高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。


私は、高齢になり介護を受けるようになった親を、きょうだいの一人が囲い込み、他のきょうだいに会わせない――いわゆる「高齢親の囲い込み」でお困りの方をサポートしています。

 

 

 

50.「きょうだい喧嘩」が親を不幸にしたと気づいた瞬間

 

こんにちは。
高齢親の囲い込み解消コンサルタント、公認会計士・税理士の白岩俊正です。

 

高齢の親をめぐるきょうだい間のトラブルは、全国で増え続けています。
 

親が介護を必要とするようになったとき、遺産相続が絡んできたとき――

それまで表に出ていなかったきょうだい間のわだかまりや不満が一気に噴き出すことがあります。

 

私のもとに相談に来られる方の中には、こんな方が少なくありません。

 

「母を施設に入れたくない私と、入れたい兄とで激しく対立してしまい……今では顔を合わせることもできません。」

 

「親の通院を誰が担当するかでもめて、言い争いが絶えません。」

 

このような争いは、きょうだい同士だけの問題にとどまりません。

 

実はその陰で、最も深く傷ついているのは“親”本人なのです。

 

今日は、あるご相談者Cさん(50代男性)のケースをもとに、「きょうだい喧嘩」が親をどれほど不幸にしてしまうのか、その現実をお伝えします。

 


介護をめぐるすれ違い

 

Cさんには二人の妹がいました。
母が80代半ばになり、足腰が弱くなってからは、妹たちと協力して介護をしてきたそうです。

 

しかし、ある日を境に雰囲気が変わりました。
母が認知症と診断され、施設入所を検討する段階になったときです。

 

長女のDさんはこう主張しました。

「もう私たちだけで介護するのは限界よ。施設に入ったほうが安心だから。」

 

一方で、次女のEさんは強く反対しました。

「施設なんて絶対いや。母は家で過ごしたいはずよ!」

 

Cさんは二人の間で板挟みになり、必死に話し合いを試みましたが、議論はどんどん感情的になっていきました。

 

やがて、「母を思う気持ち」よりも「自分の考えを通すこと」が優先されてしまったのです。

 


言い争いが激化する日々

 

それからというもの、きょうだいのやりとりは険悪になり、毎日のようにLINEで言い合いが続きました。

 

Dさん:「施設なら24時間安心して見てもらえるのよ!」
Eさん:「お金ばかりかけて、母の気持ちを無視して!」
Cさん:「二人とも落ち着いて……。母の前ではやめようよ。」

 

しかし、母の前でもつい口論になってしまうことが増えていきました。

母は黙って俯き、何も言わずに部屋の隅で震えていたそうです。
 

Cさんはその姿を見て、胸が締めつけられる思いでしたが、そのときは「母も年だから仕方ない」と自分に言い聞かせていました。

 


きっかけは母の一言

 

ある日、母が転倒して骨折し、急きょ入院することになりました。
 

入院先のベッドで、母はか細い声でCさんに言いました。

「お願いだから……もう、みんな喧嘩しないで……。」

 

その瞬間、Cさんはハッとしました。
母の目には、深い悲しみと疲れがにじんでいたのです。

 

「母は、自分の介護のことよりも、私たちきょうだいの争いを一番つらく思っていたんだ。」

 

そのことに、ようやく気づきました。

 


親を真ん中にした争いは「親の不幸」を生む

 

それまでCさんは、「母のために」という思いで話し合いを重ねてきたつもりでした。
しかし、実際はどうでしょうか。

  • 施設に入れるかどうか
  • 誰が費用を負担するか
  • 誰が主導権を握るか

話し合いは、「母を大切にしたい」という思いではなく、きょうだい同士の主張のぶつけ合いになっていました。

 

母にとって一番大切なのは、「安心して穏やかに過ごすこと」。
 

それなのに、きょうだいの争いが母の心をかき乱し、悲しみを与えていたのです。

 

「親を中心にしたきょうだい喧嘩は、親を守るどころか、親を傷つける。」

 

Cさんはこの現実を突きつけられました。

 


兄妹間の「言葉の刃」

 

きょうだい同士の喧嘩は、言葉の応酬になりやすいものです。
感情が高ぶると、普段なら言わないような言葉が飛び出します。

 

「どうせあんたは昔から親のことなんて考えてない!」
「口だけで何もしてないくせに!」
「全部私に押し付けて!」

 

これらの言葉は、親の耳にも入ります。
そして、親は自分の存在が争いの原因になっていることに苦しみます。

 

母はCさんにこう漏らしたそうです。

「私がいなければ……みんな喧嘩しなくてすむのに。」

 

その言葉を聞いたCさんは、胸が張り裂けそうになったといいます。

 


気づきと和解への一歩

 

母の入院中、Cさんは妹たちと真剣に話し合いました。
最初はぎこちなかったものの、母の涙を思い出しながら、互いに少しずつ冷静になっていきました。

 

Dさんがポツリとつぶやきました。

「私……母がかわいそうだから施設に入れたいと思ってたのに。結果的に母を泣かせてしまってたんだね。」

 

Eさんも静かにうなずきました。

「私も、“母を家で見たい”って気持ちが強すぎて、二人を責めてしまった。」

 

その日から、きょうだいは「母の気持ちを第一にする」ことを約束しました。

 


家族会議のルールを決める

 

再び同じような争いを繰り返さないために、Cさんたちはいくつかのルールを決めました。

  1. 母の前では絶対に口論しない
  2. 意見が分かれたら、一度その場を離れる
  3. 母の気持ちを確認してから決定する
  4. 費用や負担については書面にまとめる

 

この4つのルールを守ることで、少しずつ関係が落ち着いていきました。

母は退院後、以前より穏やかな表情を見せるようになったそうです。

 


まとめ:親の幸せとは何か

 

Cさんは今回の経験を通じて、こう語ってくれました。

 

「母を一番苦しめていたのは、病気や介護そのものではなく、私たちきょうだいの争いでした。そのことに気づけて、本当によかったと思います。」

 

きょうだい喧嘩は、誰の家族にも起こり得ます。
しかし、それが長引けば長引くほど、親の心を傷つけ、孤独に追いやる結果となります。

 


親を想う気持ちを、争いではなく「対話」に

 

もし今、きょうだい間で意見が食い違っているなら、次のことを意識してみてください。

  • 自分の主張よりも、親の気持ちを最優先にする
  • 感情的になりそうなときは、一度時間を置く
  • 可能であれば、第三者(ケアマネジャー、専門家)を交える

親のためにと戦っているつもりが、実は親を悲しませてしまっていないか――。
一歩立ち止まって考えることが大切です。

 


きょうだい喧嘩は、親の人生の最期を左右するほど大きな影響を持ちます。
 

その現実を忘れず、親が安心して笑顔で過ごせる時間を増やすための対話を、今日から始めてみてください。

 

 

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