高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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30.親の意思をどう確認するか?判断能力があいまいな場合の対処

 

親の意思が見えない。

きょうだいの一人が面会や連絡を制限し、他の家族は「本当に親が望んでいるのか?」と疑いを抱く。

 

こうした“囲い込み”の現場で最初に問われるのは、親の「意思の確認」です。

高齢になると判断能力は白黒ではなくグラデーションになり、時間帯や環境で揺らぎます。

 

本稿では、平易さを保ちつつ、法律・税務・心理の観点を交えて、判断能力があいまいな場合の“実務的な意思確認のしかた”をまとめます。

一般的な情報提供であり、具体的な手続は各専門職(弁護士・司法書士・公証人・医師等)へ個別相談してください。

 

 

 

1. 原則:本人の意思を最優先する

 

意思決定は「本人の権利」です。

家族が代わりに決めるのはあくまで例外であり、まずは本人が理解できる形に情報を整え、決められる部分は本人に決めてもらう「意思決定支援」が基本姿勢になります。判断能力は行為ごとに評価され(例:大きな不動産売買と、日々の生活選好は別)、同じ人でも「午前中ははっきりしている」「静かな場所だと理解が進む」などの差が出ます。

 

 

2. 判断能力はグラデーションで捉える

 

「話せる/話せない」で切らず、次の三点で見立てます。

  1. テーマ別能力:財産・医療・居住・面会など、領域ごとに理解力は異なる。
  2. 環境依存:時間帯(夕方は疲れやすい)、同席者(威圧する家族の前では黙る)、騒音や照明。
  3. 反復での安定性:同じ説明を日を改めても同様に理解・選択できるか。

 

 

3. 意思確認の実務ステップ(6段階)

  1. 目的の明確化
     何を決めるのかを一つに絞る(例:面会の頻度、生活の希望、相続方針の大枠など)。
  2. 場を整える
     静かで中立的、短時間(15~30分)を目安。疲れやすい場合は午前中。利害関係者が圧をかけない座席配置。水分や眼鏡・補聴器の準備。
  3. わかりやすい説明+要約返し(Teach-back)
     専門用語を日常語に置換し、図やメモを使う。説明後に「いま私が言ったことを、あなたの言葉で教えてください」と要約してもらい、理解度を確認する。
  4. 選択肢は少なく、保留と撤回を可
     二択+“保留”を提示する。「今日はここまで、明日また考えましょう」と時間的余裕を必ず示す。
  5. 価値観・感情の聴取
     事実質問(誰と住みたいか)に加え、価値観質問(何を大切に感じるか)を聞く。過去の生活史や口癖から“その人らしさ”を拾い上げる。
  6. 記録化
     日時、場所、同席者、説明内容(使った紙資料も保存)、本人の言葉(できれば逐語)、合意事項、保留事項。録音・録画や、第三者の同席メモがあると後日の紛争予防に有効。
 

 

4. 記録の具体策

  • 面談メモ/議事録:A4一枚で要点化。本人の発言は引用符で。署名・押印が取れればベター。
  • 音声・映像:短時間で要点のみ。疲労が見えたら中断。
  • 医師の意見書:もの忘れ外来や主治医に“現時点の理解・判断の目安”をコメントしてもらう(医療機関による)。
  • 公的関与:重要意思(遺言・任意後見契約など)は、公証人の関与で手続の適正を担保する方法がある。

※いずれも証拠化のためであり、誘導や圧力をかける材料に使ってはならない。

 

 

5. 第三者を入れる判断基準

  • 利害関係が強いきょうだい同士で合意形成が難しい
  • 親が特定の子の前だと萎縮する
  • 財産・住まい・医療など影響が大きいテーマ
    この場合、地域包括支援センターケアマネジャー社会福祉士公証人弁護士・司法書士など“中立目線を持てる専門職”の同席を検討します。税務・相続設計に関わる場面では、贈与や遺言の前に「本人の意思が十分に表明できているか」を確認し、必要に応じて法的専門家へ接続します(ここは非弁行為にあたらない範囲での一般的助言に留めます)。

 

 

6. 使える仕組みと道具

  • 任意後見契約・見守り契約・財産管理契約:判断力が不安定なうちに将来の代理人を決める。公証役場での手続が一般的。
  • ACP(人生会議)/事前指示書:医療・ケアの希望を平時に共有。
  • 家族会議のテンプレ:定例化(例:月1回30分)、議題と結論、次回までの宿題を明記。
  • 意思表示カード/チェックリスト:視覚化して迷いを減らす。
  • 面会合意書:面会の頻度・方法・同席者・オンライン可否を合意文書にする。

 

 

7. “囲い込み”下での工夫

  • 個別面談の確保:圧になる同席者を外し、短時間で本人だけに聞く機会を要請。
  • 文書による意思確認:手紙や質問票を郵送し、本人の筆跡や返答を保存。
  • オンライン面談:施設ルールに沿って職員の同席で短時間実施。
  • 第三者同席の要請:包括支援センターやケアマネに「中立の場の設定」を依頼。
  • リスクの記録:通帳の急な移動、印鑑の所在不明、連絡遮断の急変など“異常の兆し”は日付付きで記録し、感情論ではなく事実で相談につなげる。

