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皆さんこれ、ご存知ですか?
昨年の秋ぐらいからかなり話題になっていて、
今年1月にはインスタグラムでりゅうちぇるさんが投稿していて注目されていたのですが…。
「The Ordinary.(ジ オーディナリー)」はカナダ発の化粧品ブランド。
海外を中心にかなりの人気を博しており、最近日本でも知られるようになってきました。
特に一般では流通しないような超高濃度の美容液や化粧品が
かなりの低価格で購入できるとマニアの間では話題となっています。
ちょっと調べるだけでナイアシンアミド10%とか、ビタミンC23%とか、乳酸10%とか…、、
国産コスメでは信じられないような超高濃度化粧品を多数取り扱っています。
しかもこれだけの高濃度美容液がいずれも1000円未満と驚きの価格設定です…!!
個人的には高濃度のものが必ずしも良いとは思ってないのは先日もブログに書いたとおりですが、
▶敏感肌が【高濃度化粧品】を避けるべき理由 度が過ぎれば「セラミド」や「グリセリン」すら刺激に?
肌が強い方や色々使い方次第では使い道がある気がします。
価格も驚くほど安いので、試しやすいのも良いですよね!
そんな化粧品マニアに現在人気沸騰中の「The Ordinary」さんですが、
実は日本向けには販売されていないにも関わらず
日本でも人気急上昇中の商品があるのです。
それがこの、通称「血みどろピーリング」です。
(パッケージの赤いのは液漏れです;)
「AHA30%+BHA2% ピーリングソリューション」
というのが正式名称ですね。
なぜ日本では公式に販売されていないのか?
それは、この製品に配合されている「AHA30%+BHA2%」というのが、
日本国内で化粧品として販売できる成分の濃度を超えているからです。
(後に詳述します)
ただ、Amazonなどの通販サイトを使えば、国外輸入等のルートで日本に居ても購入することは可能という状態です。
(僕もAmazonで購入しました)
オーディナリーでも一番人気と言われる製品なので、ファンもとても多いようです。
今日はこちらの商品の効果や成分等について詳しく解説していきたいと思います!
◎「AHA」「BHA」とはそもそも何か?
「AHA(エーエイチエー)」とは「α(アルファ)-ヒドロキシ酸」の略、
「BHA(ビーエイチエー)」は「β(ベータ)-ヒドロキシ酸」の略称です。
簡単に言えば、
いずれも「ケミカルピーリング」をするための薬品です。
ケミカルピーリングとは、
肌の表面の皮膚トラブル部位を、特定の化学薬品を用いて意図的に破壊し、
皮膚の正常な代謝機能を利用して新しいキレイな皮膚を作る医療行為です。
AHAもBHAも、特殊な化学構造を持っており、
その特殊な構造が肌の表面の特定のタンパク質(デスモソームという皮膚組織を接着している物質)を破壊するのに非常に適しているんですね。
また、AHAよりもBHAの方が一般的に効果が強いといわれています。
よく知られるAHAとBHAとしては
「AHA」の例
・グリコール酸
・乳酸
・リンゴ酸
・酒石酸
・マンデル酸
…など
「BHA」の例
・サリチル酸
…など
などですね。
AHAとして知られる成分はフルーツの酸味の主成分だったりすることが多いので、「フルーツ酸」と呼ばれることもありますね。
日本では拭き取り化粧水とかに1%以内くらいで配合されていることがあります。
BHAは美容医療、化粧品等に利用されるものはほぼ「サリチル酸」のみで、
サリチル酸といえば化粧品には防腐剤として0.2%まで配合が認められています。
同じタンパク質を破壊する性質を利用して医薬部外品等で「殺菌剤」や「角質剥離剤」として利用されているケースもあります。
◎血みどろピーリングが日本で買えない理由…「グリコール酸3.6%以上」は「劇物」!?
