高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

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55.「親を責めたい自分」と「守りたい自分」のあいだで

 

こんにちは。
高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。

 

これまでたくさんのご相談を受けてきて、強く感じることがあります。
それは、親に対する感情はとても複雑で、両極端な思いが同時に存在するということです。

 

特に多くの方が口にされるのが、この言葉です。

「親を責めたい気持ちと、親を守りたい気持ちが、私の中でぐちゃぐちゃになっているんです。」

 

親を大切に思うからこそ生まれる葛藤。
そして、その葛藤に押しつぶされそうになる方が少なくありません。

 

今日は、この「責めたい自分」と「守りたい自分」の間で揺れる心と、少し楽になるための考え方についてお話しします。

 

 


親への複雑な感情は自然なこと

 

私たちは「親」という存在に対して、強い感情を持ちやすいものです。
なぜなら、親は生まれてから最も長い時間を共にし、人生に大きな影響を与える存在だからです。

 

だからこそ、次のような感情が同時にわき上がることがあります。

  • 感謝:「ここまで育ててくれてありがとう」
  • 愛情:「親を大切にしたい」
  • 怒り:「どうして私にこんな思いをさせたの」
  • 悲しみ:「分かり合えない寂しさ」
  • 罪悪感:「こんな気持ちを持つ自分はダメだ」

このように、親への感情は一色ではありません。

複雑に絡み合い、時に自分でもコントロールできないほど強く揺さぶられます。

 


「責めたい自分」が生まれるとき

 

親を責めたくなる気持ちは、決して特別なものではありません。
それは、多くの場合、次のような背景から生まれます。

 

1. 過去の傷がうずくとき

幼少期の記憶や、親とのすれ違いが今も心に残っているとき。
「あのとき、どうしてあんなことを言ったの」「なぜわかってくれなかったの」という思いが、現在の出来事によって刺激されることがあります。

 

2. 親の行動に振り回されるとき

高齢になった親が、介護や財産管理をめぐって問題行動を起こすと、怒りや苛立ちがわいてきます。
特に「囲い込み」などで親が他のきょうだいに操られているように見えると、強い怒りを覚えるものです。

 

3. 自分が無力だと感じるとき

親を守りたいと思っても、現実にはうまくいかないとき。
「自分がもっとしっかりしていれば……」という無力感が、やがて怒りとなって親に向かうことがあります。

「責めたい」という気持ちは、実は自分が深く傷ついているサインなのです。

 

 


「守りたい自分」も確かにいる

 

一方で、親を守りたい気持ちも消えることはありません。
どんなに腹が立っても、悲しくても、心の奥底にはこうした思いが残っています。

  • 少しでも安心して暮らしてほしい
  • 最期まで穏やかでいてほしい
  • 親の笑顔を守りたい

これは親子という関係が持つ自然な愛情です。
たとえ過去にどれだけ傷つけ合ったとしても、愛情が完全に消えることはありません

 

だからこそ、人は「責めたい自分」と「守りたい自分」の間で苦しむのです。

 


葛藤がつらい理由

 

この二つの気持ちが同時に存在するとき、人は強いストレスを感じます。

 

「責めたい気持ちはあるけど、そんな自分は冷たい人間じゃないか?」
「守りたいと思うけれど、もう限界だ……。」

 

このように、互いに矛盾する感情がぶつかり合うと、自分を否定したくなります。

これを心理学では「アンビバレンス(両価性)」と呼びます。

 

アンビバレンス自体は自然な心の動きですが、長く続くと心が疲弊してしまいます。
その結果、うつ症状や不眠など、身体にも影響が出てくることがあります。

 

 


心を保つための3つの視点

 

では、どうすればこの苦しい葛藤と向き合えるのでしょうか。
ここでは3つの視点を紹介します。

 

1. 「感情は事実」だと認める

責めたい気持ちも、守りたい気持ちも、どちらも本物です。
「こんな気持ちを持つ自分はダメだ」と否定せず、ただ「そう感じているんだな」と認めてあげましょう。

感情はコントロールするものではなく、まず「気づく」ことから始まります。

 

2. 自分と親を切り離して考える

親の言動が原因で生まれた感情でも、その感情を自分自身と同一視しないことが大切です。
「母の行動に私は傷ついた」と分けて考えることで、冷静さを保ちやすくなります。

 

3. 信頼できる第三者に話す

きょうだい間では感情がぶつかり合いやすいため、冷静な対話が難しいことが多いです。
ケアマネジャーや専門家など、客観的な立場の人に気持ちを話すだけでも、心が整理されていきます。

 


Aさんのエピソード:責めたい自分と守りたい自分

 

50代女性のAさんは、母親が施設に入居してからきょうだいとの関係が悪化し、面会が制限されていました。
 

Aさんはこう語ります。

「兄が母を囲い込んでいるように見えて、怒りで震えました。でも同時に、母を責める気持ちもあったんです。
“なぜ兄に任せてしまったの?”“私の声を信じてくれないの?”と……。」

 

母に怒りをぶつけたい気持ちと、母を守りたい気持ち。
その両方が同時に存在する中で、Aさんは深く苦しみました。

 

しかし、カウンセリングで自分の感情を整理していくうちに、少しずつこう思えるようになったそうです。

 

「私は母を愛しているからこそ、怒りも湧くんだ。どちらも私の大切な気持ちなんだ。」

この気づきによって、Aさんは自分を少しずつ許せるようになりました。

 


行動に移す前に「一呼吸」

 

感情が強いときは、すぐに行動に移すと後悔することがあります。
たとえば、怒りのままにきょうだいに電話したり、施設に押しかけたりすると、かえって状況が悪化することも。

 

そんなときは「一呼吸」置くことを意識してみましょう。

  1. 深呼吸を3回する
  2. その場から一度離れる
  3. 感情を書き出す

この3つをするだけで、衝動的な行動を防ぎ、冷静さを取り戻せます。

 

 


まとめ:どちらの気持ちも「あなた自身」

 

「親を責めたい自分」と「守りたい自分」。
この二つはどちらも、あなたの大切な一部です。

今日お伝えしたポイントを振り返ります。

  1. 親への感情は一色ではなく、両極端な思いが同時に存在して当たり前
  2. 「責めたい」気持ちは傷ついたサインであり、悪いものではない
  3. 感情を否定せず、「事実」として認めることが第一歩
  4. 冷静さを保つために、第三者の視点や一呼吸置く習慣が役立つ
     

最後に

 

親への愛情が深いからこそ、怒りや悲しみも強くなります。
責めたい気持ちも、守りたい気持ちも、どちらもあなたの心が必死に親子関係と向き合っている証です。

 

どうか自分を責めすぎず、感情を大切に抱きしめてあげてください。
その過程で少しずつ、自分自身も癒されていくはずです。

 

「私は親を愛しているからこそ、揺れるんだ。」

その揺らぎは、親子として生きてきた証であり、これからも親と向き合い続けるための大切な力になるのです。

 

 

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