 

 

8. 事例で学ぶ(書面上の表現/心理的な内面仮説を区別)

 

事例A:居住と生活の希望

  • 書面上の事実(想定):父は夕方に混乱しがち。午前10時、静かな個室で「今後どこで暮らしたい?」をテーマに15分面談。写真アルバムを見ながら生活史を想起。父は「病院より家が落ち着く。長男の近くが安心」と発言。面談メモに署名。
  • 心理的な内面仮説:家の“匂い”や馴染みの商店街が安心感の基盤。長男への信頼は“送迎をよくしてくれた”体験の積み重ね。

 

事例B:生前贈与の意思

  • 書面上の事実(想定):母が「長女に500万円を前渡ししたい」と表明。専門用語を避け、税負担・他の兄弟への影響を図で説明。Teach-backで母が自分の言葉で要点を再述。翌週に同旨を再確認し、医師の簡易意見とともに公証役場へ相談。
  • 心理的な内面仮説:長女の介護負担への感謝を形にしたい。公平と平等の違いを理解したうえで「納得のいく分け方」を望む。

 

事例C:面会交流の希望

  • 書面上の事実(想定):父が「月1回は皆に会いたい」と発言。面会合意書に「第1土曜午前/1時間/職員同席/オンライン代替可」を明記し、家族全員が署名。
  • 心理的な内面仮説:「会うこと」が家族である実感と生きがいにつながる。頻度より“予定が見えている安心”が重要。

 

 

 

9. NG例とリスク管理

  • 誘導尋問(「こうしたいんだよね?」と答えを誘う)
  • 長時間面談・疲労時の意思確認、飲酒後の確認
  • 録音もメモもない口頭合意だけで重要事項を決める
  • 専門家の関与なしに遺言や大規模財産移動を進める
  • 利害関係者が周囲を固めて他の家族を排除する

これらは後日の紛争・無効主張の温床になります。

 

 

10. よくある疑問

  • 診断が出ていないが、物忘れがある:診断名の有無と意思能力は別問題。テーマごと・場面ごとに支援を工夫し、反復確認と記録で補強します。
  • 一度決めた意思は変えられない?:状況や理解が深まれば変更はあり得ます。撤回可能性を常に開いておくのが誠実です。
  • 家族が対立している:中立第三者の同席で“圧”を除去し、本人の言葉を丁寧に拾います。合意書面化で運用を安定させる。

 

 

まとめ:今日からできるチェックリスト

  1. テーマを一つに絞り、静かな場を15~30分確保する
  2. 説明は日常語と図、最後に本人の要約で理解確認
  3. 選択肢は少なく、保留と撤回を常に可にする
  4. 面談メモ・録音・第三者同席で“事実”を残す
  5. 重要事項は医師・公証人・弁護士・司法書士等と連携する

 

親の意思は、適切な支援と環境があれば、たとえ“あいまい”に見える状況でも確かに届きます。家族それぞれの正しさをぶつけ合う前に、まずは“その人の声”を取り戻す――それが囲い込みの解消に向けた第一歩です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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29.介護記録を取る/開示請求する際の注意点―囲い込みを防ぎ、親の権利と家族の関係を守るために―
 

「最近、きょうだいが介護先との窓口を独占し、こちらには何も共有されない」

「施設に問い合わせても“家族代表者からの依頼のみ”と言われてしまう」

 

こうした相談が増えています。囲い込みの渦中では、感情が揺さぶられる一方で、判断の土台となるのは客観的な記録です。
 

本記事では、実務と心理の両面から、

 

①家族が自分で取る介護記録の作り方

②施設・事業者に対する記録の開示請求の要点

③断られた場合の対応

 

を整理します。

 

なお、以下は一般論であり、個別の法的助言ではありません。具体的な紛争や手続きは弁護士等の専門家へご相談ください(非弁行為を避けるための注記)。

 

 

 

1.なぜ「記録」が要になるのか

 

書面上の表現(事実)

  • 事実の時系列が可視化され、面会制限・身体状態の変化・事故対応・費用の流れ等を第三者に説明できる。
  • 介護サービスの質改善や、担当者会議での建設的な議論に資する。
  • 紛争・後見・苦情申立て・税務申告(医療費控除等)での裏付けになる。

心理的な内面仮説(背景理解)

  • 記録は「相手を責める道具」ではなく、「不安を言語化し、関係を整理する枠組み」。
  • 感情と事実を分けて残すことで、無用な対立を避け、交渉の余地を残す。
 

 

2.家族が自分で取る「介護記録」――今日からできる実務

 

記録する項目(最低限)

