【タイトル】
ドクター・ストレンジ(原題:Doctor Strange)
【概要】
2016年のアメリカ映画
上映時間は115分
【あらすじ】
神経外科医のドクター・ストレンジは事故により手の神経を損傷してしまう。彼はかつて断った患者パングボーンが神経損傷を克服したと知り、彼が頼った東洋のカーマ・タージを訪れる。
【スタッフ】
監督はスコット・デリクソン
音楽はマイケル・ジアッキーノ
撮影はベン・デイヴィス
【キャスト】
ベネディクト・カンバーバッチ(スティーヴン・ストレンジ/ドクター・ストレンジ)
キウェテル・イジョフォー(モルド)
レイチェル・マクアダムス(クリスティーン・パーマー)
ベネディクト・ウォン(ウォン)
マッツ・ミケルセン(カエシリウス)
ティルダ・スウィントン(エンシェント・ワン)
マイケル・スタールバーグ(ニコデマス・ウエスト)
ベンジャミン・ブラット(ジョナサン・パングボーン)
スコット・アドキンス(ルシアン/ストロング・ゼロッツ)
クリス・ヘムズワース(ソー)※ノンクレジット
【感想】
マーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ3の2作目にして通算14作目となった本作は全世界で6億7千万ドルのヒットを記録した。
音楽を聴きながら手術をする外科医の名医ドクター・ストレンジ。どういう状況で力を発揮できるかはその人次第なので、ドクター・ストレンジの場合は音楽を聴きながらでもできるリラックスした状況こそ手術という高い技術が求められる場面で活躍できたのだろう。そんな彼も車の運転中にオペの依頼の電話を受けている。ハンズフリーなのでそれは問題ない。ただ、気になる症例の画像が送られてくると運転しながら視線を落としてその画像を見ることになる。案の定、別の車と接触して崖から車ごと転落する大事故を起こしてしまう。なんでも同時にできると考える彼の過信がよく表されている。
そして、発見が遅れたために処置も遅れ、さらに両手は指の骨に多数のボルトを入れ、神経も損傷して痺れが残ってしまうことになった。当然ながら外科医としてやっていけることは事実上不可能になってしまった。もし自分が手術していればこんなことにならなかったとまで言っている。この時点では事故の原因が自分にあったとかそんなことを考えていない。
後にもドクター・ストレンジは傲慢であるとかエゴが強いとか言われるが上述のエピソードに集約されるだろう。良い気になって調子になった外科医の末路だろう。このキャラクター設定は同じマーベル・シネマティック・ユニバースの中ではトニー・スタークに近いだろう。後述するがトニー・スタークにはこのドクター・ストレンジが出会う師みたいな人が必要だったんだろうなと感じる。また、浮遊マントもいいアイテムだ。ドクター・ストレンジはあくまで自分のコントロール下に置きたいが浮遊マントのせいで思い通りにいかないが、次第に息が合っていくところはコメディとしても十分に機能していた。
本作は人にしてきたことが返ってきたり、逆に人にしてもらったことを返したりするドラマとして十分に機能していると思う。事故の後遺症を治すために連絡を取った医師からは「キャリアに傷を付けたくない」としてドクター・ストレンジの依頼を断っているが、神経の後遺症を克服したパングボーンのもとを訪ねると彼はかつて自身が断った患者であり、パングボーンからキャリアに傷をつけないために断ったのだろうと言われてしまう。このエピソードを聞くと、ドクター・ストレンジは神経外科医として優秀だったのか、自分ができる症例を選んでいたのか気になるところだが、あくまで前者であるという位置付けのようだ。
また、手の神経の負傷を治すために訪れたカーマ・タージでは「気持ちの問題」がメインとして扱われることに当初戸惑いを見せたドクター・ストレンジだが、周囲の手厚いフォローと持ち前の頭の良さで魔術を次々に取得していく。魔術を手にしていく流れは映画なのでしょうがないがやや強引ではある。「気持ちの問題」という点はもう少し丁寧に進めてほしかったかな。結局はその頭の良さで魔術を次々に習得していくとなればドクター・ストレンジはやっぱりすごいという話になる。終盤の「しつこさ」も悪くないんだが。
そして中盤の戦いで胸を刺されたドクター・ストレンジはスリング・リングを使ってクリスティーンがいる病院へ助けを求める。クリスティーンにオペを依頼したドクター・ストレンジは幽体離脱をしてクリスティーンに助言していく。しかもその間に敵と戦っているのだから「ながら」癖は治っていないようだ。
そのクリスティーンは事故の後に熱心に付き合ってくれたのだが、そんな彼女にも酷い言葉を吐いてしまう。それでも急患としてやってきた自分を再び救ってくれた。これは医者として当然の行動であるのは間違いないが、クリスティーンは素敵な女性だ。また、冒頭の手術の場面では能力の劣る同僚のウエスト医師のメンツを結果的に潰す形となったが、そんな彼に助けを求めることになる。
一方で敵に関しては主人公側のドラマに比べると弱々しい。ゼロッツ率いるカエシリウスの背景はもはや説明にしかなっていない。ここに力を注ぐと映画の上映時間が長くなるだけなので仕方ないか。あと、サブキャラがやや弱い。キウェテル・イジョフォーなんてクレジット2番目なのに、ベネディクト・ウォン演じるウォンの方がよっぽど存在感があった。
最終的に主人公は時間を魔術で操ることで解決させていく。それを使えば何でもありじゃないかというところなのであまり手を出してほしくない選択肢ではある。やろうと思えば事故を起こす前に戻ることだってできるはずだ。それでも主人公がその選択肢を取らないのならそのジレンマは描くべきだったと思う。
とはいえ、プライドが高くエゴの強い主人公が自業自得の如く事故により文字通り転落していき、そこから師に出会って立ち上がっていく物語としてはよくできていたと思う。上述のようにトニー・スタークと似たタイプの人間だが、トニー・スタークは「アイアンマン」の単体作品のどこかで本作のエンシェント・ワンみたいな人に出会うべきだったんじゃないだろうか。もちろん彼にはペッパー・ポッツがいるんだけどさ。
【関連作品】
