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「アカデミー賞サイト オスカーノユクエ」 のサブサイトとして運営してきた当ブログですが、

本サイトにコンテンツマネージメントシステムを取り入れたこともあり、パラレルでの運営

の必要性がなくなりましたので、いったん更新作業をストップさせていただきます。

長い間ご愛読ありがとうございまいした。


今後、すべての記事はは本サイト「アカデミー賞サイト オスカーノユクエ」にて公開させて

いただきますので、以下のアドレスでお楽しみください。


http://oscar-no-yukue.com



9/2 - 9/4 全米BoxOfficeリポート

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◇ 「9/2 - 9/4 全米BoxOfficeリポート」
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◆◆◆ チャート・アクション


1. Transporter 2
2. The 40-Year-Old Virgin
3. The Constant Gardener
4. Red Eye
5. ブラザーズ・グリム
6. Four Brothers
7. Wedding Crashers
8. 皇帝ペンギン
9. The Skeleton Key
10. The Cave



●L・ベッソン製作アクションが首位デビュー!
今週堂々の首位デビューを飾ったのはフランスの雄リュック・ベッソンがプロデュースするクライム・アクション「Transporter 2」。ジェイソン・ステイサムがニヒルな運び屋を演じるシリーズ第二弾だ。
前作は2500館規模の公開で2500万ドルを売り上げたが、本来ならば続編製作にGoがかかるほどの成績とは言いがたい。続編製作が実現したのは、ひとえにステイサムというスター手前のローギャランティがモノを言ってのことだろう。実際、この続編にかけられた製作費はわずかに3200万ドルで、仮に前作程度の興収に終わったとしても十分に採算の取れる数字だ。
とはいえ、陣営には興行的にもっと色気があるようで、オープニングの上映館数は前作をはるかに凌ぐ3300館となっている。わずか2500万ドルしか売り上げなかった作品の続編としては破格の扱いだが、3日間の興行成績を見る限り、配給の20世紀FOXの賭けは成功したようだ。


Transporter2

●監督ルイ・レテリエの手腕に注目
アベレージ5000ドル、3日間合計1600万ドルという数字は取り立てて優秀とも言えないが、同シリーズと主演のステイサムの知名度からすれば十分に合格点を与えられる。サマーシーズンに公開されて大惨敗を喫したビッグバジェット作品を見ればわかるように、昨今の映画ファンは作品の質が悪ければ容赦ないジャッジを下しているだけに、知名度に頼らない戦略でこれだけの数字を残したことは評価されていい。
ファンからのお墨付きが証明するように、作品の質も一定水準をクリアしているようだ。こうしたアクション作品にはしばしば厳しい見解を示す批評家たちも、この低予算アクション映画に一定の評価を与えている。監督のルイ・レテリエは前作「ダニー・ザ・ドッグ」でも力量のあるところを見せたが、本作での成功で大きな注目を集めることは間違いない。今後はリュック・ベッソンの呪縛から逃れてもっと大きなチャンスを掴んで欲しい。


●F・メイレレスが華麗なハリウッド・デビューを果たす!
ヴェネチア国際映画祭のコンペ部門にエントリーのある「The Constant Gardener」が映画祭の開催に合わせるようにして封切られ、好パフォーマンスで初登場3位にランクインした。
傑作「シティ・オブ・ゴッド」で一躍時の人となったブラジルのフェルナンド・メイレレス監督がハリウッドで初めてメガホンをとった本作は、興行的なものよりはむしろ来る賞シーズンでの活躍を期待されている。1300館という公開規模はそれでも思い切った賭けに映るが、オープニングの結果を見る限り、興行的にもある程度の期待はかけてもよさそうだ。6000ドルを超えるアベレージは今週のBoxOfficeでは最も高く、今後の展開に期待を抱かせる。批評家から絶大な支持を集めていることを考えれば、5000万ドルを超える興収も十分にクリア可能だ。


The Constant Gardener

●お蔵入り作品の結末はやはり・・・
スケールの大きなプロットで期待された「Sound of Thunder」は全く冴えず17位に初登場。もともと1年近くお蔵入りとなっていた作品だけにこの結果は当然といえば当然か。1年も公開が遅れるにはそれなりの理由がある、ということだ。
主演のエドワード・バーンズはもともとサンダンス映画祭で脚本・監督としての才能を見出された逸材だったが、気が付けばB級アクション俳優の仲間入りを果たしており、今後のキャリアが心配される。


Sound of Thunder

◆◆◆ ニュー・リリース


◇ Transporter 2
オスカー期待値:★
リュック・ベッソン製お手軽アクションに注視するアカデミー会員はいないだろう。レテリエの才能は注目に値するが、彼が飛躍を果たすのはベッソンの元を去ってから。


◇ The Constant Gardener
オスカー期待値:★★★★★★
注目の人メイレレスが見事周囲の期待に応えた。サスペンスというジャンルがどう影響するかだが、とりあえず視界は良好。ビッグ・コンテンダーとして堂々の浮上を果たした。


◇ Sound of Thunder
オスカー期待値:★
2005年数多の公開作品の中でも5本の指に数えられる大駄作と誉れ高い。ラジー賞が食いつくか。


◇ Underclassman
オスカー期待値:★
「ドラムライン」のニック・キャノン主演のアクション・コメディ。同胞からも呆れられる質の低さで興行的にも惨敗。キャノンのキャリアに大きな影を落としてしまった。


注) オスカー期待値は★10個での評価となります。



◆◆◆ 次週リリース


さて次週。
3000館規模での公開が予定されているのは実力派キャストで描く悪魔祓いの怪「The Exorcism of Emily Rose」。ローラ・リニー、トム・ウィルキンソンを主要キャストに、ショーレ・アグダシュルーなどが脇を固める本作は決して興行的な要素の濃い作品とは言えず、大規模公開という賭けの行方が注目されている。上々と伝え聞く試写の結果を経ての強気の措置ということだろうが、果たしてどんな結果となるか。


サミュエル・L・ジャクソンとユージーン・レヴィがコンビを組んだコメディ「The Man」も面白い存在。ジャクソンは地味ながらなかなかの集客力を誇る存在で、そろそろコメディスターとして独り立ちしたいレヴィにとっては心強い味方になるだろう。


