【作品#0861】アントマン(2015) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

アントマン(原題:Ant-Man)

【概要】

2015年のアメリカ
上映時間は117分

【あらすじ】

窃盗での服役を終えたスコット・ラングだったが、就職しても前科があることがバレて解雇され、離婚した妻と娘を訪ねても養育費の未払いを理由に面会できなくなってしまう。そしてスコットはかつての窃盗仲間からの仕事話に乗ってしまう。

【スタッフ】

監督はペイトン・リード
音楽はクリストフ・ベック
撮影はラッセル・カーペンター

【キャスト】

ポール・ラッド(スコット・ラング/アントマン)
エヴァンジェリン・リリー(ホープ・ヴァン・ダイン)
マイケル・ダグラス(ハンク・ピム)
コリー・ストール(ダレン・クロス/イエロージャケット)
ボビー・カナヴェイル(ジム・パクストン)
マイケル・ペーニャ(ルイス)
アンソニー・マッキー(サム・ウィルソン/ファルコン)
ヘイリー・アトウェル(ペギー)
ジョン・スタッテリー(ハワード・スターク)
クリス・エヴァンス(スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ)

【感想】

マーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ2の最後の作品(6作目)にして通算12作目となった本作は、1億3千万ドルの製作費に対して、全世界で5億1千万ドルを売り上げた。

スコット・ラングは犯罪者である。人を殺していないことを盾に正当化している節がある。かなり自覚の甘い人間である。そんな彼が職にありついても前科があることがバレてクビになったり、離婚した妻と娘を訪ねても門前払いを喰らうのは仕方のない事である。

ただ、そんな彼を娘のキャシーだけは無条件に慕ってくれる。確かに小さな子供からすれば、たとえ親が犯罪者であっても親は親だし、こんな犯罪者の親でも慕ってくれることはあるだろう。ただ、この設定にしたことが主人公を甘やかす要因になっているようにも思うし、この娘と会った後に犯罪の道に戻ってしまう心理は理解しがたい。

仕事だってたったの1つやっただけじゃないか。もう少し努力する描写を重ねたうえでそれでも「俺には窃盗しかない」と思わなければ、本作でキーとなる娘のキャシーの存在が無下にされているように感じてしまう。こうなるくらいなら、主人公は犯罪者ではなくて頼りない人間だとか努力できない人間として登場させた方が良かったように思ってしまう。

この件について、監督のペイトン・リードは主人公のスコットをヒーローとして扱っていないと述べている。マーベル映画いうヒーロー映画において、ヒーローとして扱わないというのは至難の業だと思うが、主人公に対してやや甘いと思ってしまう。結局、娘のキャシーを命の危機に晒して父のスコットが助け、その場面を離婚した妻の再婚相手ジムが目撃するという物語を用意したわけだ。これならまだ娘のキャシーが知らないところで助けたけど言えないみたいな方が盛り上がるかな。

そしてかつての仲間の仕事話に乗ったスコットはある家に忍び込んで金庫をこじ開けてとあるスーツを持ち帰る。すると、そのスーツを着て手元のボタンを押せば体がアリのサイズになる文字通り「アントマン」になるのだ。ところが、この盗みはマイケル・ダグラス演じるハンクがすべて仕組んだものだと判明するのだが、どう見ても無理がある話だわ。

するとここからは主人公スコットよりも、ハンクとホープ親子の物語に転じていく。スコットの物語よりもこっちの方がよっぽど手が込んでいる。ハンクの妻にしてホープの母のジャネットが飛行機事故で亡くなってから彼らの関係は疎遠になっているという設定だ。ただ、後に判明するが、ジャネットは飛行機事故で死んだのではなく、巡航中のICBM解体のためにジャネットが任務を成功させるために分子レベルにまで縮小して死んでしまったのだ。娘のホープが「アントマン」のスーツのことなども知らない設定ならまだしもそれを知った上でハンクが隠し通す理由が見えてこない。世界の危機を救うために務めを果たしたジャネットが浮かばれないじゃないか。言いたいけど言えないわけでもないだろうに。ここはドラマとして非常に重要な場面だがどうも納得感はない。

ドラマ面はイマイチだが、アクションコメディとしては及第。小さくなったり元のサイズに戻ったりを繰り返しながら敵を翻弄していく様子は他のマーベル映画にはない魅力である。また、ラストのアクションシーンで模型の機関車がただ倒れるだけの画を引いたショットで入れるセンスはなかなか。ただ、模型の機関車は男の子の部屋にあるものじゃないかな(女の子の部屋にもあるもの!?)。

そしてラストはジャネットが亡くなる要因となった分子レベルにスコットがなってしまうのだが、見事に復活する。ここも甘いよな。確かにスコットは自らの命を賭して分子レベルになることを選んだのは分かる。でもあっさり復活出来ちゃったらなぁ。

良作になる要因はいくつもあったと思うが、最後の最後まで主人公に甘い映画だった。一度くらいは娘のキャシーからそっぽを向かれる描写があってしかるべきだった。

【関連作品】


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アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェース2 5作目(通算11作目)
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ドクター・ストレンジ(2016)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 2作目(通算14作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 3作目(通算15作目)
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「マイティ・ソー バトルロイヤル(2017)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 5作目(通算17作目)
「ブラックパンサー(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 6作目(通算18作目)
「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 7作目(通算19作目)
「アントマン&ワスプ(2018)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 8作目(通算20作目)
「キャプテン・マーベル(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 9作目(通算21作目)
「アベンジャーズ/エンドゲーム(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 10作目(通算22作目)
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ3 11作目(通算23作目)
「ブラック・ウィドウ(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 1作目(通算24作目)
「シャン・チー/テン・リングスの伝説(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 2作目(通算25作目)
「エターナルズ(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 3作目(通算26作目)
「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 4作目(通算27作目)
「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 5作目(通算28作目)
「ソー:ラブ&サンダー(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 6作目(通算29作目)
「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ4 7作目(通算30作目)
「アントマン&ワスプ:クアントマニア(2022)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 1作目(通算31作目)
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023)」…マーベル・シネマティック・ユニバース フェーズ5 2作目(通算32作目)
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【配信関連】

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├オリジナル(英語)


<Amazon Prime Video>

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【ソフト関連】

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言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ペイトン・リード(監督)、アラン・ラッド(出演)による音声解説
映像特典
├製作の舞台裏
├未公開シーン※ペイトン・リード(監督)、アラン・ラッド(出演)による音声解説付き
├NGシーン


<4K Ultra HD+BD>

収録内容
├上記BD+DVDと同様