  1. 日時・場所・関与者(職員名・部署を含む)
  2. 面会・連絡のやり取り(要点、相手の回答、次の約束)
  3. 親の様子(食事量・睡眠・表情・発言・痛み訴え、転倒痕の有無など)
  4. 重要イベント(転倒・発熱・受診・身体拘束の説明・同意取得の有無)
  5. 介護サービスの提供内容と所要時間(分かる範囲で)
  6. 金銭関連(領収書、預り金の出納、交通費メモ)
  7. 添付(写真・文書の写し。施設ルールに従い、他入居者の映り込みに配慮)

書き方のコツ

  • 事実/評価の分離:「看護師Aが13:20に“解熱傾向”と説明」までが事実。「安心した」は評価。
  • 固有名詞と数字:人名・部署・体温・時間・回数を入れる。
  • 一次情報優先:伝聞は「Bさんからの伝聞」と明示。
  • 一件一葉:1出来事=1ページ(または1ノート)で検索性を高める。

フォーマット例(簡易テンプレ)

  • 表題/通し番号
  • いつ(日時)/どこで/誰が
  • 何が起きたか(事実)
  • こちらの要望・合意点・次回確認事項
  • 添付(写真・領収書・通知文など)

NGと注意

  • 無断の録音・撮影、SNSでの拡散(プライバシー・施設ルール違反の恐れ)。
  • 感情的表現や断定的非難のみの記載(交渉の障害)。
  • データ散逸(クラウド+紙バインダーの二重保管を推奨)。
 
 

 

3.施設・事業者が保有する主な記録(概観)

  • 介護過程:アセスメント、ケアプラン、モニタリング、サービス提供記録(介護・看護)、担当者会議録
  • 安全管理:事故・ヒヤリハット報告、再発防止策、身体拘束の実施記録と根拠
  • 医療・服薬:服薬管理表、医師指示書、受診記録、検査結果の受領状況
  • 連絡・面会:面会簿、苦情・要望・回答記録、連絡票
  • 請求関連:介護給付の算定根拠、利用明細、預り金出納
    ※保存年限や開示範囲は、サービス類型・規程で異なります(概ね数年単位)。古いものは残っていない可能性があるため、期間を特定して請求するのが合理的です。
 

 

4.開示請求の基本設計

 

誰が請求できるか(原則)

  • 本人
  • 代理人(本人の委任状+本人確認書類)。
  • 法定代理人(成年後見人等。審判書謄本・登記事項証明の提示)。
  • 家族でも、本人の明示同意があれば可能な場合が多い。判断能力が不十分な場合は代理権の確認が要。

事前に揃える書類

  • 本人確認(写し)/請求者の本人確認
  • 続柄の分かる公的書類(必要に応じて)
  • 代理権の根拠(委任状、後見登記事項証明等)
  • 請求の目的と利用範囲(苦情解決、本人理解、医療連携等。対立色の強い表現は避ける)
  • 対象期間・対象文書の特定(例:2025年4–6月のケア記録と事故報告)

方式・費用

  • **閲覧のみ/写し交付(紙・PDF)**を選択。
  • 手数料や準備期間は規程依存。早期に相談し、相手の作業負担に配慮して分割交付も可。

文面テンプレ(要約)

介護記録等の開示・写し交付のお願い
貴施設に入所中の○○(生年月日:…)の家族△△です。本人同意(別紙)に基づき、下記の期間・文書の開示(写し交付)をお願いします。

  1. 対象期間:2025年4月1日〜6月30日
  2. 対象文書:ケアプラン、サービス提供記録、事故報告、面会簿の該当部分
  3. 利用目的:本人状態の把握と家族間の情報共有、今後の支援方針検討
  4. 交付方法:PDFデータ(パスワード付)可。費用は貴規程に従い負担します。
  5. 連絡先:…
    以上、業務ご多忙のところ恐れ入りますが、可能な日程をご教示ください。
 
 

 

5.断られた場合の丁寧な打開策

 

よくある説明と返し方(攻撃せず、根拠と配慮で)

  • 「家族代表者のみ対応」→「代表者一本化の方針は理解します。本人同意書と委任状を添付しますので、期間と文書を限定して交付いただけますか」
  • 「個人情報なので…」→「本人の自己情報の開示であり、同意書を同封しています。第三者情報はマスキングで構いません」
  • 「作業が大変」→「負担軽減のため、最近3か月分のみ先に、残りは次回で結構です」

外部の関与

  • まずは地域包括支援センターや自治体の高齢福祉・介護保険担当に相談。
  • 明白な不当拒否や権利侵害が疑われるときは、弁護士への相談も選択肢。
 

 

6.記録を「活かす」整理術(実務)

  • タイムライン化:自作記録と開示資料を同じ時系列に並べる。
  • エビデンス束ね:一件一束(出来事→証拠→相手説明→当方要望→結果)。
  • 争点マップ:面会、転倒、金銭、医療連携などテーマ別に論点を見える化。
  • 合意の文書化:口頭合意→メール要約→議事録→サイン、の順で確度を上げる。
 