他、公開が延びに延びたR・レッドフォード主演の「An Unfinished Life」がようやく封切り。一時期ほどのひどいバッシング状態から逃れたとはいえ、ジェニファー・ロペス共演というファクターはまだまだ大きな不安要素だが・・・。


8/26 - 8/28 全米BoxOfficeリポート

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◇ 「8/26 - 8/28 全米BoxOfficeリポート」
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◆◆◆ チャート・アクション


1. The 40-Year-Old Virgin
2. ブラザーズ・グリム
3. Red Eye
4. Four Brothers
5. The Cave
6. Wedding Crashers
7. 皇帝ペンギン
8. The Skeleton Key
9. Valiant
10. The Dukes of Hazzard



●S・カレルのコメディが堂々のV2!
先週Topのコメディ「The 40-Year-Old Virgin」が堂々のV2を達成した。サマーシーズン終盤から「Wedding Crashers」が猛威を振るったように、40歳童貞男の悲哀を描いたこのコメディも観客のハートを鷲掴みにすることに成功したようだ。
今週の売上げ1600万ドルは前週比わずかに24%減という非常に優秀な数字で、今後もロングランヒットが望めそうだ。トータル興収はすでに4800万ドルを突破しており、早くもバジェットの倍近くを稼ぎ出している計算になる。次週以降もゆるやかな放物線でBoxOfficeに踏みとどまることが予想されるだけに、最終的には1億ドルラインも決して夢ではなさそうだ。


●T・ギリアム新作が2位に初登場
「ロスト・イン・ラ・マンチャ」の公開で”悲運の監督”というありがたくない称号をいただいていたテリー・ギリアムが久々に完成させた新作「ブラザーズ・グリム」は、1500万ドルの売上げで2位に初登場した。主演のマット・デイモンはジェイソン・ボーンという当たり役でBoxOfficeに実績を残しているものの、基本的には客を呼べるタイプのスターではなく、この作品も興行的には未知数な部分が大きかった。それだけに配給のDimension Filmsがとった拡大公開の戦略は勇気ある決断と評価されていいが、その結果が吉と出たかどうかの判断は難しいところだ。
5000ドルを下回るアベレージは決して優秀と言えるものではないが、万人受けしないギリアム作品としては健闘の部類に入る。首位デビューはならなかったものの、観客からそこそこの支持を集めての2位スタートなら、陣営も正直ホッとしているのではないだろうか。


ブラザーズ・グリム

●ヴェネチアでの苦戦は必至
とはいえ、次週以降の興行は苦戦を強いられそうだ。もともと集客力の小さいギリアム作品だけに頼りとするのは批評家からのお墨付きだが、今回の場合それは期待できそうもない。多くの有力紙はギリアムの映像センスは認めつつも物語の弱さを指摘。エンターテイメントとしても快作と呼べる類のモノではなく、早々に観客からそっぽを向かれるだろうとの予測もある。
本作は9月に開催されるヴェネチア国際映画祭のコンペ部門にエントリーしているが、本国での不振からヴェネチアでの活躍もかなり厳しくなったと言わざるを得ない。当然、オスカー戦線からは完全に脱落の様相で、美術部門でのノミネートの可能性がわずかながら残されているといった程度だ。


●好調ジャンルの神通力も通用せず
洞窟に潜み罠にかかったドライバーたちを襲う吸血クリーチャーの恐怖を描いた「The Cave」は5位にランクイン。ホラーという好調なジャンル・バリューでどこまで健闘できるかというところだったが、特に言及すべき点も見当たらない平凡な興行に終わった。批評家からの罵詈雑言は言うまでもなく、次週以降はBox Officeから姿を消すことになりそうだ。


The Cave

◆◆◆ ニュー・リリース


◇ ブラザーズ・グリム
オスカー期待値:★★
テリー・ギリアム久々の入魂作も批評家からの反応は冷たい。ヴェネチアでの巻き返しが期待されるが奇跡を願うのは酷だろう。美術部門でわずかながら可能性あり。


◇ The Cave
オスカー期待値:★
典型的な三文ホラー。ラジー賞すら相手にしそうにない。


注) オスカー期待値は★10個での評価となります。


◆◆◆ 次週リリース

さて次週。もっとも大きな規模での公開を予定されているのが「Transporter 2」。ご存知リュック・ベッソン製アクションの第二弾だ。監督は前作同様ルイ・レテリエ。「ダニー・ザ・ドッグ」はなかなかの快作だったが興行的には振るわなかった。今回は3200館規模の公開と実績を上回る評価で迎えられることになるが、見事結果を出すことが出来るか。

注目度が一番高いのはフェルナンド・メイレレス監督の「The Constant Gardener」だろう。傑作「シティ・オブ・ゴッド」でオスカー候補となったメイレレスがハリウッド資本で果たしてどんな作品を撮りあげたのか。ヴェネチア出品も決まっているだけにまずは本国で評価を得たいところ。公開規模はそれほど大きくないが、何とか上位に食い込んで名前を売りたい。


他、ピーター・ハイアムズ監督&エドワード・バーンズ主演のSFアドベンチャー「Sount of Thunder」も公開予定。人類の滅亡をかけた戦いというプロットはスケールが大きいが、公開規模は小粒。バーンズの集客力も大いに疑問で興行的には苦戦が予想される。


/19 - 8/21 全米BoxOfficeリポート

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◇ 「8/19 - 8/21 全米BoxOfficeリポート」
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◆◆◆ チャート・アクション


1. The 40-Year-Old Virgin
2. Red Eye
3. Four Brothers
4. Wedding Crashers
5. The Skeleton Key
6. 皇帝ペンギン
7. Valiant
8. The Dukes of Hazzard
9. チャーリーとチョコレート工場
10. Sky High



