【タイトル】
リプレイスメント・キラー(原題:The Replacement Killers)
【概要】
1998年のアメリカ映画
上映時間は87分
※エクステンデッド版は97分
【あらすじ】
チャイニーズマフィアのウェイの息子が麻薬取引現場で刑事のジーコフに殺されてしまった。ウェイは凄腕の殺し屋ジョン・リーに最後の仕事として復讐を依頼する。
【スタッフ】
監督はアントワン・フークア
製作総指揮はジョン・ウー
音楽はハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影はピーター・ライオンズ・コリスター
【キャスト】
チョウ・ユンファ(ジョン・リー)
ミラ・ソルヴィノ(メグ・コバーン)
マイケル・ルーカー(ジーコフ)
ケネス・ツァン(ウェイ)
ダニー・トレホ(コリンズ)
【感想】
アントワン・フークアにとって映画監督デビュー作となった本作は、香港で活躍していたチョウ・ユンファにとってのハリウッドデビュー作にもなった。また、ミラ・ソルヴィノはかつて中国で英語の教師をしており、また当時交際中だったタランティーノからチョウ・ユンファの共演を強く勧められたようだ(チョウ・ユンファの通訳の役割も担ったとか)。
製作総指揮に香港時代チョウ・ユンファを起用し続けたジョン・ウーが入っており、彼の十八番とも言える演出のスローモーションや二丁拳銃が出てくるので(鳩はいなかったと思うが)、ほとんど彼が演出したのではないかと思えてくる。チョウ・ユンファのファンを見据えたマーケティングもなされていたので、スローモーションや二丁拳銃の演出は契約に入っていたのではないだろうかとさえ思う。
お話自体も香港時代の作品とさほど変わらず、チョウ・ユンファ演じる主人公がスナイパーといえば、ジョン・ウーが監督した「狼/男たちの挽歌・最終章(1989)」なんかを思い出す。
本作は非常に短い上映時間の映画であり、チョウ・ユンファの英語が堪能ではなかったため彼が何かの説明をするような場面はかなり少なかったと言える。その影響か、ジョン・リーの人となりが序盤に物足らない印象である。クラブで敵を殺す場面があるので主人公の職業や腕が確かなことは分かる。それでもウェイから息子の敵討ちを最後の仕事として頼まれる場面や彼が依頼された殺しを出来ない場面はもう少し説明が必要だった。
凄腕の殺し屋ならターゲットが子どもであろうが殺せるはずじゃないのか(子供がターゲットだったのが分かるのは終盤だが)。それでもジョン・リーが躊躇して最終的には殺さないという選択肢に至る経緯は、チョウ・ユンファの演技だけでは伝わりづらいな。後に自分の家族(母親と姉)が殺されるかもしれないというところに繋がっていくのは理解できるが、それは観客向けに事情を説明した後の場面になるわけである。
また、ウェイはジョン・リーに最後の仕事として息子の敵討ちを依頼している。「最後の仕事」となると、ジョン・リーはこの仕事を辞めたがっていたのだろうか。この辺も一言で済ますにはいかなかった場面だと思う。
以降は、ジョン・リーが偽造パスポートの作成を依頼したメグとともにウェイ一家から命を狙われることになり、彼らのバディものという側面も描かれていく。ただ、初対面の彼らが交流する様子を描くにはあまりにも薄っぺらく、軽犯罪を繰り返していたメグがジョン・リーの恩師の死を見て涙を流すのはどう見てもいきすぎだ。
さらには、このメグは偽造パスポートの作成で生計を立てている女性であるが、銃捌きも一流であり、敵の銃撃を逃れる動きも洗練されている。一体何者なんだ。ジョンとメグの関係の行き着く先やメグの戦闘能力の高さを考えると、彼らはかつての仕事仲間だったとかそんな設定にすれば良かったのに。ただ、巻き込まれるだけの女性ではないところは良いと思うのだが。
ウェイの手下がことごとくジョン・リーとメグを逃し続けると、刺客と称した二人の殺し屋が送り込まれる。殺し屋を演じたのは「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア(1997)」で注目を集めたティル・シュヴァイガー(ハリウッドデビュー作)と、多くの映画で殺し屋を演じてきたダニー・トレホである。ただ、彼らは持っている武器が他の奴らよりも凄い程度であり、刺客というほどの存在ではなかった。ティル・シュヴァイガー演じたリカーは、下にいるジョン・リーを見下ろせる状況に居ながらあっさり殺され、ダニー・トレホ演じたコリンズはこちらも有利な状況ながら気付けばジョン・リーに背後を取られて殺される。彼らがわざわざ飛行機に乗って呼び寄せられた殺し屋ならそれなりに強さを演出しないと意味がないように思う。
また、ラストでジョン・リーとウェイが対面する。彼らは銃を向け合い引き金を引くが両者ともに弾切れで、リロードの速かったジョン・リーがウェイを撃ち殺すという結末になっている。プロの殺し屋が持っている銃に弾が入っているかどうかを確認していないなんてそんな間抜けな話はない。というか、ジョン・ウー時代から拳銃の弾数なんて気にもしていなかったんだからこんなところを突っ込むのも野暮かもしれないが、ラストだからね。
結局、チョウ・ユンファのファン向け、もしくはアメリカ人向けの紹介のような映画だった。チョウ・ユンファがこれでもかとカッコを付けまくっているので恥ずかしくなる場面もある。四方八方を囲まれさらには敵が上にいるという状況下でも身を隠さずに体をくるくる回転させて敵をやっつけていくところなんかは顕著だった。ただ、それでも彼のカッコよさはそれなりに表現されていたように思う。
取り上げた作品の一覧はこちら
【配信関連】
<Amazon Prime Video>
言語
├オリジナル(英語/広東語)
【ソフト関連】
<BD>
本編
├エクステンデッド版
言語
├オリジナル(英語/広東語)
├日本語吹き替え
音声特典
├アントワ・フークア監督による音声解説
映像特典
├メイキング・ドキュメンタリー
├未公開シーン集
├もうひとつのエンディング
├チョウ・ユンファ ハリウッドへ行く
├フィルモグラフィ