 

 

7.囲い込みを予防する「先手」

  • 同意書の事前取得:判断力が十分なうちに「家族間共有に同意」文面を作成。
  • 家族代表者の合意メモ:複数連絡先を施設に登録し、情報共有ルールを文書化。
  • 委任契約・見守り契約:親と子の間で、連絡受領・情報取得の権限を明確化。
  • 後見・任意後見の検討:判断能力低下に備え、誰が代理権を持つかを早めに設計。
  • 証憑の保存:領収書・明細は確定申告や費用精算の根拠。医療費控除の可能性もあるため、年単位で保管。
 

 

8.よくあるQ&A(要点だけ)

 

Q:費用はどれくらい?
A:規程によります。写しの枚数・方法で変動。事前に見積り依頼を。

 

Q:第三者情報は見られない?
A:他入居者や職員の個人情報はマスキングが一般的。本人に関する部分は原則対象。

 

Q:本人が同意してくれない
A:本人の意思が最優先。説得ではなく、理解のための説明と小刻みな共有から。どうしても必要な場合は法的代理の検討を。

 

Q:相続人は亡くなった親の記録を取れる?
A:取扱いが分かれる領域。目的・範囲を明確にし、施設規程や専門家の助言に沿って進める。

 

Q:録音・録画は?
A:施設ルールと法令に配慮。事前許可と限定利用、第三者の写り込み回避が基本。

 

 

9.まとめ――安心・理解・行動へ

  • 囲い込み下では、感情と事実を切り分ける記録が力になります。
  • 開示請求は「攻撃」ではなく、本人の生活の質を高めるための情報連携です。
  • 期間・文書を限定し、相手の負担に配慮した丁寧な依頼が、結果的に最短距離。
  • 断られても、粘り強く・礼節を尽くしてステップを踏めば道は開けます。

 

(注)本稿は一般的解説であり、特定の事案に対する法的助言ではありません。手続・紛争対応は弁護士等の専門家にご相談ください。

 

 

 

 

 

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28.面会を拒否されたときの文書の書き方

 

高齢の親に会いたいのに、きょうだいの一人や介護者、入所先から「今は会わせられない」と拒否される

――これは当事者に深い無力感をもたらします。

 

私は「高齢親の囲い込み解消コンサルタント/公認会計士・税理士」として、法・税・心理の視点を横断しながら、当事者が冷静に一歩進めるための「文書による働きかけ」を支援してきました。

 

本稿では、面会を拒否されたときの文書の基本構造、送付の工夫、宛先別の配慮、段階別テンプレまでを解説します。なお、以下は一般的情報であり、具体的な法的主張の作成は弁護士等にご相談ください。

 

 

 

1.文書のゴールを最初に決める

 

文書は感情の発散ではなく、次の合意を引き出すための道具です。ゴールは三つに絞ります。

  1. 面会の事実関係を丁寧に確認する(いつ・誰が・なぜ拒否したか)。
  2. 面会の意向と具体的提案(日時・方法・配慮事項)を示す。
  3. 期限と連絡手段を合意できる状態にする。
    この三点を外さなければ、読み手は「どうすればよいか」が分かります。

 

2.基本原則:事実→意図→要望→期限→連絡先

 

文章の順番が肝心です。
 

・事実:感情評価を挟まず、観察可能な出来事のみ記載。「〇月〇日〇時、△△施設入口で、□□さんから『面会はできない』と口頭で告げられました」
・意図:「親の安否を確かめ、家族として時間を共にしたい」など、建設的な目的を短く。
・要望:面会の方法(対面・オンライン・ガラス越し・短時間など)と候補日時を3つ程度。
・期限:返信期限を明記(例:「〇月〇日までにメールでご回答ください」)。
・連絡先:電話・メールの両方を記載。代理連絡がある場合はその旨も。

 

 

 

3.記録と送付の工夫(後で効く)

 

後日の紛争予防には、手順と証拠性が大切です。
 

・下書き保存:送信前の原稿と送信後のPDFを保管。ファイル名は「2025-08-18_面会要請_第一信.pdf」。
・送付手段:まずはメールまたは手紙(一般書留)。改善がない場合に限り、内容証明郵便を検討(文言作成は弁護士へ)。
・ログ化:時系列メモ(日時/相手名/対応内容/こちらの提案/相手の回答)。

 

 

4.宛先別の配慮ポイント

 

きょうだい・親族が窓口の場合

相手の「介護負担」「感染配慮」「疲弊」に共感を一文添えると通りやすくなります。責任追及口調は逆効果。

 

施設・ケアマネの場合

「面会ルールの確認」と「例外運用の相談」を分けて書きます。現場が守るべきルールを尊重しつつ、短時間・予約制・医療同席など代替案を提示。

 

介護サービス事業者の場合

職務範囲を尊重し、連絡窓口や情報提供の範囲を確認する依頼文にします。

 

 

 

5.書式の骨格(見出しで読みやすく)

 