●40歳童貞男の物語がサプライズヒット!
今週堂々の首位デビューを果たしたのは40歳童貞男の悲哀と奮闘ぶりを描いたコメディ「The 40-Year-Old Virgin」。3000館に満たない公開規模ながら上々のアベレージで全米を爆笑の渦に巻き込んだ。サマーシーズン興行が終了してどうしても客足の鈍るこの時期に2000万ドルを超える収入を記録したことは驚異的で、配給のユニバーサルにとっても嬉しい誤算に違いない。
また、この爆笑コメディは批評家からの支持も厚く、現在もヒットを続ける「Wedding Crashers」のような息の長い興行も期待される。3000万ドル超のスタートダッシュを見せた「Wedding~」と比較するのは酷だが、うまくいけば1億ドルの大台突破も決して夢ではない。また1本、BoxOfficeにサプライズヒットが誕生したと言えそうだ。


40 Years

●新星スティーブ・キャレル登場!
もっとも、本作の興行が称賛されるべき最も大きな理由は主演のスティーブ・キャレルにある。「ブルース・オールマイティ」でジム・キャリーのライバルとなるキャスター役を演じて存在感を見せ付けていたキャレルだが、メジャー作品への主演は今回が初めてとなる。そのカメレオンぶりが仇となってか、これまで大きな注目を集めることはなかったが、本作のヒットで一躍スターの仲間入りを果たすことは間違いない
早くも、「Elf」の大ヒットでスターダムにのし上がったウィル・フェレルに迫るランクに格付けされたとしても過言ではないかもしれない。個人の集客力としては、「ドッジボール」、「Wedding Crashers」と大台超えを連発しているヴィンス・ヴォーンよりもずっといいパフォーマンスが期待できる新星だ。今後主演作のオファーが押し寄せるのは間違いなく、しばらくは目が離せない存在になりそうだ。


●W・クレイヴン監督のスリラーが2位
2位にランクインの「Red Eye」もなかなか順調な滑り出しを見せている。こちらは「スクリーム」シリーズのヒットでBoxOfficeでの信頼も厚いウェス・クレイヴン監督によるスリラー。3万フィート上空の民間機内で繰り広げられる殺人計画をめぐる攻防を描いたクレイヴン監督の新境地とも言える内容となっている。
批評家からも高い評価を受けている本作に主演するのは、「Wedding Crashers」でヒロインを演じて人気女優の地位を確立したばかりのレイチェル・マクアダムス。近作「きみに読む物語」と「ミーン・ガールズ」の2本でティーンのハートを鷲掴みにし、同時に批評家の視線も釘付けにした人気・実力を兼ね添えた久々の大型新人だ。主演作が次々に成功をおさめる好調ぶりはもはや神がかり的で、今後はJ・ロバーツやS・ブロック等のスター女優に負けない存在感でハリウッドをリードすることになりそうだ。


Red Eye

●英国製CGアニメが大惨敗
好調なオープニングを迎えた2本とは対照的に大惨敗を喫したのが7位に初登場となった「Valiant」。興行的にハズレなしのドル箱ジャンルであるCGアニメとあって、英国で製作されてディズニーが全米配給権を買い取った本作もそれなりの数字は期待されていた。ところがふたを開けてみれば1館当たりのアベレージがようやく3000ドルを超える程度の低調ぶり。第二次世界大戦を舞台に鳥たちが活躍するという内容は全米の子供たちには受けが悪かったらしい。
受けが悪かったのは批評家にも同じで、イギリス仕込みのユーモアが完全に上滑りしていると散々のケナされようだ。やはりこのジャンルは米国製に一日の長があると言えそうだ。


Valiant

◆◆◆ ニュー・リリース


The 40-Year-Old Virgin
オスカー期待値:★★
評判がいいとはいえさすがにオスカーに絡むようなジャンルではない。ゴールデングローブ賞ならS・キャレルの主演賞を始めチャンスありか。


Red Eye
オスカー期待値:★★
ジャンル的なハンデに加え、クレイヴン監督の名前もオスカーとは無縁で敬遠されがち。わずかに望みがあるとすれば好調マクアダムスの演技賞か。


Valiant
オスカー期待値:
本命ピクサー作品のエントリーが予定されていない今年の長編アニメーション部門とはいえ、この低評価では出番なし。


The Untold Story of Emmett Louis Till
オスカー期待値:★★★★★★★
1955年に起きたエメット・ティル少年惨殺事件の真相に迫るドキュメンタリー。今年のこの部門は激戦だが、話題性と高評価ぶりからもかなり有力なコンテンダーとなりうる。


注) オスカー期待値は10個での評価となります。


◆◆◆ 次週リリース


さて次週はテリー・ギリアム監督が送るゴシック・ホラー・アドベンチャー「ブラザーズ・グリム」がスタンバイ。来月出品が予定されているヴェネチア国際映画祭開催を前に一足早く全米の劇場でお目見えとなるが、幸先よいスタートを切れるかどうか。「12モンキーズ」のヒットがあるとはいえ決して一般受けしやすいわけではないギリアムの演出が観客にどう評価されるか見ものだ。


他、洞窟に潜み罠にかかったドライバーたちを襲う吸血クリーチャーの恐怖を描いた「The Cave」も公開予定。こちらは無名俳優たちによるキャスティングでどこまで上位に食い込めるか注目だ。


8/12 - 8/14 全米BoxOfficeリポート

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◇ 「8/12 - 8/14 全米BoxOfficeリポート」
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◆◆◆ チャート・アクション


1. Four Brothers
2. The Skeleton Key
3. The Dukes of Hazzard
4. Wedding Crashers
5. Deuce Bigalow: European Gigolo
6. チャーリーとチョコレート工場
7. 皇帝ペンギン
8. Sky High
9. 理想の恋人.com
10. The Great Raid



●J・シングルトン監督の新作が首位デビュー!
血のつながりを持たない4人の兄弟が殺された養母の復讐に立ち上がるというクライム・サスペンス「Four Brothers」が、2533館という控え目な規模での公開ながらハイアベレージでTop1デビューを果たした。オープニング3日間で稼ぎ出した数字は2000万ドルを超えており、周囲の期待を上回る高稼働ぶりを見せている。
監督は「ボーイズ・ン・ザ・フッド」で衝撃的なデビューを果たした黒人監督のジョン・シングルトン。当時はポスト・スパイク・リー的な存在として将来を期待されたが、その後は活躍の場を娯楽方面にシフト。前作「ワイルド・スピード×2」で興行的にも成功している。プロデュース業でもテレンス・ハワードの好演が話題の「Hustle & Flow」を送り出すなど、今ノリにノッている監督の一人だ。


