実践編:「絞り咲き」を作る2
前回の実践編:「絞り咲き」を作るでは、一つ書き忘れていたことがありました。
それは、ウイルスによる絞り(の症状)があること。
現在、パンジー、ビオラでよく知られているウイルスには2種があります。
一つは、葉に症状が出てそれに伴い花も変形するもの。これは普通の葉が縮れたように変形しその茎から咲いた花も花弁が縮れたり、切れ弁になったりします。
もう一つは葉には変化がなく花に症状が出るもの。株が老化した頃、普通の花が急に絞り咲きになります。
以下の写真がそうです。
ピンクベッターに症状が出たもの。ビーコンに症状が出たもの。
最初の頃はウイルスかどうかの区別がつかなくて喜んで残していたものです。大事そうに写真も残している(あー、恥ずかしい)。
でも今ははっきりと区別がつきますね。
まず、斑に関してはその鮮明度。
遺伝による絞りは色の違いがはっきり(絞りが直線的)としています。
それに反して、ウイルスによるものは色の違いが不鮮明(滲んだような感じ)です。
ツバキで例えると分かりやすいかも知れません。縞絞りは遺伝性、雲状絞りはウイルスによるものです。
後、絞りの発生時期でも判別は付きます。
遺伝性のものは、開花初期(1~5輪ぐらい)には既に表れています。
ところがウイルスによるものは開花途中(株の老化に伴って)に出始めます。普通の花だったのが急に絞り咲きになったと言うのはほぼウイルスに間違いありません。
ウイルスは伝染します。葉に症状が出るものはすぐに処分しなければいけませんが、この花のみに症状が出るものは咲き終わりの頃なので、そのままにしても私は大丈夫だと思います。
ウイルスは種子では遺伝しません。
宿根ビオラ(栄養繁殖)に‘コルビネ’と言う品種がありますが、これが絞り咲き。
かつて、その遺伝性を調べようとセルフで種子を採ったことがありますが、その子供には絞りは出ませんでした。
同時期に早野雪枝さんもそれを調べていらっしゃったようで、早野さんも「(その子供に)絞りは出ない」とのことだったので、2人の出した答えは「コルビネの絞りはウイルスによるものに間違いない」でした。
しかし、今改めて考えてみると若干の疑問も残ります。この品種は栄養繁殖、その時出現した形質をずっと維持してきている訳です。ウイルスでなくても遺伝性のない絞りもあります。一概にそう断定はできないんじゃないか。それに育てた子供は10株いかないくらい。確認の個体数がやはり少ないですよね。
ですから、個人的にはコルビネに関しては「この絞りはウイルスによるものと思われるが、そうは断定できない」になってきています。
ちなみに古品種の‘タイグレス’に関して、早野さんは「なかなか(絞りが)出ないのよ」とおっしゃっていましたのでやはり遺伝性は低いと思われます。
以下、H19年度の絞り咲きの交配記録があったので、記載します。(すべての個体の集合写真ではありません)
‘オールドファッション・絞り’ב春のうた’。
オールドファッションの中で出た絞り咲きの個体を頂きましたので、それに春のうた(通常個体)を交配しました。
春のうたはラベンダーピンクの花ですが、一部パープルにも分離しますし、絞りも出ます。それがF1にもi遺伝していますね。
オールドファッションの絞りの選抜(?)が‘モザイク’のような気もしますが、如何でしょうか。
‘フラメンコ・絞り’ב春のうた(絞り選抜)’。
フラメンコとした販売されていた中に絞りが混じっていましたので即購入。それに春のうたの絞りがはっきり出ている選抜個体を交配しました。
結果を見ると種子親だけでなく、花粉親にも鮮明な絞りを使うと、ぐっと出現率がよくなることが分かります。やはり親株選びは重要ですね。
*種子配布の件で申込み先が分からないとのコメントを頂きました。住所は
〒880-2232 宮崎市堤内238-1 川越 路可
宛てにお願いします。
配布の種子は「春のうた」の通常個体です。遺伝はしますが、鮮明な絞りではない場合もありますのでその点をご理解の上お申し込み下さい。