件名:面会方法のご相談(候補日時のご提案)
本文冒頭:挨拶+関係性の明示(長男・長女等)
本文本体:1) 事実、2) 意図、3) 要望、4) 期限、5) 連絡先、6) 添付(診断書や身分証の写しが必要なとき)
結び:感謝と敬意の一文。「ご多忙の中、親のために尽力いただきありがとうございます。」

 

 

6.OK/NG表現の例

 

・OK:「事実を確認したく、記録のため文書でご連絡します」
・NG:「隠しているのは明らかだ」「法的措置を取る」などの断定・威圧(初手では避ける)。
・OK:「短時間(15分)、職員立会い、平日午後でいかがでしょうか」
・NG:「今週中に必ず会わせろ」(ゼロイチ要求は避け、複数案を)。

 

 

 

7.段階別テンプレ(コピペ可・必要に応じ調整)

 

※「書面上の表現」と「心理的な内面仮説」を分けて示します。

 

第1信:穏当な確認と提案

 

【書面上の表現】
件名:面会の方法についてのご相談
本文:
〇〇様
いつも母(〇〇)の介助にご尽力いただき、心より感謝しております。
さて、〇月〇日〇時に施設入口にて□□様から「本日は面会できない」とご案内を受けました。現場事情があると承知しつつ、母の様子を直接確認したく、以下のいずれかでの面会をご提案します。
候補日時:①〇/〇(火)14:00、②〇/〇(木)16:00、③〇/〇(土)10:00
方法:対面15分(職員同席)またはオンライン(Zoom)
配慮:マスク着用、発熱時は延期
ご都合の良い案を、〇月〇日までにメールでお知らせください。別の案があれば柔軟に調整します。
連絡先:メール/電話
以上、どうぞよろしくお願いいたします。
差出人・住所・署名

 

【心理的な内面仮説】
「拒否は悪意だけでなく、感染対策・疲労・誤解の可能性がある。まずは関係を壊さず“代替案+期限”で扉を開ける」

 

 

第2信:再確認と期限の明確化

 

【書面上の表現】
件名:面会の再提案(期限のご確認)
本文:
前便(〇月〇日付)へのご返信が未着のため、重ねて面会方法のご提案です。
候補日時を再掲します(①~③)。難しい場合は、今後の面会ルール(頻度・方法・窓口)を文書でご教示ください。〇月〇日までにメールにてご回答をお願いできますでしょうか。
なお、母の心身の状況に鑑み、短時間でも定期的な交流が望ましいと考えております。建設的に合意できるよう努めます。
差出人ほか

 

【心理的な内面仮説】
「応答がない=意図的拒否と決めつけない。『ルールの明文化』という落としどころを提示」

 

 

第3信:正式通知の素案(専門家相談を前提)

 

【書面上の表現(骨子)】
件名:面会可否および連絡体制の文書回答のお願い(記録のため)
本文:
1)これまでの経緯(事実のみ、日付・相手・要旨)
2)当方の意向(家族としての面会・安否確認)
3)具体案(方法・頻度・同席・感染対策)
4)求める回答(面会可否と根拠、連絡窓口、緊急時の連絡方法)
5)回答期限(〇月〇日)
6)今後の手段:合意に至らない場合は、公的な話し合いの場(例:関係機関連絡・調整の相談)を検討する旨を控えめに記載
※この段階の文面は、内容証明郵便の送付も含め、弁護士に確認を依頼してください。

 

【心理的な内面仮説】
「関係を断ち切らず、交渉の道を残しながら“記録性”を高める」

 

 

 

8.よくある失敗と対策

 

・長文すぎて主旨が埋もれる→A4一枚に収め、詳細は別紙。
・感情語が先行→初段落は事実と感謝で開始。
・候補日ゼロ→最低3候補。
・期限なし→返信期限は必ず書く。
・送って終わり→電話で到達確認。記録メモを更新。
・SNSで糾弾→関係悪化と証拠化のリスク。公的文書で淡々と。

 

 

9.心のケアの視点

 

面会拒否は「見捨てられ不安」「怒り」「罪悪感」を同時に刺激します。文書作成の前に、短い深呼吸と1行メモで自分の感情を可視化しましょう。

 

「私は母の安否が心配」

「家族で話したい」。

 

この“ニーズの言語化”が、攻撃ではなく要望を伝える文面につながります。必要であれば第三者相談(地域包括支援センター、カウンセリング)を併用してください。

 

 

 

10.まとめとチェックリスト

 

・事実→意図→要望→期限→連絡先の順番になっているか
・候補日時は3つ以上か、代替案を示したか
・感謝と敬意の一文を入れたか
・A4一枚+別紙で読みやすいか
・送付手段と記録(PDF化・書留等)を整えたか

 

面会は「親は家族みんなのもの」という原則を体現する行為です。感情に飲み込まれず、記録性と誠実さのある文書で、扉を少しずつ開けていきましょう。

 