Four Brothers

●ブラック・ムービーの確かな興行力
主人公となる4人の兄弟を演じるのは、マーク・ウォルバーグの他に、タイリース、アンドレ・ベンジャミン、ギャレット・ヘドランドというフレッシュな顔ぶれ。個々に特別な集客力は見られないものの、タイリース以下のキャストは黒人層にアピールするだけの興行価値はある。ウォルバーグ主演とはいえ、黒人のシングルトンが監督し、汚い言葉と暴力描写がふんだんに盛り込まれた内容だけに、作品はブラック・ムービーとジャンル分けされる。このジャンルは一定の層から強力な支持を集めやすく、今回のヒットは決して予想の難しいことではなかったと言えそうだ。
ただ一方で、寿命が短いのもブラック・ムービーの特徴で、本作もその例に洩れず早めのご退場を余儀なくされることが予想される。批評家からの反応もそれほど良くはなく、多少否定的な見解が優勢を占めるといった状況。息の長いヒットは望めそうもなく、最終的には6~7000万ドル付近に落ち着きそうだ。


●K・ハドソンのスリラーが大健闘の2位
2位に登場はケイト・ハドソン主演のスリラー「The Skelton Key」。コメディでは一定の興行力を誇るハドソンとはいえ、ジャンルが変ればタダの人。監督も興行的な実績のないイアン・ソフトリーということでヒットは難しいだろうと予想されていた。
3日間興収の1500万ドルはその予想を上回るもので、アベレージもなかなか優秀。サマーシーズンが終わり強力なライバルが姿を消したところでうまいこと映画ファンのハートを掴むことに成功したようだ。ただし、批評家からはそれほど芳しい評価を得られておらず、次週以降は厳しい興行を強いられることになるだろう。

The Skelton Key


●「Wedding~」と「チャーリー~」が2億ドル突破目前!
先週Topの「The Dukes of Hazzard」は予想通り大きな落ち込みを見せて3位に後退。前週比57%ダウンでかなりの痛手を被っている。Totalでは5700万ドルを超えているものの、今後も落ち込みのペースを落とすことは難しく、1億ドルの大台突破は夢と消えそうな情勢だ。
一方、「Wedding Crashers」は相変わらず好調でTotalも1億6400万ドルを突破。この分なら2億ドルの大台に手が届きそうだ。さらに、今週6位にダウンながら「チャーリーとチョコレート工場」もなかなかしぶとい興行を展開しており、こちらも2億ドル突破がほぼ確実な情勢。サマーシーズン終盤でのこのサプライズヒット連発を予想できたアナリストはほとんどいなかったのでは?


●ソニー作品がまたしても不発
今週封切作品の中では唯一3000館を越える大規模公開となった「Deuce Bigalow: European Gigolo」は、配給ソニーの期待に応えることが出来ず冴えない5位デビュー。ソニーはこの夏「XXX(トリプル・エックス)」続編の大コケに始まって「ステルス」の不発、そして今週と散々な夏となってしまった。
前作「デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?」が6500万ドルを超えるスマッシュヒットを記録したとはいえ、あれからキャリアに進展のないロブ・シュナイダー主演作品にこれだけ大きな期待をかけること自体、戦略的に何かちぐはぐなものを感じずにはいられない。ヒット作が欲しい焦りはわかるが、いささか無謀な賭けだったようだ。

Deuce Bigalow


●H・ワインスタイン製作の戦争ドラマが10位
製作にハーヴェイ・ワインスタインが名を連ねていることからオスカー戦線でも前評判の高かった戦争ドラマ「The Great Raid」が10位にランクイン。819館という中規模公開で330万ドルという数字なら御の字とすべきところだろうが、肝心の批評家からの反応が冷たい。可もなく不可もなくといった評が目立つ中、脚本の弱さを致命的とする声も少なくなく、迫力ある戦闘シーンの盛り上がりを無駄にしているとのこと。
ディズニーとの契約切れでミラマックスを去るワインスタインが手がけた数少ない1本だったが、彼の執念が実ることはなさそうだ。オスカー戦線からは残念ながら完全撤退の模様


The Great Raid



◆◆◆ ニュー・リリース


Four Brothers
オスカー期待値:
J・シングルトンはすでに娯楽派として認知されており、アカデミー会員たちも本作をそういう路線のものとして認識するだろう。もっとも、評価も伸びない現状では誰の目にも止まらないというのが本当のところか。


The Skelton Key
オスカー期待値:
監督のイアン・ソフトリーは手堅い演出で評価を高めてきた人で、スリラー初挑戦となる本作は決して本業ではない。評価がイマイチなのもやむなし?


Deuce Bigalow: European Gigolo
オスカー期待値:
何から何までノーチャンス。ラジー賞の有力候補に躍り出たのは間違いない。


The Great Raid
オスカー期待値:
ワインスタイン渾身の一作も不発。戦闘シーンの迫力は認められてはいるものの、技術賞での活躍が期待できるほど作品の評価は高くない。


Grizzly Man
オスカー期待値:★★★★★★★
野生の熊と生活をともにする作家の生涯を追ったドキュメンタリー。とにかく批評家からの歓迎ぶりはすさまじく、ここへ来てドキュメンタリー賞本命登場といった情勢だ。


注) オスカー期待値は★10個での評価となります。


◆◆◆ 次週リリース


さて次週の目玉はディズニーが送るCGアニメ「Valiant」
ユアン・マクレガー、ティム・カリー、ジム・ブロードベントなど声優陣に実力派を配した入魂の一作だが、サマーシーズンの公開を避け、さらに3000館未満の規模での公開予定という消極姿勢が気になる。ディズニーの本命は11月の「チキン・リトル」なのだろうが、隆盛を誇るCGアニメ・ブーム真っ只中で1億ドルに満たない興行で終えることは許されない。オープニングでどんな数字が出るか要注目だ。


