自宅は築50年越えの空き家をフルリノベーション
インテリアと家づくりが学べる、一級建築士のブログ
インテリアスタイルにおける【ミッドセンチュリー】をご存じでしょうか?
直訳(1世紀の中間)の通り、1940~1960年頃のインテリアスタイルを指すのですが、そこまで一般的ではないので初めて聞いたという方も多いのでは。
2つのミッドセンチュリー
またミッドセンチュリーは大きく「北欧ミッドセンチュリー」「アメリカンミッドセンチュリー」に分けられます。
そして両者には以下のような違いがあります。
【アメリカンミッドセンチュリー】
鮮やかな色使いを取り入れることが多く、例えばオレンジや黄色などの明るい色合いが空間のアクセントととして使われ、対照的な色の組み合わせも用いられます。
家具やインテリアには主に木材が使われますが、メタル系やプラスチックも使われることがあります。
素材の組み合わせやテクスチャーの多様性が特徴です。
カリフォルニアを中心に広まったと言われ、開放的で斬新なコーディネートも魅力のひとつです。
また「ミッドセンチュリーモダン」と呼ばれることもあります。
【北欧ミッドセンチュリー】
時を同じくして戦後の北欧では機能性とシンプルさを重視し、自然素材を多用する居住空間が広まりました。
ホワイトやグレー、木目も淡い色合いが多く使われ,アクセントカラーも控えめ。
家具は直線的かつ滑らかな曲線を持つデザインが多く、実用的で合理的な形状です。
和の要素と通ずる部分も多く、日本人にも受け入れられやすいスタイルでもあります。
2つのミッドセンチュリーは共通する点もありますが、厳密には別物と言えます。
リノベでミッドセンチュリー
そして今回は、アメリカンミッドセンチュリーについて過去の施工事例を基に少し書いてみようと思います。
ただし私たちが創るアメリカンミッドセンチュリーは教科書通りのものではありません。
例えばこちら、
リノベーションにおいては、和室の天井仕上げを再利用することも多いです。
ジャパニーズミッドセンチュリーとアメリカンミッドセンチュリーの融合とでも言いましょうか。笑
ヴィンテージ感や重厚感を出すために、木部は濃いめのブラウンを使うことが多いです。
よって家具やインテリアの木部も近い色味に寄せる必要があります。
ウォールナットよりもチークなどの若干赤みがかったブラウンがいいですね。
チークの家具は高い(そもそも流通が少ない)ので、チーク色に塗装されたものでも良いでしょう。
G-PLANなどの英国ヴィンテージ家具はアメリカンミッドセンチュリーと相性◎
私もいくつかこの手の家具を持っているのですが、ここ数年で大きく値上がりしています。
物価高や円安の影響ももちろんありますが、そもそもヴィンテージ家具は値段が落ちないんです。
ものによってはどんどん値段が上がっていくので、ある意味資産にもなりますね。
統一感に縛られない
空間全体としてはダークブラウンの多用で重くならないよう、適度にホワイトを使います。
木、アイアン、モルタル、タイルなど様々な素材をミックスさせたり、ソファやファブリックに色を取り入れることで、作られた統一感を感じさせないのもミッドセンチュリーのポイントですね。
アメリカンミッドセンチュリーの家具やインテリアといえばACME Furnitureでしょう。
元々のコンセプトがミッドセンチュリー(だったはず)なので、基本的にはどれを選んでも合わないことはないでしょう。
プラスチックが最重要
乱形石による石張りもミッドセンチュリー感を演出してくれます。
このような柄のビニールクロスもありますが、それらは極力使わないほうが良いでしょう。
木目調クロスもそうですが、やはりチープな空間になってしまうんですよね。
それならいっその事、全面ホワイトのクロスにすべきです。
そして家具や照明で構成したほうが断然良くなります。
そんな家具コーディネートでオススメするのが樹脂(プラスチック)のイスです。
これは以前紹介したイームズのシェルチェア、ミッドセンチュリー家具の定番でもあります。
シェルチェアじゃなくてもいいのですが、プラスチックチェアで空間に色を取り入れるのが簡単で失敗しにくい方法です。
木の空間に突如プラスチックが紛れ込んでくる、一見アンバランスにも感じるのですが先ほども書いた通り、統一感をどれだけ上手く崩すかがポイントになってきます。
照明も取り換えが効くので、遊び心を加えていいでしょう。
この照明も50年近く前の国産ものですが、色使いやフォルムから伝わってくるレトロな香りがたまりません。
こういった昭和レトロアイテムなどを自由に組み合わせ出来るのも、アメリカンミッドセンチュリーの醍醐味のひとつでもあります。
以上、アメリカンミッドセンチュリーについて施工事例を基に書いてきましたが、いかがだったでしょうか。
王道のミッドセンチュリーからはちょっと外れていますが、そもそもミッドセンチュリーは型にはまらない斬新さが特徴でもあります。
要するに自由ということです。
ということで、少しでも参考になれば幸いです。