国道改良のスピードは、新幹線並みに進んでいる。

地域高規格道路や自動車専用道路、更には新直轄方式の無料高速と道路の高規格化によって安全性は格段に上がっている。


最近では新潟県と静岡県が高速道路でつながるビッグプロジェクト、中部横断自動車道の南部・下部温泉早川間が開通したことで残すところあと34kmとなった。

生活道路を通過する国道141号や国道52号を避けることによって、安全性向上や所要時間短縮が図られることとなる。


横断道があれば、縦貫道も存在する。

今回注目していくのはまさにソレ。

長野県松本市を起点に、岐阜県高山市を経由して福井県福井市に至る約160kmの自動車専用道路。

現在、

1:中ノ湯IC・平湯IC(5.6km)

2:油坂峠道路油坂仮出入口・白鳥IC(東海北陸道に接続、11.4km)

3:永平寺大野道路大野IC・福井北IC(26.4km)

4:高山清見道路高山IC・飛騨清見IC(15.2km)

が開通済み。

160kmのうち僅か58.6kmのみだが着実に工事が進められている。

その計画を構成する道路の中で、中部縦貫道の関連事業として建設が進められているバイパスがある。

奈川渡改良

「ながわわたり」ではなく、「ながわど」改良と読む。


長野県資料(こちら)より
長野・岐阜県境の国道158号安房峠を一本のトンネルで貫く、安房峠道路の中ノ湯ICから建設中の松本波田道路の波田ICの間が基本計画区間となっている。
その間に建設中の道路が奈川渡改良(2.2km)。
ダム沿いの険しい地形に道路があり、幅員も狭く半径の小さいカーブが連続する上、トンネル内は大型車離合困難という難所を迂回するバイパス計画であり、現在建設中である。

その「難所」がどんなものなのか、実際に足を運んで見てみる企画。今回はトンネル内分岐のある入山トンネルと奈川渡ダム上を通る区間を調査した。


建設が進む奈川渡改良を見ながら、険しい現道を登っていくことになる。

遂に姿を表した。
Panasonicの前身である松下電器のヒット商品である、「二股ソケット」を連想させる青看板。
トンネル内分岐
トンネルの中で道路が分岐する体験をしたのは、実はここが初めて。

坑口はこんな感じ。
幅員が急に狭くなるので、事故の危険がある。
ホイールベースの長い大型車がハンドルを切る際には、内輪差を考慮して膨らまなければならない。すると生じる問題は、トンネルから出てきた車両との衝突事故、そして進入の際に対向車の通過待ちをしなければならないこと。

「いりやま」ではなく、「にゅうやま」。
国道18号碓氷バイパスが通る「入山峠」と同じ字を書くが、読み方は異なる。

木祖とは木祖村を指す。
白看板が示すように、長野県道26号をずっと走っていけば国道19号に出る。通称「野麦街道」と言い、途中で境峠を越えて木祖村に出る。

国道158号はトンネルを出て直進。

ダムの上を走る国道。
3枚ある国道おにぎりの中で1枚だけ旧verがあったので、ソレを強調する意味も込めて使用してみた。

ダム脇にある眺めのよい駐車場に車を停めて、入山トンネルとダム上の国道の徒歩潜入を決行することに。

トンネルの難所感を象徴する場面に遭遇した。
バイパス工事の大型ダンプが入っていくが、それで断面面積の半分以上を使っている。言い換えれば、大型車同士の離合は困難であると言うこと。

国道17号三国トンネルと幅員が僅かしか変わらない(道路幅5.8m)にも拘わらず、非常に狭く感じる。
何よりここは大型バスの通行が多く、関越道のような並行する高速道路がないので「狭いから迂回」というわけにもいかない。

ここが分岐点。

奈川渡改良についての長野県の資料によると、木祖・奈川方面(県道26号)が入山トンネル、国道158号の高山・上高地方面が新入山トンネルとなっている。
でも建設年を見てみると、こうなる。
入山トンネル=1968年
新入山トンネル=1965年
新ということは後にできている筈だが、逆転している。因みに見間違えではなく、真実である。
何処かに資料があればいいのだが…

元々ラバーポールが立っていた形跡があり、離合の際に折れて無くなってしまったのだろう。


電光掲示板で方向を教えてくれる。

トンネルが連続する区間のためか、非常通報の際にトンネル名を知らせることになっている。
徒歩潜入の際の大事な鍵を握るのが、こういったトンネル内設備の記載である。

トンネルの潜入を終え、次はダムの上を歩く。
センターラインはしっかりと引かれ、歩道にはガードレール代わりのチェーンが張ってある。
ダムを見に来る人、上高地や高山への観光客、工事車両と多種多様な交通が合わさるこの道路。

松本市奈川渡
修正された痕跡があるが、2005年3月まで南安曇郡奈川村と言う地名だった。
おにぎりを眺めるこのポイントは、この道の険しさを物語る場面である。

足が鋤くんだ。
険しい山に張り巡らされた鎖場のような光景、ここを降りていく勇気はない。
でも、景色はタダ。この道を利用して北陸へ挑む者への、ちょっとしたサプライズとも言えるか。
ここから県境までも険しい道のりがつづくから、スポーツドリンクより美味しいエネルギー(気持ちの抱擁)となる。

建設の進む奈川渡改良。
三才山トンネルが無料になったことで、東信地方から最短経路で高山方面へ行ける国道158号に懸かる期待は大きい。
新型コロナウイルスの状況に大きな波があり、ETC休日割引が時折中止になるなか、一般道の高規格化は長距離移動が多い人にとっては非常に嬉しい。

帰りは野麦街道(県道26号)から国道19号経由で。

道路改良って凄い。
"木曽高速"国道19号も、鳥居峠という難所に加えて旧中山道の宿場町を経由する高速化とはかけ離れた道路だった。
しかし、交通量の増加にともなって次々とバイパスが建設され、最近では昨年11月に桜沢改良が開通した。

道路の進化を追う面白さ、ここにあり。
つづく