【作品#0847】キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(原題:Captain America: The Winter Soldier)

【概要】

2014年のアメリカ映画
上映時間は136分

【あらすじ】

SHIELDの船が海賊によって占拠される事件が発生すると、スティーブとナターシャは人質救出に向かう。

【スタッフ】

監督はアンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ
音楽はヘンリー・ジャックマン
撮影はトレント・オパロック

【キャスト】

クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ)
スカーレット・ヨハンソン(ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ)
セバスチャン・スタン(バッキー/ウィンター・ソルジャー)
アンソニー・マッキー(サム・ウィルソン/ファルコン)
フランク・グリロ(ブラック・ラムロウ)
エミリー・ヴァンキャンプ(シャロン・カーター/ケイト/エージェント13)
ヘイリー・アトウェル(ペギー)
トビー・ジョーンズ(ゾラ)
ロバート・レッドフォード(アレクサンダー・ピアース)
サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー)
アーロン・テイラー=ジョンソン(ピエトロ・マキシモフ/クイックシルバー)※ノンクレジット
エリザベス・オルセン(ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ)※ノンクレジット

【感想】

マーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ2の3作目で、通算としては9作目になった作品。全世界で約7億1千万ドルの売り上げを記録した(ちなみに日本はたったの7億円)。また、ロバート・レッドフォードは孫がこのシリーズのファンであることから出演することを決意している。

キャプテン・アメリカはジョルジュ・パトロックを一時は倒すのだが、ブラック・ウィドウとおしゃべりしている間に逃げられる。とどめを刺すなり拘束するなりしていれば逃げられることはなかったのに。冒頭の重要な場面が何とも間抜けなシークエンスになってしまっている。

スティーヴは突然家を訪れた重傷を負ったニックから「誰も信用するな」と言われ、USBを預かることになる。そしてニック・フューリーは治療空しく絶命してしまう。ところが、終盤にかけて「ニック・フューリーは生きてました」という展開になる。死んだと思っていたキャラクターが後になって「実は生きていました」という展開はどこか「ワイルド・スピード」シリーズを見ているようである。ニック・フューリーは後になってブルース・バナー博士の薬を飲んだことで心拍数が毎分1回になったことで死を偽装できたと語っているが、1分に1回は心臓が動いているのかよ。しかも死体を処理されてしまったらそれこそ終わりじゃないか。なんかこの展開はイマイチ燃えないな。

そして、本作から新キャラクターのファルコンが登場するが、スティーブとサム(ファルコン)の出会いや後に仲間になる件があまりにも弱いな。いつもランニングで会う兄ちゃんという感じだ。悪くはないけどもう少し粋な登場のさせ方はなかっただろうか。

それから前作でやっつけたと思われていたヒドラは実は密かに生き延びていたという物語である。これはナチス・ドイツの残党が世界各地に散らばっていた、そして今なお密かに存在し続けているという現実に照らし合わせたものだろう。それは理解できるとしてなぜ今なのかというところはもう少し説明があっても良かったと思う。

そして生き延びていたのはヒドラだけではなく、スティーヴの親友だったバッキーもだ。ただ、バッキーは記憶を消されヒドラの人体実験によって生き延びているという設定だ。これも少し出来すぎた設定のように感じる。バッキーは記憶を消されているが時折過去の記憶が蘇ることがあり(ロボコップか!!)、スティーヴとの戦いの最中にも自分の任務と親友だった過去の間でどうやら葛藤があるように描かれる。このあたりのさじ加減は脚本家次第なので、バッキー関連の物語はどうも「作った」お話であるように感じられる。

このバッキーとの物語がイマイチなのは前作にも要因がある。前作で虚弱で病弱だったスティーヴは実験によって超人的な肉体を手に入れた。たとえ何度も入隊を拒否されても立ち上がる精神を持っていたためにメンタル面も強いという設定だ。そして、親友のバッキーを救うために自ら戦場に飛び込み助けてみせたが、次の任務でスティーヴはバッキーを死なせてしまった。ところが、この部分に関するスティーヴの内面をあまりちゃんと描けていなかった。「超人だが中身は普通の人間」ではないのだ。何もかも上だったバッキーに対して、何もかも下だったスティーヴ。それが実験によって何もかもスティーヴが上回ってしまったのだ。この二人の間にちょっとした心境の変化が描かれていれば本作での彼らの戦いに一味も二味も加えられたと思う。