専門的な法的措置が必要と感じたら、ためらわずに弁護士等へ個別相談を。あなたの一通が、状況を前に進める第一歩になります。

 

 

 

 

 

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高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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27. 家庭裁判所への申し立てで何ができる?―親の囲い込み問題に悩む人のために

 

はじめに

 

「親に会いたいのに、兄弟姉妹の一人に阻まれて会えない」

「親のお金がどう管理されているのか不透明で不安」。
 

高齢の親をめぐる“囲い込み問題”でよく聞かれる声です。

 

親の囲い込みは、単なる兄弟姉妹間の感情のもつれではなく、深刻な人権問題であり、時には財産トラブルや虐待の温床にもなりえます。

こうした状況に置かれたとき、家庭裁判所へ申し立てることができる制度があります。
 

しかし「家庭裁判所に行けばすべて解決してくれる」と誤解している方も少なくありません。

 

そこで今回は、「家庭裁判所に申し立てると何ができるのか」を整理しながら、現実的な効果と限界をわかりやすく解説していきます。

 

 

 

 

1. 家庭裁判所とは何をするところか

 

家庭裁判所は、家族や身近な生活に関する紛争や問題を扱う専門の裁判所です。

たとえば以下のような分野を担当します。

  • 離婚・親権・養育費などの家事事件
  • 相続、遺産分割、遺言の効力に関する問題
  • 成年後見制度や財産管理に関する問題
  • 面会交流(離婚後の親子、または高齢親と子の交流)
  • 保護命令や人身保護などの人権救済

つまり、家庭裁判所は「刑事事件」や「商取引の大きな訴訟」ではなく、身近な家族・親族間のもめごとを扱う場所なのです。

 

 

2. 高齢親の囲い込みに関係する家庭裁判所の手続き

 

親が囲い込まれ、会えなくなったり、財産が不透明になったりしたときに、家庭裁判所でできる主な申し立ては以下の通りです。

 

(1)成年後見制度の利用申立て

 

親が認知症などで判断力が低下している場合、家庭裁判所に「成年後見人」を選任してもらうことができます。
成年後見人は、親の財産を管理したり、介護サービスの契約を代行したりする立場にあります。

 

ただし、後見人に選ばれるのは必ずしも子どもではなく、弁護士や司法書士といった第三者専門職が選ばれることも多いです。
 

「きょうだいの一人が勝手に親のお金を使い込んでいるのでは?」という疑念がある場合には、有効な制度ですが、後見人がつくことで家庭内のしこりがさらに強くなるケースもあります。

 

(2)保佐・補助の申立て

 

親がまだある程度判断できるものの、一部に不安があるときは「保佐人」「補助人」をつけてもらうことが可能です。
たとえば「大きな金銭契約のときだけサポートが必要」という状況に適しています。

 

(3)遺産分割前の財産管理人の選任

 

親が亡くなったあと、相続手続きに入る前に「財産を誰が管理するのか」で争いになることがあります。
このとき家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることができます。
ただし、これは親の生前の囲い込み問題とは少しタイミングが異なります。

 

(4)面会交流の申立て

 

離婚後の子どもと親の面会交流だけでなく、「高齢親と子の交流」にも応用できるケースがあります。
例えば、兄弟の一人が親を施設に囲い込み、他の子どもに面会を拒んでいる場合、「面会交流の申立て」を通じて家庭裁判所に判断を求めることができます。

もっとも、この分野はまだ法制度上の整備が十分ではなく、必ずしも期待通りの結果が得られるわけではありません。

 

(5)人身保護請求(ハードルは高い)

 

親が事実上監禁されている、虐待を受けているといった深刻な状況では、「人身保護請求」という制度もあります。
これは人権救済のための強力な手続きですが、要件は厳しく、現実には多くのケースで認められません。

 
 

 

3. 家庭裁判所に申し立てるメリット

 

では、家庭裁判所に申し立てるとどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

  1. 中立的な立場で判断してくれる
    兄弟同士で話し合っても平行線をたどることが多いですが、裁判所を介することで第三者の公平な視点が入ります。
  2. 法的拘束力がある
    単なる話し合いではなく、裁判所の審判や決定には法的な効力があり、相手を動かす力になります。
  3. 親の利益を優先する枠組み
    成年後見などの制度は、あくまで「親の生活と権利を守る」ことを目的にしています。
    子ども同士の取り合いではなく、親のためにどうするかという視点を持ち込める点が重要です。
 

 

4. 家庭裁判所の限界

 

一方で、家庭裁判所には限界もあります。

 

  • 「親に会いたい」という気持ちに十分応えてくれるわけではない
    面会交流の申立てをしても、実際に定期的な面会が実現するとは限りません。
    親自身が「会いたくない」と言えば、それが尊重される場合もあります。
  • 時間と費用がかかる
    成年後見制度を利用すると、毎月の報酬が発生することがあります。
    裁判所の審理も数か月単位で進むため、すぐの解決を期待するのは難しいです。
  • 家族関係の溝を深める可能性
    裁判所を介することで「相手を訴えた」という感情が強まり、兄弟姉妹の関係が決定的に悪化することもあります。
 

