【作品#0702】TAXi3（2003）

【タイトル】

TAXi3（原題:Taxi3）

【概要】

2003年のフランス映画
上映時間は84分

【あらすじ】

サンタに扮した強盗団を警察は8か月も捕まえられずにいた。そんなある日、スイス系中国人のキウが署内に記者として取材を始める。

【スタッフ】

監督はジェラール・クラヴジック
脚本はリュック・ベッソン
撮影はジェラール・ステラン

【キャスト】

サミー・ナセリ（ダニエル）
フレデリック・ディファンタール（エミリアン）
マリオン・コティヤール（リリー）
エマ・シェーベルイ（ペトラ）
ベルナール・ファルシー（ジベール署長）
バイ・リン（キウ）
シルヴェスター・スタローン（タクシーの乗客）

【感想】

人気シリーズの3作目には、冒頭にシルヴェスター・スタローンがカメオ出演を果たしている。

冒頭にスタローンがカメオ出演しているだけあり、このシリーズ人気も凄いなと思わせるところはある。当時落ち目だったスタローンとはいえ、フランス映画にハリウッドの俳優がカメオ出演するなんてあんまり記憶にない。

ただ、肝心のアクションシーンはシリーズの中で進化している感じはあまりせず、もはやシリーズ当初の疾走感を取り入れようとすらしていない印象である。どちらかというとコメディに全振りしている印象で、ジベール署長の見せ場は明らかに増えている。

そんなシリーズでも屈指の笑える場面は、まだ昨日勤務開始したばかりの警官が運転する車内で、シベール署長がキウに歴史の話をしていると、追跡中の車を発見する。シベール署長が「あとに続け」と運転する警官に言うと、その警官はシベール署長の歴史話の続きを話し始め、シベール署長から「そっちじゃない」と突っ込まれる。この場面の原語となるフランス語と日本語訳にギャップがあったかまでは分からないが、ギャグとして見事であり、またこの場面でしか登場しないこの警官役の男も程よい雰囲気を持っている。さらには、この二人がボケ担当になるので、いつもはポンコツのエミリアンもツッコミに回っている。

また、そのシーンの後で追跡中の車が民家を次々に破壊していき、ジベール署長の乗るパトカーもその破壊された民家を横切っていく。その際にパトカーの外からジベール署長らを捉えるショットがあるのだが、民家が破壊されているというのに無表情である。この無表情こそこのキャラクターの作り上げてきたものをぶち壊す最高の表情である。民家が破壊された様子に驚いたり、追跡中の車の破壊力にたじろいだりすることはない。ジベール署長が何に興奮し、何に興味がないかがさっぱり分からないところが良い。

そんなこんなで、本作は特にジベール署長にスポットが当てられている。彼のキャラクターがあまりにも強烈で、登場して真面目な顔をしているだけでも面白い。そりゃ主人公を差し置いてでも彼のシーンを入れたくなる気持ちも分かる。かといって彼を主人公にした作品を作ったとしたらそれは間違いなく違うと言える。

そのジベール署長に出番を用意したからというわけではないだろうが、前2作品のようなタクシーの疾走感はかなり印象として薄い。何といってもラストは改造車で雪山を下っていくだけなのだから。これによってシリーズ3作目としてのオリジナリティは出たかもしれないが、やはりシリーズに必要なのは疾走感。それを失ったのは結構デカい。

また、本シリーズは毎作品異なる国がある意味での敵になっており、ドイツ、日本と来て本作は中国である。なので、ドイツのメルセデス・ベンツ、日本の三菱ときて、中国産の車が登場するはずだが、残念というべきか世界に誇る中国産の車はないので登場しない。マーケットや諸々の観点から中国となったとは思うが、世界には有名な車のメーカーがたくさんあるわけなので、普通にイギリスとかアメリカでも良かったように思う。

そして、ダニエルの恋人リリーの出番の問題は1作目から指摘してきたが、本作ではついにリリーが妊娠するという展開がある。この展開に意味があったのかと思うほどに前作と同じくリリーは序盤とラストにしか出番が用意されていない。主人公に美人でセクシーな恋人がいないと映画自体が締まらないと考えたのだろうが、もう少し本筋に絡ませられるような工夫は出来なかったのかと思う。エミリアンの恋人で仕事のできる警官のペトラがいる分マシだが、女性の役割は主人公の恋人でしかないように見えるのはやや残念。

結局、「TAXi」シリーズの続編というよりも、ジベール署長の位置づけをさらにワンランク上にしたスピンオフにすら見えるシリーズ3作目。シリーズファンにはいまいちでも、ジベール署長ファン!?にはうってつけの作品ではないだろうか。前作に引き続きまたもやラストはジベール署長のカットである（前作よりかは本作のオチの方が映像的インパクトも含めて良かったと思う）。

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