【作品#0870】TAXI NY(2004) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

TAXI NY(原題:Taxi)

 

【概要】

 

2004年のアメリカ/フランス合作映画

上映時間は97分

 

【あらすじ】

 

念願のタクシー運転手になったベルは、失敗続きで後のないニューヨーク市警のウォッシュバーンを車に乗せ、銀行強盗犯を追うことになる。

 

【スタッフ】

 

監督はティム・ストーリー

音楽はクリストフ・ベック

撮影はヴァンス・バーバリー

 

【キャスト】

 

クイーン・ラティファ(ベル・ウィリアムズ)

ジミー・ファロン(アンディ・ウォッシュバーン)

ジゼル・ブンチェン(ヴァネッサ)

ジェニファー・エスポジート(マータ・ロビンス)

 

【感想】

 

フランス映画「TAXi(1998)」のハリウッドリメイク。オリジナルシリーズでプロデューサーと脚本を務めたリュック・ベッソンは本作でもプロデューサーを務めている。

 

概ねシリーズ1作目のリメイクではあるが、主人公と強盗団のメンバーの性が女性に変更され、オリジナルで大きな存在感を示したジベール署長に相当するキャラクターが本作に登場しないなどの設定変更はある。このジベール署長は主演キャラクターを喰うほどの存在感があったために、リメイクでどう扱うかは苦慮したことと思うが、オリジナルを知る人からすればリメイクに当たる本作はぽっかり穴の開いた印象だ。

 

オリジナルではバイクの配達をしている主人公が念願のタクシー運転手になるところから始まったが、本作の主人公ベルは自転車のメッセンジャーをしている。ところが、このベルはとても軽やかに自転車を運転できそうには全く見えない。クイーン・ラティファは割とぽっちゃりしているぞ。オープニングの時点でここまでの「大嘘」を付かれたら観客としてもたまったもんじゃない。かといって車の運転は様になっているかと言われたら普通かな。運転中の口の悪さは様になっているが、少なくとも運転うまそうだなぁとは思わない。あとメカに強そうな感じもしない。

 

それからオリジナルのエミリアンに相当するのがジミー・ファロン演じるウォッシュバーンである。ジミー・ファロンはサタデーナイト・ライブ(アメリカの人気コメディ番組)に出演していたコメディアンなのだが、完全にミスキャスト。オリジナルのエミリアンにはまだ母性をくすぐる可愛げがあったのだが、ジミー・ファロン演じるウォッシュバーンにはそれが全くない。見ていて割と不愉快に感じる場面が多い。

 

そのせいもあって、警部補のヴァネッサとかつて交際していたという事実がこちらも完全に嘘くさくなっている。オリジナルもエミリアンと警部補のペトラとの間にはギリ可能性を信じられる映画的なリアリティラインがあった。本作にはそれが全くなく、ヴァネッサがウォッシュバーンを見る度にイライラした表情しか見せないのもマイナスポイントだ。せめてどこかでウォッシュバーンの何かを信じているとかどこかが気に入っているとか思わせる要素がないと。

 

本作では強盗を捕まえるのなんてほんのおまけであり、あくまでベルとウォッシュバーンの関係性がメインである。ベルからすればウォッシュバーンをタクシーに乗せたことで5年かけて手に入れたタクシーの窓ガラスは割られ、銀行強盗事件に関係する証拠品としてタクシーを没収されてしまうというとんでもないことになったわけだ。これほど憎い相手もいないはずなのに、ベルがウォッシュバーンに心を開くまでがあまりにも早すぎる。ウォッシュバーンが汚名返上したいと考え、嫌な思いをさせたベルにもっと真剣に向き合うか、もしくはベルの受けた仕打ちをもっと程度の低いものにすべきだった。ここをいい加減にするくらいなら旧知の仲くらいにしておけば良かったとまで思う。大事な恋人がいながらウォッシュバーンに協力する流れは強引でしかない。

 

また、彼らにそれぞれ思いを寄せる相手がいる設定もオリジナルを引き継いでいるのだが、本作では何の役にも立っていない。むしろそれが物語を進めるうえでの妨げになっている。ベルが恋人とゴールインするラストは百歩譲って許せても、ウォッシュバーンがなぜあれほど嫌われていたヴァネッサとデートするほどの仲になるのかさっぱり分からん。スタートの時点で彼らの距離感があまりにも遠すぎるんだわ。結局、ウォッシュバーンのキャラクター設定をあまりにも極端にしたせいで他のキャラクターとの繋がりにリアリティを感じず笑うに笑えないのだと思う。そしてジミー・ファロンというキャスティングがそれに拍車をかけたのだろう。

 

それからアクション映画という側面もあるのだが、ものの見事に印象に残らない。ラストの見せ場もそれに至る流れが強引にも程があるし、ベルが撃たれてウォッシュバーンが苦手な運転を克服して病院まで連れていく流れもいらないな。歌いながらだったらリラックスして運転できるという流れならこの場面でBGMはいらないだろう。どこか恥ずかしさを隠すためにBGMを入れたようにさえ思えてくる。

 

オリジナルは別に特段優れたシリーズだとは思わないが、それでもキャストの魅力はあったし、それが良かったからこそシリーズ化もしたのだと思う。リメイクに当たる本作はキャストの時点で失敗しているし、脚本に関してはオリジナル以下である。こりゃ酷評されるわ。

 

【関連作品】

 

TAXi(1998)」…シリーズ1作目

TAXi2(2000)」…シリーズ2作目

TAXi3(2003)」…シリーズ3作目

TAXi4(2007)」…シリーズ4作目

TAXi ダイヤモンド・ミッション(2018)」…リブート

「TAXI NY(2004)」…ハリウッドリメイク

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

【配信関連】

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語/ポルトガル語/スペイン語)

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

言語

├オリジナル(英語/ポルトガル語/スペイン語)

├日本語吹き替え

映像特典

├未公開シーン集

├「TAXI NY」メイキング

├視覚効果の舞台裏

├ジミー・ファロンのスタジオ・ツアー

├コメディー・セントラル製作「TAXI NY」特集

├ミュージック・モンタージュ:美しき強盗団