もあるわよね。』
『そうですね。』
この会話…何か変だと思わなかったか?
確か…生徒会の企画書類の中に…『スザク君には絶対極秘計画!』と書いてあるものがあったような…。
内容は『数日遅れの誕生日パーティー』誕生日パーティー…誕生日…パーティー……。
誰の誕生日パーティーだって?
スザクに内緒でパーティーの計画=スザクの誕生日という事で…。
「今日はスザクの誕生日か!」
閃いた!という顔をして叫ぶライのベルトを抜き取ったスザクは複雑な気分になった。
君、完全に忘れてたな…。
「そう。正解、だけど忘れてたからお仕置きだよ。」
スザクはライのズボンを引きずり下ろそうとした。
「ひっ…ちょ、待てスザク!忘れていた事は謝る!御免、だからちゃんと言わせてくれ。」
「…分かった。」
スザクはライのズボンから手を離すと、ライの言葉を待った。
「スザク誕生日おめでとう。生まれてきてくれた事に感謝する。君に出会えて…本当によかったと思う。」
スザクが泣きそうになったのを僕は見逃さなかった。
スザク、誕生日忘れてて御免。
さっき言った言葉だけど、誕生日に限らずいつも思ってる。
君に出会えたから、眠らされていたのも少しはいいか…と思えた。
いつだって足りない位君に感謝してる。
駄目だ、スザクはユーフェミアを失ってはならない!
そう思った僕は自分を犠牲にしてでもユーフェミアにギアスをかけ、そして止めた。
意識が堕ちる。
撃たれた所からは血が溢れている。
それなのに、不思議と痛みを感じなかった。
そこでふと考える。
スザクにとって、ユーフェミアを失うのと、僕を失うの…どちらがより彼を壊してしまうのか。
答えは簡単、ユーフェミアだ。
だから僕がユーフェミアを救い死にゆくのは正解。
だから…。
泣くな。
悲しむな。
振り返るな。
「………イ……ライ!!」
耳元で自分の名を呼ぶ声がする。
それに意識を浮上させられ、うっすら目を開くと、目から涙を流すスザクが映った。
泣くな…泣くなよスザク。
この悲しみは、ユーフェミアを失うより軽いはずだ。
だから前へ。
僕の事なんて気にするな。
そう思うのに、自然と涙が溢れ出る。
口から血は出るし、撃たれた部分からの出血のせいで全身真っ赤。
綺麗な姿で死ねなかったけど、それでも今すごく幸せなんだ。
「…笑っ………て。」
スザクに最後のギアスがかかる。
「何だよそれ…。」
そう言いながらスザクは涙を流しながら笑った。
冷たくなった愛しい人を抱えて。
「冷たいな。」
ライは、ナナリーから貰ったレモンシャーベットを口にふくむと呟いた。
「食べた事無かった?」
隣に座るスザクは楽しそうにライを見ると尋ねてくる。
「あぁ。」
短く返事をかえし、またシャーベットにスプーンを差し込み口に運ぶ。
それをにこにことした顔でスザクは眺める。
その視線が気になり、今度はライがスザクに尋ねた。
「スザクも食べたいのか?」
「えー…じゃ、一口ちょうだい。」
こくん、とライは頷くと、スプーンにシャーベットを取り、スザクの口へと運んだ。
スザクは躊躇する事無く口を開けそれを食べる。
「ん…やっぱり甘くて美味しいな。」
ぺろっと唇を舐めるとスザクは嬉しそうに笑った。