 

5. 現実的な活用の仕方

 

こうしたメリットと限界を踏まえると、家庭裁判所への申し立ては「最後の手段」として考えるのが現実的です。

 

  1. まずは対話や調停を検討する
    家庭裁判所にも「調停」という仕組みがあり、まずは中立的な調停委員を通じた話し合いからスタートします。
    裁判に比べると柔軟な解決が期待できます。
  2. 親の意思を尊重する
    たとえ囲い込みがあると感じても、親自身がどうしたいのかを確認することが大切です。
    親の意思と子どもの思いがズレている場合、裁判所は親の意思を優先します。
  3. 専門家の助けを借りる
    弁護士だけでなく、公認会計士・税理士、社会福祉士など、多方面の専門家が関わることで、より現実的な解決策が見えてきます。
 

 

6. まとめ

 

家庭裁判所への申し立てでできることは、主に以下の5つです。

  • 成年後見制度の利用申立て
  • 保佐・補助の申立て
  • 財産管理人の選任
  • 面会交流の申立て
  • 人身保護請求(例外的)

これらはすべて「親の利益を守る」ことを基本にしています。
 

一方で、家庭裁判所は万能ではなく、「親にもっと会いたい」という感情面の願いには十分応えてくれないことも多いのが現実です。

 

だからこそ、まずは冷静に制度の限界を理解した上で、調停や専門家の助力を得ながら、一歩ずつ解決の道を探ることが大切です。

 

「親は家族みんなのもの」――。
 

その思いを胸に、家庭裁判所を上手に活用しつつ、高齢親が安心して過ごせる環境を取り戻していきましょう。

 

 

 

 

 

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26.親の財産が“囲い込んだ子”の管理下にあるリスク


親の通帳・キャッシュカードや印鑑、マイナンバーカード、保険証券、権利証等が、きょうだいの一人の手元に集中している――。

介護や通院の実務を担う中で「私が預かっておくね」と始まることは珍しくありません。

 

しかし、この状態が長期化し、他の家族が中身を確認できないままになると、相続・税務・家族関係のすべてで深刻な火種になります。

 

本稿では、公認会計士・税理士としての実務視点と、「親は家族みんなのもの」という立場から、何が危険で、どう予防・是正すべきかを整理します。

なお、以下は一般的解説であり、具体的紛争の法的助言は弁護士、登記・後見等の実務は司法書士、税務は税理士へ個別にご相談ください。

 

 

 

1. 「管理下」とは何が起きている状態か

  • 預貯金の出入金明細・残高が家族に共有されない
  • 印鑑・通帳・キャッシュカード・暗証番号を特定の子が独占
  • 不動産・保険・有価証券の契約書類がその子の保管下にある
  • 代理権(任意後見・見守り契約・委任状等)をその子だけが把握
  • 面会や連絡をその子がコントロールし、第三者確認が難しい

可視化されない「善意の管理」は、本人の自己決定を侵食し、家庭内の情報非対称を極端に拡大させます。

 

 

2. 主なリスク(法・税・家族)

  1. 使途不明金・横領疑義
    介護費や生活費の名目で多額の引出しが続くと、後日の遺産分割や調停で説明責任が問われます。領収書・メモが無い支出は「原資は誰のものか」「本人の利益か」が焦点になります。
  2. 不当な名義変更・偏った生前贈与
    預金の振替、保険受取人の変更、不動産の持分移転等が、他の家族に知られないまま進むことがあります。相続税では「名義預金」「贈与の成立要件未充足」などの否認リスクも。
  3. 納税資金・介護資金の枯渇
    無計画な支出で流動資金が減ると、施設入居一時金・医療費・固定資産税の支払いが滞ります。結果として資産売却や高利の借入へ追い込まれることも。
  4. 遺言・公正証書への不当介入疑義
    作成過程の独占や面会制限は、「影響力による意思形成の歪み」を疑われ、遺言の有効性争いを招きます。証拠化が不十分だと長期紛争化しがちです。
  5. 情報非対称による紛争の深刻化
    残高・契約一覧を他の家族が見られない状態は、疑心暗鬼を増幅し、話合いの土台を壊します。心理的負荷は本人にも悪影響です。
  6. デジタル資産の散逸
    ネット銀行・証券・ポイント・暗号資産等のID管理が一人に偏ると、退去・死亡時に所在不明となり、実質的に喪失します。
 

 

 

3. リスクが現実化するメカニズム

  • 情報の独占 → 監視・牽制が働かない
  • 「善意」の自己正当化 → 支出の線引きが曖昧化
  • 面会・連絡の遮断 → 外部からの是正圧力が消える
  • 証拠(領収書・記録)の欠落 → 後から検証不能
  • 本人の認知機能低下 → 意思確認が困難になり紛争化

 

4. 事例と二つの視点

 