「アイアンマン(2008)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 1作目(通算1作目)
「インクレディブル・ハルク(2008)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 2作目(通算2作目)
「アイアンマン2(2010)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 3作目(通算3作目)
「マイティ・ソー(2011)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 4作目(通算4作目)
「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(2011)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 5作目(通算5作目)
「アベンジャーズ(2012)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 6作目(通算6作目)
「アイアンマン3(2013)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 1作目(通算7作目)
「マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 2作目(通算8作目)
「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 3作目(通算9作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 4作目(通算10作目)
「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェース2 5作目(通算11作目)
「アントマン(2015)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 6作目(通算12作目)
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 1作目(通算13作目)
「ドクター・ストレンジ(2016)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 2作目(通算14作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 3作目(通算15作目)
「スパイダーマン:ホームカミング(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 4作目(通算16作目)
「マイティ・ソー バトルロイヤル(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 5作目(通算17作目)
「ブラックパンサー(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 6作目(通算18作目)
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 7作目(通算19作目)
「アントマン&ワスプ(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 8作目(通算20作目)
「キャプテン・マーベル(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 9作目(通算21作目)
「アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 10作目(通算22作目)
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 11作目(通算23作目)
「ブラック・ウィドウ(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 1作目(通算24作目)
「シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 2作目(通算25作目)
「エターナルズ(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 3作目(通算26作目)
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 4作目(通算27作目)
「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 5作目(通算28作目)
「ソー:ラブ&サンダー(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 6作目(通算29作目)
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 7作目(通算30作目)
「アントマン&ワスプ:クアントマニア(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 1作目(通算31作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 2作目(通算32作目)
「マーベルズ(2023)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 3作目(通算33作目)」
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音声特典
├スコット・デリクソン(監督)による音声解説
映像特典
├イントロダクション
├製作の舞台裏
├“フェーズ3”の世界
├帰ってきた“チーム・ソー”
├未公開シーン
├NGシーン集
<4K Ultra HD+BD>
収録内容
├上記BD+DVDと同様