高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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59.“親の老い”にきょうだいが向き合えなかったことへの怒り

 

こんにちは。
高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。

 

私のもとには、日々さまざまなご相談が寄せられます。
その中で、とてもよく耳にするのがこの言葉です。

 

「どうして私ばかりが親の現実を背負わなければならないのか。」
 

「兄弟姉妹はみんな見て見ぬふりをしてきたのに、いざ問題が起きたら文句ばかり言います。」
 

「親が弱っていくのが怖くて向き合えなかった気持ちはわかる。でも、あまりにも無責任すぎる。」

 

親の老いは、ゆっくりと、しかし確実に進んでいきます。
それを正面から受け止めることは、誰にとっても容易ではありません。

 

しかし、その現実から目を背け続けた結果、親ときょうだいの関係が壊れてしまうことがあります。

 

今日は、「きょうだいが親の老いに向き合わなかった」という現実が生む怒りと悲しみ、そしてその気持ちを少しでも整理するためのヒントについて考えてみます。

 

 


親の老いに直面したときの心の揺れ

 

親が高齢になると、これまで当たり前だったことが少しずつ変わっていきます。

  • 物忘れが増えてきた
  • 体力が落ち、外出を控えるようになった
  • 病気や怪我が増えた
  • 経済的な管理が難しくなってきた

これらは、親が「老い」という人生の新しい段階に入ったサインです。

 

しかし、いざそれを目の当たりにすると、多くのきょうだいが戸惑いを覚えます。
 

中には、現実を認めたくない気持ちが強く、「親はまだ大丈夫」と自分に言い聞かせてしまうことも少なくありません。

 

これは自然な心理反応であり、誰にでも起こりうるものです。
けれど、現実を直視しないまま時間が経つと、問題はさらに大きくなってしまいます。

 


「見て見ぬふり」をした結果、誰か一人に負担が集中する

 

ご相談を受けていると、多くの場合、きょうだいの中で「一番親に近い人」が急激に負担を背負わされるケースが目立ちます。

  • 同居している長女が、介護を一手に引き受ける
  • 実家の近くに住む息子が、通院や買い物の手配を担う
  • 一人だけが親の意思決定を迫られる立場になる

このように、誰か一人に責任が集中すると、次第にその人の心は疲弊していきます。

 

そして、ふと周囲を見渡したときにこう思うのです。

 

「なぜ、私ばかりがこんなに大変な思いをしなければならないのか。」

「親の老いはみんなの問題なのに、どうして私一人が現実を背負っているのか。」

 

この思いは、やがて怒りへと変わります。

 

 


怒りの裏側にある本当の気持ち

 

怒りは、とても強いエネルギーを持つ感情です。
しかし心理学的に見ると、怒りの奥には必ず別の感情が隠れています。

それは多くの場合、悲しみや孤独感です。

  • 「本当は一緒に支えてほしかった」
  • 「私だって親を一人で背負いたくなかった」
  • 「家族として協力できると信じていたのに」

これらの気持ちが裏切られたとき、人は深く傷つきます。
そして、その傷つきが怒りとなって表に出てくるのです。

 

つまり、きょうだいに対する怒りの本質は、「一緒に向き合ってほしかった」という願いが叶わなかった悲しみなのです。

 


きょうだいが現実から逃げる理由

 

もちろん、きょうだいの側にも言い分があります。
多くの場合、きょうだいは意図的に無責任であろうとしているわけではありません。

 

親の老いに向き合えない背景には、次のような理由があります。

  1. 恐怖心
    親が弱っていく現実を見るのが怖くて、直視できない。
  2. 罪悪感
    「自分は何もできていない」という思いが強すぎて、かえって距離を取ってしまう。
  3. 忙しさや生活上の事情
    仕事や育児に追われ、関わる余裕がない。
  4. 家族関係のわだかまり
    過去の親子関係やきょうだい間の確執から、関わること自体を避けてしまう。

こうした要素が複雑に絡み合い、「見て見ぬふり」という行動につながるのです。

 


怒りを少しずつ整理するために

 

「なぜ私ばかりが……」という怒りは、簡単に消えるものではありません。
 

しかし、次のようなステップを意識することで、少しずつ心が整理されていきます。

 

1. 自分の感情を「言葉」にする

怒りを心にため込むと、ますます苦しくなります。
まずはノートに書き出してみましょう。

  • 何に怒っているのか
  • どんな言葉をかけてほしかったのか
  • 本当はどうしてほしかったのか

書き出すことで、自分の本当の気持ちが少しずつ見えてきます。

 

2. 第三者を交える

きょうだい同士だけで話すと、感情的なぶつかり合いになりやすいものです。
ケアマネジャーや地域包括支援センター、専門家など、中立的な立場の人に入ってもらうことで、話し合いがスムーズになります。

 

3. 役割分担を「見える化」する

誰がどの負担を担うのかを具体的に紙に書き出すと、不公平感が減ります。
「漠然と頼られている」という状況が変わるだけで、心の重荷が少し軽くなります。

 

 


Aさんのケース:一人で背負った介護

 

50代女性のAさんは、母親が認知症と診断された頃から介護を一手に担ってきました。
 

遠方に住むきょうだいは、最初こそ「何かあったら言ってね」と言ってくれたものの、実際にはほとんど関わってくれませんでした。

 

「母が徘徊して夜中に探し回ったときも、兄は“そっちで何とかして”の一言でした。」

 

Aさんは疲労と孤独で限界を迎え、ある日こう叫んでしまったそうです。

「どうして私だけがこんなに大変な思いをしてるの!?みんなで母を支えるって言ったじゃない!」

 

その後、ケアマネジャーを交えた話し合いで、兄妹それぞれの事情を共有しました。
兄も妹も、母の老いに向き合うことが怖くて、現実から逃げていたことがわかりました。

 

「兄妹が完全に分かり合えたわけではありません。でも、あの日、初めてお互いの気持ちを知ることができました。」

Aさんは涙を流しながらそう語ってくれました。

 


「怒り」を自分の味方に変える

 

怒りは、決して悪い感情ではありません。
それは「本当はこうしてほしかった」という大切なサインなのです。

  • 親を一緒に支えたかった
  • 負担を分かち合いたかった
  • 家族として向き合いたかった

この願いを無視せず、言葉にして伝えることが、前進への第一歩です。

 

 


まとめ:怒りの根底にある「親への愛情」

 

きょうだいが親の老いに向き合わなかったことへの怒り――。
その根底には、親を大切に思う気持ちがあります。

 

今日お伝えしたポイントを振り返ります。

  1. 親の老いは誰にとっても直視するのがつらい現実
  2. 目を背けた結果、誰か一人に負担が集中する
  3. 怒りの裏側には「一緒に向き合ってほしかった」という願いがある
  4. 第三者を交えた話し合いで感情を整理し、役割分担を明確にする
  5. 怒りは「愛情の裏返し」であり、未来への行動のエネルギーにもなる
     

最後に

 

怒りは、親を想う気持ちが強いからこそ生まれる感情です。
その怒りを無理に消そうとせず、少しずつ言葉にして外に出していきましょう。

 

「私は一人で背負いたかったわけじゃない。」

その本音を伝えることで、少しずつ家族の対話が始まります。
 

怒りが悲しみを癒し、やがて親を想う優しい力に変わっていくことを願っています。

 

 

 

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