個人的に期待したいのがユニバーサルの「40 Years Old Virgin」。タイトルそのままに40歳でバージンの主人公が繰り広げるドタバタ・コメディで、注目は主人公を演じるスティーブ・キャレル。「ブルース・オールマイティ」での爆笑演技は記憶に新しく、遅れてきたスター誕生をも予感させる逸材だ。彼が主演デビュー作でどんな集客力を見せるのか楽しみに見守りたい。


ウェス・クレイヴン監督の新作スリラー「Red-Eye」もスタンバイ。春に公開された「Cursed」が不評だったクレイヴン監督だけに、本作で何とか巻き返したいところ。主演は今もっとも旬の女優であるレイチェル・マクアダムス。この作品をヒットに導くことが出来るようなら、彼女自身の興行価値が絶大であることを証明できるだろう。


「ターネーション」 ★★★★

ターネーション

常にカメラを意識しながら生活するというのはどんな気持ちがするものだろう?
本作「ターネーション」を製作した弱冠31歳のジョナサン・カウエットは、11歳の頃からカメラを回し、自分と周囲の人間の生活を撮り続けてきた。20年間もの長きに渡って自分を被写体とすることで、彼はいったい何を表現したかったのか。あるいは、被写体となることにどんな意味があったのか。

この作品を誉めそやすのは簡単だ。カウエットが綴る家族史を素直に受け入れれば、フィクションでは表現し得ないリアリティに圧倒され、波乱万丈のドラマに胸を打たれること請け合いだ。ただ本作はカウエットが自身を被写体に主として一人称で物語を語るため、事実を客観的に捉える他者との間にはどうしても隙間が生じる。この場合、温度差と言ったほうが的確だろうか。


映画が始まると、カメラはとあるアパートのドアを開けて部屋に入ってくる一人の男を捉える。そして次の瞬間、カメラはソファにうつ伏せに横たわるカウエットにパンする。最初にカメラが捉えた男はカウエットの隣にいるので、一体彼らの姿を誰がカメラにおさめているのかと戸惑ってしまう。
やがて映画は「リチウム過剰摂取」についてネット検索するショットを挿入すると、おもむろに電話口で入院中の母を涙ながらに心配するカウエットを映し出す。この一連のシークエンスに作為を感じないでいられるとすれば、あなたは相当ピュアなハートの持ち主だろう。


のっけから疑心暗鬼に陥る自分に不安を覚えるが、映画がカメラの前で演技する11歳のカウエットを映し出したとき、この映画が宣伝されているような「母へのラブレター」的な美談ではないのだと気付く。この11歳の少年、涙ながらに夫の暴力を訴える女性を演じている。映画の構成としては、性的倒錯および現実逃避による変身願望にとり憑かれたあわれな少年期の証拠VTRという位置付けなのだろうが、その演技があまりに達者で、しかも一切の編集を加えず延々と流すので、実はカウエットが自分の才能をアピールしたいがためのカットじゃないかと思えてくる。


その後映画は主に母レニーの精神病の原因を探ることを目的に動き出すが、それも劇中カウエット自身が話すように、要するに自分のルーツをスクリーンの前で明らかにしようとする行為だ。自分のための行動であって、決して母のためではない。また、両親に虐待を受けたと打ち明ける母の様子を映し出すのも、虐待の事実を祖父に問いただす様子を捉えるのも、少々芝居じみている。


そして何より、恋人と気ままなNY生活を送っていたカウエットが突如母との同居を決意するあたりが出来すぎている。カウエットが母との同居を決意するきっかけは、母のリチウム過剰摂取ということになっているが、同時にジョン・キャメロン・ミッチェルがフィルムの存在を認知した時期とも一致する。下衆の勘ぐりと非難されればそれまでだが、映画の筋書きの一部として母との同居を決意したと感じられなくもない。


コンプレックスさえ武器に自らを被写体とするナルシシズム、カメラの前で演じることを日常としてきたライフスタイル、そして卓抜な演技力。そのどれもが、カウエットが自ら描くようなピュアな愛に生きる男ではないことを告げている。映画は必ずしも真実を語ってはいない。だが一方で、ジョナサン・カウエットというしたたかな男の真実を物語っている
真実も虚構も入り混じった灰色の世界、そういう場所に人間は住んでいる。フィクションでは語れない世界がそこには確かにある。

8/5 - 8/7 全米BoxOfficeリポート

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◇ 「8/5 - 8/7 全米BoxOfficeリポート」
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◆◆◆ チャート・アクション


1. The Dukes of Hazzard
2. Wedding Crashers
3. チャーリーとチョコレート工場
4. Sky High
5. Must Love Dogs
6. 皇帝ペンギン
7. ステルス
8. ファンタスティック・フォー/超能力ユニット
9. 宇宙戦争
10. アイランド



●往年の人気TVシリーズ・リメイク作が大ヒット!
大味なアクション大作が観客にそっぽを向かれる中、今週初登場のコメディ「The Dukes of Hazzard」が期待を上回る好発進を見せた。「アメリカン・パイ」シリーズで人気爆発のショーン・ウィリアム・スコットと、映画にもなった人気バラエティ「ジャッカス」のジョニー・ノックスヴィルがコンビを組んだ本作は、往年の人気TVシリーズ「爆発!デューク」のリメイク。79年から85年にかけて全145話が製作される長寿番組となったTVシリーズの人気は健在だったようで、映画版もオープニング3日間で3000万ドルを超える大ヒットを記録している。
ただし、このオープニングのヒットに最も貢献したのはスコット&ノックスヴィルの集客力ということになるかもしれない。アブない魅力でティーンからの圧倒的な支持を誇る2人だけに、ハジけた笑いを期待する若者たちが数多く劇場に押し寄せたと推測される。


好スタートを切った「The Dukes~」だが、その勢いを持続させるのは難しそうだ。幅広い活躍を見せるスコットはともかく、俳優として認知されていないノックスヴィルやジェシカ・シンプソンのような輩が主演する本作に批評家がいい顔をするはずもなく、評価は散々なものとなっている。さらに、映画ファンからの反応もほぼ同じのようで、オープニングこそお祭り騒ぎを求めて若者が押し寄せたものの、次週以降は潮が引くように数字を落とすのではないか