また、キャプテン・アメリカは氷漬けにされていたことで約70年間をすっ飛ばして現代に蘇ったわけだ。その現実に苦労する様子もチラッと映るのだが基本的にはほぼ何の問題もなく生活している印象だ。ただ、キャプテン・アメリカが氷漬けになる前に当たる第二次世界大戦時のヒドラや親友のバッキーまでもがこの時代に生きて対決することになるのなら、その時代錯誤に苦しむ様子や、その時代だったからこそ通ずる強みとかもドラマに盛り込めなかっただろうか。ただただ現代に蘇る、あるいはまだ生き残っているというだけになっている。

それから、前作の着地はスティーヴとペギーのロマンスだった。前作で彼らのロマンスは決して描けたわけではなかったが、長い眠りから覚めたスティーヴが最初に思い出したのはペギーだった。そして、本作では高齢のペギーとスティーヴの再会の場面が描かれている。ちなみにこの場面でヘイリー・アトウェルに老けメイクを施しているのではなくCGで高齢のペギーを作り上げたそうだ(目だけキレイ過ぎない!?)。この場面にもまるでドラマがなく、本当に取って付けたように本作の中で浮いた場面になっている。この程度になるのならペギーはもう亡くなっており、お墓参りに行くくらいの方が良かったと思う。

結局のところ、「マイティ・ソー」シリーズのソーにも言えることだが、キャラクターが完成してしまっているせいでキャラクターに面白味がないんだよな。キャプテン・アメリカが成長する物語でもないし、キャプテン・アメリカが誰かを導く物語でもない。周囲のブラック・ウィドウもファルコンもすでに完成したキャラクターである。

そんな本作における悪役はロバート・レッドフォード演じるアレクサンダー・ピアースというSHIELDの長官である。このキャラクターがヒドラの残党の中心人物として何十年も君臨していたのだとしたら「なぜ今なのか」という話だし、なぜヒドラの考え方が根深く残っているのかはよく分からない。このキャラクターはできれば本作よりも前の作品のどこかで「善人」役として登場させるべきだったと思う。本作でいきなり登場して程なくして悪役というのもイマイチかな。

映画としての面白さはボチボチあったのだが、主人公を巡るドラマは総じて弱い。

【関連作品】


アイアンマン(2008)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 1作目(通算1作目)
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アイアンマン2(2010)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 3作目(通算3作目)
マイティ・ソー(2011)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 4作目(通算4作目)
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(2011)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 5作目(通算5作目)
アベンジャーズ(2012)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ1 6作目(通算6作目)
アイアンマン3(2013)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 1作目(通算7作目)
マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 2作目(通算8作目)
「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 3作目(通算9作目)
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 4作目(通算10作目)
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェース2 5作目(通算11作目)
アントマン(2015)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ2 6作目(通算12作目)
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 1作目(通算13作目)
ドクター・ストレンジ(2016)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 2作目(通算14作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 3作目(通算15作目)
「スパイダーマン:ホームカミング(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 4作目(通算16作目)
「マイティ・ソー バトルロイヤル(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 5作目(通算17作目)
「ブラックパンサー(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 6作目(通算18作目)
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 7作目(通算19作目)
「アントマン&ワスプ(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 8作目(通算20作目)
「キャプテン・マーベル(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 9作目(通算21作目)
「アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 10作目(通算22作目)
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 11作目(通算23作目)
「ブラック・ウィドウ(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 1作目(通算24作目)
「シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 2作目(通算25作目)
「エターナルズ(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 3作目(通算26作目)
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 4作目(通算27作目)
「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 5作目(通算28作目)
「ソー:ラブ&サンダー(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 6作目(通算29作目)
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 7作目(通算30作目)
「アントマン&ワスプ:クアントマニア(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 1作目(通算31作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 2作目(通算32作目)
「マーベルズ(2023)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 3作目(通算33作目)」



取り上げた作品の一覧はこちら



【予告編】

 


【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/フランス語)


<Amazon Prime Video>

言語
├日本語吹き替え


【ソフト関連】

<BD+DVD>

言語
├オリジナル(英語/フランス語)
├日本語吹き替え
音声特典
├アンソニー&ジョー・ルッソ(監督)、クリストファー・マルクス(脚本)、スティーヴン・マクフィーリー(脚本)による音声解説

映像特典
├製作の舞台裏
├未公開シーン
├NGシーン


<4K Ultra HD+BD>

収録内容
├上記BD+DVDと同様