【事例】次女Aが母の通帳と印鑑を預かり、施設支払い・買物を代行。半年後、出金が月30万円超。兄Bが疑問を呈するも、明細は「忙しいから」と共有されず対立へ。

 

  • 書面上の表現:明細・領収書の不備があり、支出の必要性・相当性の立証に弱点。
  • 心理的な内面仮説:Aは介護負担の不満と「自分だけが頑張っている」感情から、自己報酬化(ガス代・外食代を混在)した可能性。他方Bは排除感から敵意が増幅。

このように、書面(証拠)と感情(物語)の両輪で分析しないと、解決は進みません。

 

 

 

5. いますぐできる予防策(最低限の型)

  1. 財産目録の共同更新
    預金・証券・保険・不動産・年金・借入・デジタル資産を一覧化。保管場所・連絡先も記す。四半期ごとに家族で更新・署名。
  2. 二重承認ルール
    10万円超の出金は、少なくとも別の家族(または第三者専門家)の事前・事後承認。LINEやメールで記録を残す。
  3. レシート・契約の電子保管
    支払い根拠はスマホ撮影でクラウド共有。用途メモ(例:母食費、医療費、介護移動)を残す。
  4. 通帳・印鑑・カードの分散管理
    物理的保管は別人が、暗証番号は封印保管。安易なカード共用を避け、可能なら口座振替・請求書払いへ移行。
  5. 月次レポート
    出金サマリー、施設・医療の見込み費用、残高見通しをA4一枚で共有。エクセルでも十分。
  6. 本人意思の定期確認
    本人が何を望んでいるかを録音・議事録化(可能な範囲で)。第三者(ケアマネ・医師・士業)同席での確認が理想。
  7. デジタル資産リスト
    ID・パスワードはパスワードマネージャで管理し、「緊急アクセス」を第二承認者へ設定。
 
 

6. 望ましい制度設計(検討オプション)

  • 任意後見契約・見守り契約
    判断能力が十分なうちに、誰に・何を・どう管理してもらうかを契約化。定期報告条項を入れると透明性が高まります。
  • 家族信託(民事信託)
    不動産・預金を「信託財産」とし、受託者(管理者)と受益者(利益を受ける人)を分ける。受託者の報告義務や受益者代理人・信託監督人を置けば、独走を抑制できます。
  • 監督・関与の外部化
    税理士の月次監査、司法書士の信託監督、社会福祉士の見守りなど、第三者が入るだけで牽制が効きます。

※契約・登記・税務の設計は専門家と個別検討が必須です。


 

7. すでに「囲い込まれている」場合の初動

  • 証拠の静かな確保
    手元にある通帳コピー・振込票・領収書・家計簿・LINE履歴を体系的に保存。日付順のファイルに。
  • 現況の客観化
    「本人の生活実態」「入出金の流れ」「財産目録」「関係者マップ」を一枚にまとめる。
  • 面会・情報開示の求め方を変える
    感情的な非難ではなく、「領収書の写しを月末締めで共有してほしい」「10万円超は事前合意にしたい」とルール提案で。
  • 第三者同席での場づくり
    ケアマネ・包括支援センター・地域の専門職を交えて、本人の意思と費用計画を再確認。
  • 手続の選択肢
    緊急性が高ければ家庭裁判所の保全措置(後見申立て等)を弁護士と検討。名義変更・払戻しが疑わしければ、通帳等の開示・差止めの可否も含め、法的手段の適否を専門家と判断。

 

 

8. 家族内で合意すべき「お金の線引き」例

  • 本人の生活費・医療費・介護費は原則本人資産から
  • 介護者の交通費・駐車場・代替家事費はどこまで本人負担にするか上限を定める
  • 介護者の食事・雑費は原則自己負担(例外は事前合意)
  • 現金の立替は月次で清算し、レシート添付
  • 贈与・名義変更は原則停止。実施するなら全員合意と第三者確認

 

 

9. 心のケア:疑いと責めから、「機能する仕組み」へ

 

「頑張っている自分を認めてほしい」という思いと、「排除されている」という痛みが衝突すると、話し合いは決裂します。

責める言葉をやめ、数字と言葉を分けて整理しましょう。

数字(収支・残高・見通し)は表に、言葉(負担感・不安)は場を改めて。仕組みができれば、疑いは自然に減ります。

 

 

10. まとめ

 

親の財産が特定の子の管理下に固定化すると、使途不明金・不当な名義変更・遺言無効疑い・資金枯渇・税務否認といった多面的リスクが一気に顕在化します。

 

カギは「可視化」と「分散」と「第三者の関与」。

 

四半期更新の財産目録、二重承認、電子領収書、月次レポート、そして任意後見・家族信託等の制度設計で、善意を仕組みに変えていきましょう。

 

困ってからではなく、今日から始められる最小単位(A4一枚の現況表)をまず家族で共有する。

 

それが“囲い込み”を解いて、親の尊厳と家族の信頼を守る最短距離です。

 

 

 

 

 

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