【作品#0706】バリスティック(2002) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

バリスティック(原題:Ballistic: Ecks vs. Sever)

【概要】

2002年のアメリカ/ドイツ合作映画
上映時間は91分

【あらすじ】

ある日、DIA長官ロバート・ガントの息子が誘拐された。また、FBI捜査官のエクスはかつての爆破事故で死んだはずの婚約者ヴィンが生きているとかつての上司から知らされ、その所在を明かす代わりに誘拐事件と、ロバート・ガントが盗み出した暗殺兵器の一件を操作することになる。

【スタッフ】

監督はカオス
音楽はドン・デイヴィス
撮影はジュリオ・マカット

【キャスト】

アントニオ・バンデラス(ジェレマイア・エクス)
ルーシー・リュー(シーバー)
グレッグ・ヘンリー(ロバート・ガント)
タリサ・ソト(ヴィン)

【感想】

カオス(本名はウィッチ・カオサヤナンダ)にとって、タイで監督した作品「Fah」が成功したことで本作がハリウッド監督デビューとなった。ただ、7,000万ドルの予算に対し、たったの2,000万ドルしか稼ぐことが出来ず、映画レビューサイトのロッテントマトでは支持率0%と最も低い評価の作品となっている。

本作はシンプルな話のはずなのに、説明不足だったり、意味不明だったりで話が分かりづらい箇所が多数ある。観客に向けて何を説明しておかなければならないかが全く分かっていないのだと思う。物語運びは絶望的と言える。

国防情報局(DIA)長官ロバート・ガントの息子マイケルがシーバーによって誘拐されるところから始まる。シーバーの狙いはロバートの命でありマイケルを誘拐する意味は分からない。息子の命を狙うことでロバートを苦しめるという感じにも見えない。このシーバーは基本的に自分で何かを語ることはほとんどなく、他のキャラクターが説明するくらいなのでより分かりづらい。

また、一方で婚約者レイン(現在の名はヴィン)を自動車爆破事故で亡くしてFBI捜査官を辞めていたエクスのもとへ、かつての上司が仕事の依頼に来る。そこで彼はレインが生きていることを知らされる。後の回想シーンでこの自動車爆破事故の場面があるが、エクスがレインを死んだと思うには無理のある場面だし、レインは現在ヴィンとしてロバート・ガントの妻であり子供まで作っているのだから簡単に見つけられそうだ。

そして、このロバート・ガントは部下を使ってベルリンから暗殺兵器「ソフトキル」を盗んだ疑いがかけられている。このソフトキルは体内にで作動させれば心臓発作を起こすことができるものであり、「感情のある人間と違って確実に殺せる」という謳い文句のようだ。ただ、仕掛けるのは人間であるのだから確実というのは違うだろう。また、このロバート・ガントがこの暗殺兵器を使って何がしたいのかもあまり見えない。

その後、エクスの仲間たちがシーバーを発見すると、街中での銃撃戦となる。シーバーは圧倒的に不利な状況で、おまけに目立つ格好までしているが、ことごとく敵をやっつけていく。この場面に限らずだが、基本的にアクションシーンは理詰めして作られた感じはしないし、シーバーがめちゃくちゃ強いようには見えない。あとは、アクションシーン全体に言えることだが、爆破に頼り過ぎだ。爆破が必要とは思えない場面でもとにかく爆破しまくる。

そして、そのシーンが一段落したかと思うと、現場に駆けつけたエクスは「彼女はまた戻ってくる」と言う。すると、その通りシーバーは戻ってきてエクスに仕事を持ちかけたフリオ・マーティンを撃ち殺す。ここでシーバーがリスク承知で戻ってきてまでフリオ・マーティンを撃ち殺した理由は明示されないため、さっぱりわけが分からないシーンである。

その後、フリオ・マーティンを射殺したとしてなぜかエクスが逮捕される展開になる。彼が犯人でないことは周囲の捜査官が目撃しているはずなので、何かしらの意図がある場面だと思うが、どういう意図の場面なのかこちらもさっぱり分からない。

その後、クライマックスにかけてアクションシーンが続いていく。なかでも、止まった列車の並ぶ間にいつの間にか地雷を仕掛けたエクスはその地雷を踏んで敵の足を止め、エクスは足を離して猛ダッシュで走って爆破から逃げて敵をやっつける。ところが、その爆破で横に止まっている列車に載せていたパイプが落ちてきて巻き込まれたエクスは負傷する。肉を切らせて骨を断つ的な意図だったんだろうか。にしてはちょっと伝わりづらいし、エクスが間抜けにしか見えないぞ。

そして、シーバーはロバート・ガントの手下ロスとの一騎打ちになるが、クライマックスの格闘シーンにしてはロスが弱すぎて話にならない。しかも彼らがわざわざ銃を捨ててナイフで戦う理屈なんてない。結局、敵から多くの攻撃を受けてきたシーバーはこのラストの格闘でロスのナイフでの攻撃により顔を少し切るだけである。そして、黒幕のロバート・ガントはソフトキルを埋め込まれてそれで死ぬことになる。なんとも不甲斐ない幕切れである。

そんな本作の中で良い意味で一箇所だけ触れておきたい場面がある。それはエクスが死んだと思っていたレイン(ヴィン)と再会する水族館の場面である。そこでは対面する彼らの奥に水族館の水槽があり、その水槽の奥から僅かに漏れてくる光が逆光となり、対面する彼らがほとんどシルエットのみになる演出がなされている。非常にきれいな場面だが、本作みたいな映画に全くそぐわない演出で逆に驚かされる。この二人のドラマが特段描かれたわけでもないし、ここだけロマンティックに描いてどうする。彼らが再会を喜ぶ場面がラストに用意されているわけでもない。

物語の進め方が絶望的に下手なうえ、アクションシーンは理詰めされておらず爆破に頼る大味なシーンばかり。登場人物もどれもが魅力に欠ける。そして、こんな作品を7,000万ドルもかけて製作したなんてそれも信じられない。当時のこの手の映画なら予算の費やされた方だが、どう見てもB級映画レベル。これでラジー賞にノミネートすらされなかったんだから見向きもされなかったということなのだろう。




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├ルーシー・リュー、アントニオ・バンデラス、スタッフ&キャストのインタビュー

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