The Dukes of Hazzard

●依然好調「Wedding Crashers」
「Wedding Crashers」は2位にランクダウンしたものの依然好調。着実に上映館を増やし、アベレージの衰えも見られない。トータルもすでに1億4400万ドルに達しており、2億ドルの大台も夢ではなくなってきた。3位に後退の「チャーリーとチョコレート工場」の倍のアベレージを記録している現状からして、「チャーリー~」超えはほぼ確実、さらに「宇宙戦争」の数字にどこまで迫れるかが焦点となりそうだ。

先週3位の「Sky High」は38%のダウンに留めて4位に踏ん張り、同じく5位の「Must Love Dogs」も42%のダウンながら5位に留まった。先週は後者がアベレージで勝ったが、今週は前者に軍配が上がっており、今後も持続力で上を行きそうな気配だ。

一方、先週4位と振るわなかった「ステルス」は予想通り大きく数字を落として7位にランクダウン。数字とランクの以降が1週早い公開の「アイランド」とほとんど同じという有様で、両作品とも5000万ドルに満たない興収で興行を終えることになりそうだ。

他、6位には「皇帝ペンギン」がジャンプアップ。すでにドキュメンタリー作品としては記録的なヒットとなっているが、今週に入って上映館を1000館増やすイケイケ体勢で更なる上積みを狙う。1800余館の上映となってさすがにアベレージに翳りは見られるものの、人気ぶりは相変わらずのようで、次週以降も検討が期待されている。


●カンヌを沸かせたジャームッシュ作品に批評家絶賛
Top10ランク外ではジム・ジャームッシュ監督の「Broken Flowers」がわずか27館の上映ながら16位にランクインする好ダッシュを見せた。本作は今年のカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞してカンヌにジャームッシュありを印象付けていたものの、欧州でより人気の高いジャームッシュ作品が全米で同じように評価されるかどうかは意見が分かれていた。
とりあえずBoxOfficeでは予想以上の歓迎ぶりを受けたが、批評家からも総じて暖かく迎えられているようだ。特にビル・マーレイの演技には賛辞が集中しており、早くも一昨年果たせなかったオスカー受賞の実現に言及するメディアもある。
ただし、公開時期のハンデやジャームッシュとオスカーの相性から考えると、現時点での優位を最後まで保つのは決して簡単ではないと言えそうだ。


Broken Flowers

●カーウァイ新作も好評
他、ウォン・カーウァイ監督が自身の作品「花様年華」の後日談として描いたドラマ「2046」も全米公開。昨年のカンヌお目見えから約1年遅れでの公開となったが、封切を待ちかねていたファンも多かったようで、4館限定ながらなかなかのアベレージを記録して好発進となった。
批評家からの反応も上々で、ムーディで色鮮やかなカーウァイの世界は相変わらず評判が良いようだ。日本のファンには残念ながら、木村拓哉の演技について言及するメディアはなく、大半はカーウァイの作り出す世界観を称える結果となっている。オスカーの可能性は皆無とは言わないもののそれほど高くなく、かろうじて撮影、衣装、美術あたりで目があるかと言ったところか。


2046


◆◆◆ ニュー・リリース


The Dukes of Hazzard
オスカー期待値:
批評家から総スカンを食う惨敗ぶりで一躍ラジー賞有力候補に。とくにノックスヴィル、シンプソンは格好の餌食となりそうな気配。


Broken Flowers
オスカー期待値:★★★★★
批評家絶賛もジャームッシュはオスカーに縁がない。ビル・マーレイの主演男優賞が最も有力で、それに次ぐのがジャームッシュによる脚本賞か。


2046
オスカー期待値:★★★
カーウァイ作品は全米でも人気だが、外国語映画部門以外での活躍は厳しい。かろうじて撮影、衣装、美術のどれかでチャンスありか。


注) オスカー期待値は★10個での評価となります。



◆◆◆ 次週リリース


さて次週。
最も大きな規模での封切が予定されているのは、ロブ・シュナイダー主演のコメディ「Deuce Bigalow: European Gigolo」。99年に公開された「デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?」の続編となる。前作は日本未公開ながら楽しめる一本と評判で、全米では6500万ドルを売り上げるスマッシュヒットとなっている。大きな成功を望むのはツライが、ライバルも見当たらずTop1デビューも夢ではない?


これに次ぐ規模で封切られるのがケイト・ハドソン主演のホラー「The Skelton Key」。「鳩の翼」のイアン・ソフトリーがメガホンをとり、ピーター・サースガードが脇を固める渋い作品だけにBoxOfficeでのブレイクは予想しづらい。1000万ドルを超えるスタートを切れれば大成功か。


上映館数は少ないものの、興行的な魅力があるのは「Four Brothers」のほうか。「ワイルド・スピード×2」で手堅い演出を見せたジョン・シングルトンが放つクライムドラマで、主演はマーク・ウォルバーグ、タイリース他。黒人層の支持を得られそうな作品だけに高アベレージで上位ランクインも十分にありそうだ。


「亡国のイージス」 ★★

亡国のイージス

「ローレライ」に続く福井晴敏原作の映画化第二弾。福井は他にも「戦国自衛隊1549」の原案を担当するなど映画づいているが、報道の規模などから推測するに、本作「亡国のイージス」こそ本当の勝負作ということのようだ。本作はカンヌ映画祭でも世界中のバイヤーたちが殺到し大層な人気を博したらしいが、そうした前評判を受けて鑑賞すると、やや失望の色を隠せない。

物語は大きく3つの闘いを基盤として進んでいく。真田広之扮する先任伍長と工作員・如月のそれぞれの正義をかけた闘い、韓国人武闘派ホ・ヨンファとイージス艦副艦長宮津の信念をかけた闘い、そして特殊部隊DAISを率いる渥美が国家首脳陣に対して仕掛ける職務への誇りをかけた闘いだ。