ところで、なぜ今回の「血みどろピーリング」が日本国内向けに販売されていないのか?という話なのですが、
血みどろピーリングの成分表はこんな感じになっています。
英語だとわからないと思いますので、翻訳しました。
成分:
グリコール酸、水、アロエベラ葉水、水酸化Na、ニンジン根エキス、プロパンジオール、コカミドプロピルジメチルアミン、サリチル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、パンテノール、ヒアルロン酸ナトリウムクロスポリマーNa、タスマニアランセオラタ果実/葉エキス、グリセリン、ペンチレングリコール、キサンタンガム、ポリソルベート-20、エチレンジアミンジコハク酸3Na、ソルビン酸K、安息香酸Na、エチルヘキシルグリセリン、1、2-ヘキセンジオール、カプリリルグリコール
このように、主成分のAHAには「グリコール酸」という成分を使用しています。
血みどろピーリングが日本で販売できないのはこの成分のせいでして、
実は日本ではグリコール酸が3.6%以上配合されている製剤は「劇物」の指定を受けてしまい、
化粧品としては販売出来ないことになっているのです。
グリコール酸はAHAの中では一番強い作用の薬品で、
それなりの濃度であれば相当強力に皮膚を損傷する懸念のある成分です。
ちなみに「劇物」というと、あの皮膚を腐食する「水酸化ナトリウム」や「硫酸」や「塩酸」などと同じ扱いです。
保管する際には鍵付きの堅牢な設備で保管するなど様々な劇物取り扱いのルールがあります。
元々この指令以前ではAHA5%とかの化粧品が日本でもザラに販売されていましたが、
そもそもケミカルピーリングというのは「医療行為」であって、
自宅で気軽に行えてはいけないものです。
(素人さんが扱うにはかなり危険)
特に日本人は角層が薄くピーリングの効果が強く出やすいため、
事実上の「自宅でのケミカルピーリング禁止」と言っても過言ではない勧告でした。
それを受けて国内では基本的にグリコール酸高濃度製品は販売されていません。
ちなみに本品の場合は、グリコール酸以外にも乳酸や酒石酸などの他のAHAも入っているのですが、
まぁ全成分表の感じからしてグリコ-ル酸が30%のほとんどの内訳を占めているのは間違いなさそうですので…;;
国内向けには当然売れないですよね…(^_^;)
◎実際に「血みどろピーリング」を検証してみる
というわけで、
そもそもグリコール酸3.6%でも劇物になってしまうのに、
それが10倍近くの30%入っているとしたらそれは本当にただの危険な薬品です。苦笑
ついでにBHA(サリチル酸)が追加2%入っているわけですから、
この時点でこの化粧品(?)が非常にヤバいものであることは容易にお分かりいただけることでしょう。
そんなヤバい液体が届いた時に既にこの液漏れって、
その時点で相当問題あるよな…、、と個人的には感じました。。
(外国から送られてくるので、漏れやすいんだと思いますけど)
そもそもこちらの製品、こういったスポイト式になっているんですが、
このキャップがうまく閉まらないんですよね…。
あ、ちなみにこの「赤い色」は通称「血みどろピーリング」の由来となった色なのですが、
これは酒石酸という成分(これもAHAの一種)の色になります(…多分※)。
「赤ワイン」の酸味の主成分でもありまして、あの赤紫色の一因になっている成分ですね。
言われてみれば赤ワインの色ですね(^^)
※酒石酸自体は無色透明の成分なのですが、ブドウ由来の酒石酸はブドウの色素成分が結合しているため赤紫色に着色していることがあるようです。他に色が付く成分が見られないので、おそらくこれかな…?という予想です;
というわけで、実際に使ってみましょう!
いきなり顔に使うのは怖すぎますので、腕の内側で試してみました。
この時点で、たしかに多少のヒリヒリ感を感じます。
(ただ、思っていたほどではないような…?)
そして色んな人のブログを見ると、塗布後10分以内に流すらしいのですが、
10分は放置し過ぎでは…?
僕が調べた美容医療のグリコール酸を用いたケミカルピーリングでは
20代で30%濃度なら2~3分という風に書いてありました。
▶http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-200106.pdf
というわけで3分で流してみました。
塗布部に○印を付けておきました。
流した段階ではハッキリ言って何の効果も得られませんでした。
正直、30%のグリコール酸でこんな無傷で生還なんて絶対できないと思っていたんですけど、、
(少なくとも紅斑くらいは残ると思っていた)
一応本来のケミカルピーリングであれば、その後時間経過で角質の脱落(落屑)とともに正常な皮膚に生まれ変わるはずです。
というわけで一日経過後がこれ、
特に何も起こりません。
まぁケミカルピーリングで実際に皮剥けが生じるので2~3日後とか言われるので、
一日ではわかんないのかな?…と思っていたのですが、
それにしても30%にしては効果が弱いのがすごく気になってきました。
だって、グリコール酸って3.6%で劇物ですよ?
