【作品#0705】TAXi ダイヤモンド・ミッション(2018) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

TAXi ダイヤモンド・ミッション(原題:Taxi 5)

【概要】

2018年のフランス映画
上映時間は102分

【あらすじ】

パリ警察のシルヴァンは問題の多さからマルセイユ警察に左遷される。そこではイタリアの強盗団が暗躍しており、シルヴァンはダニエルの甥の運転手エディと組むことになる。

【スタッフ】

監督はフランク・ガスタンビドゥ
脚本はリュック・ベッソン/フランク・ガスタンビドゥ
撮影はヴァンサン・リシャール

【キャスト】

フランク・ガスタンビドゥ(シルヴァン)
マリク・ベンタルハ(エディ)
ベルナール・ファルシー(ジベール市長)
エドゥアルド・モントート(アラン署長)

【感想】

前作から11年ぶりに製作されたシリーズ5作目は、主要キャストはほとんど一新され、ジベール署長を演じたベルナール・ファルシー、アランを演じたエドゥアルド・モントートが続投している。また、主演したフランク・ガスタンビドゥが監督、脚本を兼任している。

結論から言うと、シリーズで最低の出来である。どうすればこれほどまでに面白くなくなるのか。これに関しては監督、脚本、主演を兼任したフランク・ガスタンビドゥのセンスなのだろうと思う。

かつてのシリーズでも演出の仕方のせいでギャグがいまいちだったことはあったが、基本的に彼らが大真面目にやるからこその笑いはそれなりにあった。ところが、本作はどれもこれもが笑いを狙い過ぎであり、その演出や観客との距離感が絶望的なのでほとんど笑えない。何ならかつてのシリーズでジベール署長を演じたベルナール・ファルシーが市長として出演する出オチシーンに他のキャストの場面が勝ることはない。

というか、登場人物が多すぎないか。かつてのシリーズから考えると警察署の面々は新たに増やした登場人物ということであろう。この面々も「いかにも面白そうなやつを連れてきました」感が強すぎて、アラン署長がシルヴァンに彼らのことを紹介する場面から彼らのギャグをグイグイ入れてくる。登場人物が多いうえにそれほど上映時間も取れないだろうからここでキャラ紹介をしっかりしておきたかったのだろうが、急ぎ過ぎだし狙い過ぎ。

それから、話の進め方も絶望的に下手である。あれもこれも手を出し過ぎたせいか、誰が何のために何をしているのかが分かりづらい場面が多い(私が興味を失っていたからかもしれんが)。あっちもこっちも描くという不格好な感じになっている。これならジベールもアランも再登場させなければ良かったと思う。アランは全身骨折で包帯ぐるぐる巻きになり中盤以降すっかり出番がなくなり、ラストで病室にいるアランが一瞬映るだけである。これは「TAXi2(2000)」のジベール署長と同じだが、アランをどう映画に絡ませるか分からなくなって匙を投げたとしか思えない。

また、かつてのシリーズのダニエルとエミリアンの関係は、一応シルヴァンとエディに引き継がれているが、シルヴァンが警官でありスピード狂でもあるという設定になっている。となるとエディはただの間抜けなタクシー運転手でしかない。マルセイユ警察に赴任したシルヴァンがマルセイユの事情を知らないという設定があるなら、マルセイユでタクシー運転手をしているエディが役立つ場面も必要になるが、カーチェイスの際に仲間に連絡してシルヴァンの運転する車が通れるように協力してもらっているくらいしかない。結局ただの間抜けでしかない。かつてのシリーズのエミリアンは警官なのに間抜けというところで最低限のギャップはあった。本作にはそれがない。

ただ、シルヴァンの女事情に関しては例外的に描かれていく。シルヴァンはエディの姉サミアに一目ぼれをして口説こうとするがことごとく失敗する。トラブルは起こすが凄腕警官という触れ込みなので、女性相手になるとうまくいかないのはギャップとして成立しえるが、女性相手だからうまくいかないのか、サミア相手だからうまくいかないのかが判別しづらい。しかも、このシルヴァンの絶望的なミスも彼のキャラクター自体を崩壊しかねないほど下らないものであるところもダメなポイントだろう。この程度の出来になるならシルヴァンはすべてにおいて真っ当な感覚を持った人間として周囲とのギャップに苦しむという進め方で良かったと思う(「ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン-(2007)」という大成功例があるじゃないか!!)。

それ以外ではエディの彼女の話も丸ごとカットしても良かったと思うくらいに必要性を感じない。女性キャラクターの扱いの雑さはある意味シリーズ一貫していると思う。

一応テーマ的なところに触れておくと、本作はエディの叔父ハミッドがアルジェリアでタクシーを運転しているところから始まる。ハミッドはジダンのユニフォームを着ているのだが、これは「TAXi2(2000)」のダニエルと同じである。また、ダニエルを演じたサミー・ナセリもジダンもアルジェリアにゆかりのある人物である。そんな彼の象徴とも言えるタクシーがアルジェリアにあるわけだから、フランス移民を元居た場所に返そうとしている設定にも見える。そして、後にそのタクシーがフランスに戻ってくるわけだから移民排斥に反対する形と取ることはできる。ただ、製作者がここまで考えていたとはあまり思えないし、仮にそうだったとしても上辺だけをなぞった展開でしかない。

久しぶりのシリーズを主要キャストを変えてまで製作したは良いが、映画の出来はズタボロ。スピード感の演出などにかつてのシリーズよりも洗練された箇所はあったように思うが、だからと言って面白かったとはとても言えない。なにせコメディが絶望的だったのは否定のしようのない事実だろう。これがシリーズ継続を不可能にさせる決定打となったことだろう。

【関連作品】

 

TAXi(1998)」…シリーズ1作目

TAXi2(2000)」…シリーズ2作目

TAXi3(2003)」…シリーズ3作目

TAXi4(2007)」…シリーズ4作目

「TAXi ダイヤモンド・ミッション(2018)」…リブート

TAXI NY(2004)」…ハリウッドリメイク

 

 

 

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