主軸となるのは当然主人公となる先任伍長の活躍ぶりだが、イージス艦を守るという単純な使命感に燃える彼の行動は、複雑なドラマ足りうる構成の中で実は一番面白みに欠けるパートだ。ブルース・ウィリスのユーモアもなく、スティーブン・セガールの圧倒的な腕っぷしも持たない彼が物語を引っ張るのは少々ツライ。察するに、原作ではもう少し枯れたおじさんの設定で、中年危機に陥った主人公の再生のドラマがカタルシスを呼ぶ狙いなのだろうが、真田広之がキャスティングされたことでその狙いは半分効力をなくしている。こうなるともう、真田広之も老けたなぁ・・という中途半端な感想しか生まれず、なぜ彼がこの壮大な攻防の主役なのかと疑問すら沸いてくる。

イージス艦の副艦長、宮津の闘いもまた説得力が薄い。最愛の息子の死はこれほどの暴挙を決意する理由として十分だが、逆に彼の中で闘いが終わり、正気に戻るプロセスには失笑してしまう。そんなに簡単に信念が揺らぐ人間があんな暴挙に出るとは信じがたい。加えて、ヨンファに対して疑念を持つのが遅すぎる。息子を失ったことによる一時的な乱心と説明すれば事は簡単だが、キーパーソンの心理描写をそんな乱暴にやっつけてはいけない。物語全体のリアリティを奪うことになりかねない。

DAISの指揮官である渥美の闘いは、実は映画をもっと面白くすることが出来たはずの重要なパートだ。見せ場を大がかりなアクションに求めない本作の理念からして、ヨンファとの交渉を総括しうる立場にある彼の活躍は、最大の見せ場であると言ってもいい。だが残念なことに、彼は物語中盤で早くも挫折を味わい、国家に対する苦言を並べ立てる安い役回りを演じさせられることになる。彼が裏方としてヨンファとの情報戦に勝利し、先任伍長とのコラボレーションが実現していれば、物語はもっと大きな広がりを見せただろう。彼の闘いに早々に終止符を打ってしまった脚本には大いに不満が残る

というわけで、三者三様、闘いの描き方が適切とは言えず、最後までドラマは盛り上がらない。新しい日本映画の波を作るという意気込みは結構だが、本作にこれまでの日本映画にない突出した部分があったとすれば巨大イージス艦のセットくらいのものだ。福井原作をスケール感豊かに再現しようと試みた熱意は買うが、残念ながら今回の熱意は空回に終わったとジャッジせざるを得ない。とはいえ、この映画が興行的な成功を収めれば、日本映画の新しい出発のきっかけを作ることは出来る。満員の劇場を後にしてその期待感が残ったのはせめてもの救いだったか。

「アイランド」 ★☆

アイランド

あのヤンチャ坊主マイケル・ベイがようやく独り立ちした記念すべき作品となるはずだった本作。恩師ブラッカイマーの元を巣立ち、これから本格的に金儲けの道に突き進もうとする野心のこもった作品だけに、全米での興行的不振はベイの高い鼻をポッキリと折るのに十分な衝撃だったろう。

正直なところ、この映画が全米でこれほど受け入れられなかった理由がよくわからない。良くも悪くも(まあ悪くも、だが)、この「アイランド」はマイケル・ベイらしい作品に仕上がっており、これまでの興行的成功を考えればヒットして当然のように見える。

クローンという倫理的に少々難しいところのある題材を選びながら、モラルに何ら配慮することのないベイの稚拙な語り口は以前にも増して快調。おそらく脚本段階ではもう少しマシな物語だったはずだが、ベイの参加で大味なバカ・アクションに塗り替えられてしまったのはミエミエだ。

出だしはよかった。もしかしたらベイは生まれ変わったんじゃないかと期待させるほどだ。主人公が悪夢から目覚めるあたりのトリッキーな編集は工夫の跡をうかがわせ、らしくない演出に思わず「おっ」と唸る。施設内のプロダクション・デザインは秀逸で魅力的な近未来を構築しており、狭い空間の中でも退屈せず物語は進行していく。

ところが主人公たちが真相を探り当て、施設の外に飛び出すあたりから物語のトーンは一変する。ここからが本領発揮とばかりにベイお得意のド派手アクションが次々と炸裂するのだ。何のことはない。出だしが良く見えたのは、単にベイが爆発をこらえていただけのことだった。

CG効果満載のこれらのアクションは単体では見どころたっぷりで楽しめるが、何の脈絡も説得力もないこれらの騒動が続けば続くほど、観客は物語への興味を失ってしまう。「人は生きるためなら何だってやる」という劇中の戯言はたぶんベイの座右の銘なのだろうが、そんな理不尽な論理を振りかざして主人公たちが追っ手をバタバタと殺していく様子を活写したところで何のカタルシスも生まれようがない。クローンの命を尊重するような素振りを見せながら、人間が死ぬことには一向にお構いなし。実にベイらしいわかりやすさだ。

作品がコケた本当の理由はわからないが、ともかく全米がベイのヤンチャにNOをたたきつけたことに拍手を送りたい。これで少しは自省してマシな映画を撮ろうという気になるだろうか?矛盾するようだが、これでベイが大人しくなってしまうのも少し悲しい。派手さだけが売り物の安いアクション活劇とわかっていてもついつい見に行ってしまう。ベイの映画に吸引力があることは否定しない。どうせバカなら貫き通して欲しいという気持ちがあるのもまた事実なのだ。

7/29 - 7/31 全米BoxOfficeリポート

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◇ 「7/29 - 7/31 全米BoxOfficeリポート」
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◆◆◆ チャート・アクション


1. Wedding Crashers
2. チャーリーとチョコレート工場
3. Sky High
4. ステルス
5. Must Love Dogs
6. ファンタスティック・フォー/超能力ユニット
7. アイランド
8. Bad News Bears
9. 宇宙戦争
10. 皇帝ペンギン