30%塗って一日経って何も起こらないのはさすがに不思議です。
ここで、僕は一つ大きな過ち(?)に気づいたのです。
この製品は、もしかしたら僕が思っていたほど効果が強くないのではないか?…と。
◎「血みどろピーリング」は実はそれほど強力なピーリング剤ではない?
そもそも僕ってアトピーで、大抵の刺激のある製品にはかなり敏感に反応できるちょっと特殊な肌を持っています。
それでいて30%のグリコール酸に触れて「ちょっとヒリヒリするかな~?」という感想で済んでいるのはあり得ないと思いました。
本当に医療現場で使われている薬剤と同等のものであれば、
もっと劇的に刺激を感じるはずなんです。
つまり、この製品は「AHA30%+BHA2%」というヤバい濃度にも関わらず、
世界中でかなり多くの人が家庭で適当に使用(しかも10分とか超長時間放置)しても
大した問題が生じないカラクリがある可能性が高いと踏んだわけです。
そしてそのカラクリが、「pH」を測れば分かるんです。
本来、グリコール酸という成分は、こちらの安全性データシートを参考にすると
0.5%濃度でpH2.5、10%濃度でpH=1.73くらいになるそこそこの強酸性物質です。
30%もあれば、pH=1.0くらいあってもおかしくないです。
(希塩酸などの強酸と同等レベル)
しかし、この「血みどろピーリング」は、実際にpHを計測すると
「pH=3.5」程度に設定されているんです。
本来のpHから考えるとかなり高い(中性よりの)数値です。
言われてみれば、全成分表を確認すると
グリコール酸、水、アロエベラ葉水、水酸化Na、ニンジン根エキス、プロパンジオール、コカミドプロピルジメチルアミン、サリチル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、…
『水酸化Na』という強アルカリ剤が4番目に入っているんですよね。
つまり
このアルカリ剤により、殆どのグリコール酸などのAHAは中和されてしまっており、
実質のAHA濃度はそこまで高くないと考えられます。
(1%~3%くらいではないでしょうか?)
グリコール酸はpH3.5以上になるとほとんど刺激を生じない成分です(成分が中和されて失活してしまっている)ので、
この血みどろピーリングも色はやばいし「30%」という数値はすごいのですが
実際の効果は美容医療で受ける同濃度のグリコール酸ケミカルピーリングとは大きく違うと思います。
◎敏感肌には刺激になる可能性大!美容医療レベルのピーリングはできない
以上、
The OrdinaryさんのAHA30%+BHA2%のピーリング剤を検証してみたのですが、
非常に高濃度の処方になっていますが、
グリコール酸がうまく効果を発揮出来ない程度にpHが高く設定されているので
言われているほど強力なピーリング効果はないようです。
とはいえ、
pH3.5でも普通に顔につけるにはそれなりに刺激が生じます(^^;)
人によっては全く刺激を感じず効果も全くないらしいのですが、
敏感肌であればヒリヒリ程度の刺激は感じるはずです。
中和されているとはいえ、ごく低濃度のグリコール酸やサリチル酸は活きているので
5分以上長時間放置すれば表面の角質除去くらいはできると思います。
本来30%のグリコール酸であれば「流したらツルツル!」程度の口コミでは済まないですし、
痛すぎて悠々と自撮りしてインスタに投稿している余裕なんてないと思います(苦笑)
ちなみに、こういったタンパク質変性剤を含む製品は、アレルギー反応を特に起こしやすいので
化粧品でアレルギーを起こしやすい人はこの製品に限らず注意したいですね。
というわけで、なんでこんな劇薬のようなアイテムがここまで称賛されているのか、
健康被害がさほど生じていないのか非常に不思議に思っていましたが、
やはりそれなりに刺激を緩和する方策が取られていたということですね。
そもそも個人的には自宅でのケミカルピーリングに準ずるような行為は絶対にお勧めしません。
特に敏感肌で悩む人には「ピーリング」と名のつく化粧品や美容医療なども含めすべて推奨しません。
この商品も、もちろんお勧めとは言えないものです。
化粧品の場合は上記のようなケミカルピーリング剤はほとんど国内では販売されていないはずですが、
国外からでも買い付けてやりたい人がいるというのも考えものだな…と思います。
今回の製品は意図的に効果が弱められていたので結果オーライではありましたが、
本当に表示通りのものであればかなり危険な製品でした。
またケミカルピーリングやピーリング剤については考えをまとめたいと思っていますので、
続きはまた今度としたいと思います。
それでは今日はここまでです!
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