「亡国のイージス」 ★★ | オスカーノユクエ 映画情報

「亡国のイージス」 ★★

亡国のイージス

「ローレライ」に続く福井晴敏原作の映画化第二弾。福井は他にも「戦国自衛隊1549」の原案を担当するなど映画づいているが、報道の規模などから推測するに、本作「亡国のイージス」こそ本当の勝負作ということのようだ。本作はカンヌ映画祭でも世界中のバイヤーたちが殺到し大層な人気を博したらしいが、そうした前評判を受けて鑑賞すると、やや失望の色を隠せない。

物語は大きく3つの闘いを基盤として進んでいく。真田広之扮する先任伍長と工作員・如月のそれぞれの正義をかけた闘い、韓国人武闘派ホ・ヨンファとイージス艦副艦長宮津の信念をかけた闘い、そして特殊部隊DAISを率いる渥美が国家首脳陣に対して仕掛ける職務への誇りをかけた闘いだ。

主軸となるのは当然主人公となる先任伍長の活躍ぶりだが、イージス艦を守るという単純な使命感に燃える彼の行動は、複雑なドラマ足りうる構成の中で実は一番面白みに欠けるパートだ。ブルース・ウィリスのユーモアもなく、スティーブン・セガールの圧倒的な腕っぷしも持たない彼が物語を引っ張るのは少々ツライ。察するに、原作ではもう少し枯れたおじさんの設定で、中年危機に陥った主人公の再生のドラマがカタルシスを呼ぶ狙いなのだろうが、真田広之がキャスティングされたことでその狙いは半分効力をなくしている。こうなるともう、真田広之も老けたなぁ・・という中途半端な感想しか生まれず、なぜ彼がこの壮大な攻防の主役なのかと疑問すら沸いてくる。

イージス艦の副艦長、宮津の闘いもまた説得力が薄い。最愛の息子の死はこれほどの暴挙を決意する理由として十分だが、逆に彼の中で闘いが終わり、正気に戻るプロセスには失笑してしまう。そんなに簡単に信念が揺らぐ人間があんな暴挙に出るとは信じがたい。加えて、ヨンファに対して疑念を持つのが遅すぎる。息子を失ったことによる一時的な乱心と説明すれば事は簡単だが、キーパーソンの心理描写をそんな乱暴にやっつけてはいけない。物語全体のリアリティを奪うことになりかねない。

DAISの指揮官である渥美の闘いは、実は映画をもっと面白くすることが出来たはずの重要なパートだ。見せ場を大がかりなアクションに求めない本作の理念からして、ヨンファとの交渉を総括しうる立場にある彼の活躍は、最大の見せ場であると言ってもいい。だが残念なことに、彼は物語中盤で早くも挫折を味わい、国家に対する苦言を並べ立てる安い役回りを演じさせられることになる。彼が裏方としてヨンファとの情報戦に勝利し、先任伍長とのコラボレーションが実現していれば、物語はもっと大きな広がりを見せただろう。彼の闘いに早々に終止符を打ってしまった脚本には大いに不満が残る

というわけで、三者三様、闘いの描き方が適切とは言えず、最後までドラマは盛り上がらない。新しい日本映画の波を作るという意気込みは結構だが、本作にこれまでの日本映画にない突出した部分があったとすれば巨大イージス艦のセットくらいのものだ。福井原作をスケール感豊かに再現しようと試みた熱意は買うが、残念ながら今回の熱意は空回に終わったとジャッジせざるを得ない。とはいえ、この映画が興行的な成功を収めれば、日本映画の新しい出発のきっかけを作ることは出来る。満員の劇場を後にしてその期待感が残ったのはせめてもの救いだったか。