●ついにWedding Crashersが天下獲り!
T・バートン製ビッグバジェット・ファンタジーの前に2週連続で2位の座に甘んじていたものの、批評家・ファン双方から熱い支持を受けて高稼働を続けていた「Wedding Crashers」が3週目にしてついにTopに躍り出た。
今週末封切のライバルがそろって今ひとつの成績に終わったことに助けられたというよりは、この抱腹絶倒コメディの勢いがライバルたちの出鼻をくじいたとする見方が妥当だろう。実際、好評を受けて「Wedding~」は100館規模で上映館を増やしており、ニューリリース作品に大きな痛手を与えている。それでもようやく3000館をわずかに超えた程度なのだが、クチコミでにわかに広がりつつあるこの良質コメディの存在が市場の話題を独占していることは間違いなさそうだ。
今週末の興収は前週比わずか20%減で2000万ドルを超える相変わらずの絶好調ぶり。軽々と1億ドルを突破し、勢いはまだまだ衰える気配はない。


●初登場組の争いは「Sky High」に軍配
ニューリリース3作による熾烈な争いに競り勝ったのは、3位に初登場の「Sky High」。3000館に満たない規模ながら、本命「ステルス」を堂々とうっちゃって見せた。アベレージもそこそこ優秀で、批評家からの反応も悪くない。今後の躍進にも期待が持てそうだ。
ヒーローである両親のもとに生まれてしまった若者がアイデンティティに悩む様をコメディタッチで描いた本作は、もともとはTVシリーズとして発案されたもののようで、作品がこのままヒットを続けるようなら続編またはTVシリーズ化という選択肢も用意されるかもしれない。


sky high

●無敵ステルス機は無残にも撃沈!
今週の目玉とされていたソニー・ピクチャーズの「ステルス」が思わぬ地上砲火を受けて撃墜された。つい先日、軍用機まで登場するド派手なプレミアを行って必勝を期したばかりの「ステルス」だったが、ファンの興味を惹くことは出来なかったようだ。3400館を超える公開規模で1400万ドル弱という数字は、先週の「アイランド」に続く大惨敗。この異常事態にハリウッドが激震しているのは間違いない。
昨年に比べ沈静化している2005年の市場において、「アイランド」と「ステルス」の2本は、市場の停滞を象徴する作品と言える。この2本のアクション巨編にファンがNOを突きつけた事実を、ハリウッドは深刻に受け止めなければならないだろう。
危惧されるのはこの2本がともに興行実績のあるスターを欠いた作品であることで、ハリウッドが失敗の原因をそこに求めた場合、これまで以上にスターの存在感が表に出た似たり寄ったりの作品が市場にあふれる可能性がある。

ステルス


●D・レイン×J・キューザックのロマコメが5位
Top10にランクインした3作のニューリリース中、もっとも優秀なアベレージをたたき出したのが5位にランクインの「Must Love Dogs」だ。主演のダイアン・レインは前作「トスカーナの休日」でも興行的に健闘しており、なかなか集客力のあるところを見せている。子役時代から活躍を続ける彼女だが、実は隠れたスターという見方が出来るかもしれない。
今回の主演作では同様に堅実なヒットを飛ばすジョン・キューザックとのコンビで、2人の地味ながら確実な集客力が確かな効果を生んだようだ。批評家からの評価は賛否半々だが、主演2人の手堅いパフォーマンスについては賛辞を寄せる媒体が多く、興行的にも息の長いところを見せる可能性もある。


Must Love Dogs

●注目のドキュメンタリー2本
先週、上映館数を増やして10位にランクインしていた「皇帝ペンギン」が今週も高稼働を続け、Top10内を死守した。今週はさらに上映館数を増やして興収の上積みに成功しており、ドキュメンタリーとしては異例のヒットということになりそうだ。
他注目は、21位にランクインの「The Aristocrats」。100人のコメディアンが卑猥なジョークを繰り返すこのドキュメンタリーは、米大手映画館チェーンのAMC Theatresから上映差し止めの決定を下すなど問題作として話題を呼んでいた。どうにか全米公開にこぎつけ、ふたを開けてみれば予想通りの大ヒット。関係者は笑いが止まらないだろう。アベレージは驚きの1館あたり6万ドル。この数字は今週トップの「Wedding Crashers」の約10倍に当たる。当然、NC-17指定のこの作品が拡大公開されても同様のアベレージを記録することは難しく、限定公開で話題を独占し、DVDで儲けるという方法が最も確実かと思われる。



◆◆◆ ニュー・リリース


Sky High
オスカー期待値:
批評家の反応は上々も軽いタッチのコメディ。ジャンル的にオスカーでの出番はなし。


ステルス
オスカー期待値:
これだけ評判がよろしくないと、唯一評価されている視覚効果の分野でもお呼びの声はかかりそうもない。ジェイミー・フォックスはラジー賞有力候補?


Must Love Dogs
オスカー期待値:
前評判ほど評価されず。もともとジャンル的な不利もあり、そこそこの批評にそこそこの興行ではアピールポイントもなく厳しい。


The Aristocrats
オスカー期待値:★★★
あまりにキワどい内容と噂されるだけにアカデミー会員がこぞってこれを取り上げるかは疑問。話題性は豊富なので可能性はあるが、アンチ派も少なくなさそうだ。


注) オスカー期待値は10個での評価となります。



◆◆◆ 次週リリース


大作の公開ラッシュが終り、サマーシーズンもこれにて幕。
しばらくはローバジェットの小品にもBoxOfficeでの活躍の場が増えそうだ。


次週No.1デビューを目指し大規模公開されるのが「The Dukes of Hazzard」
「アメリカン・パイ」シリーズのスティフラー役でおなじみのショーン・ウィリアム・スコットと「ジャッカス」のジョニー・ノックスヴィルのコンビが田舎町で繰り広げる大騒動を描いたコメディだ。MTVアワード授賞式でも揃って登場し、宣伝に勤しんでいただけに若年層へのアピールは問題なさそう。


昨年のカンヌ映画祭に出品され話題を呼んだ「2046」も公開予定。カンヌでは無冠に終わったが、タランティーノなどファンの多いカーウァイ作品だけに批評家からの支持が厚ければオスカー戦線に名乗りをあげることも可能。


また、今年のカンヌで高評価を得た「Broken Flowers」も公開。インディペンデンス色の強いジャームッシュがついにアカデミーに受け入れられるときがくるのか、まずは批評家の反応に注目したい。

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