刺青 画像「初代彫文の桃の刺青」
初代彫文師の左手首の外側に彫られた「桃の刺青」がはっきりと確認できる画像を入手しました。
太陽の座談会の記事で「桃の刺青」が話題に上がっていたので、その存在は以前から知っていましたが、施術中の画像は腕時計に隠れていたり画像サイズが小さく絵柄が判別できないものばかりでした。
今回 とうとう彫文師の「桃の刺青」を確認することができました。
太陽 1973 1 no.115 座談会 文身を語る より引用
江国 滋(評論家)
山田さん、左手首に桃かなんか、それは自分でやったんですか?
山田 文三(初代彫文)
自分で。これにはもういろいろあるんだけどね。
Wikipediaによると、幕末の侠客、柳川熊吉の系譜を引き継いだ森田常吉の一門は、手首に揃いの「桃の刺青」をいれていたとされる とのことですが、なんらかの関わりがあったのでしょうか?
※柳川熊吉1825年(文政8) - 1913年(大正2) は浅草の料亭の息子として生まれ、浅草の火消しを担当した「を組」の侠客・新門辰五郎の配下だったとも言われます。
函館繁栄の礎を支えた偉人⑥柳川熊吉
桃は墨一色の濃淡で彫られているようです。
デザインは、文身百姿に掲載されているものと同じように見えます。
左: 初代彫文師 浪切張順:初代彫宇之作
右: 天人:三代目彫宇之作
Burst vol.51 より
二代目の腰に朱を刺し直す初代彫文師 腕時計で桃の刺青が隠れています。
NATURAL HISTORY (DECEMBER 1973) より
桃の刺青について
『 文身百姿 』、『 艶麗 』、『 いれずみの文化誌 』 に
解説がありましたのでご紹介します。
『 文身百姿 』 玉林 晴朗 (著) 文身の図柄と型 寓意的の文身 より
信仰の程度を越した「迷信」の文身には渡邊綱の紋(1)、或は桃太郎の意味で桃の図(2)等を腕に彫る者が沢山ある。 これは、両種とも鬼退治を利かして魔除の意である。
又同じ魔除の意味で蛇とか鯉を彫る人もあり、客を沢山はさんで繁盛するようにと私娼が蟹を彫り、芸者とか待合の女将が狐を彫り、女の厄年を無事に越す為腕に墓を彫り、子供を望む人が苅萱を彫る等色々の迷信がある。
又「愛着」の意から魚屋だと魚を彫り、芸者だと三味線なり撥なりを彫り、騎士が馬を彫り、犬好きが犬を彫り、納札趣味者が千社札を彫り、水夫が錨を彫り、鳶が纏を彫る等の例も随分ある。
(3)博徒が賽(サイコロ)を彫る事は賭博を禁じた誓いに彫る事もあるが、又これが愛着の意からも随分彫る。(中略)必ず半目の方のみを出す。 従って裏側の見えない方へ全部丁目が隠れて居る訳である。
下岡蓮杖撮影 飛脚屋のサイコロの刺青
幕末明治古写真帖 より
こんな小型の刺青をよくお風呂などでごらんになるでしょう。 これは迷信と愛着の部類に入るもので右の端は渡邊綱の紋です。
次は桃太郎の旗印です。これはともに鬼退治した強い者の印を入れて魔除け、厄年のがれを意味するものである。
同じ魔除けでも蛇とか鯉を彫る人もある。蛇は無敵、鯉は強い男とか金太郎を意味するものである。公娼の腕に蟹を彫っている者が多い。これは客を沢山ハサミ取る意味である。
『 いれずみの文化誌 』 小野 友道・著
第三話 桃のいれずみ 霊力、性そして龍 より
日本人のいれずみの図柄としてよく選ばれるものの一つに「桃の実」があったといいます。磯川全次は「刺青の民俗学」の中で犯罪者のいれずみの集計から「女の名」、「人物」に次いで、215人中29名で「桃」が三番目に多かったとの報告を収載しています。
「女の名」や、水滸伝などの豪傑などの「人物」が好まれることは容易に想像がつきますが、可愛らしい「桃」の図柄が好まれていたとは正直意外でした。
では、なぜ
桃が好まれたのでしょうか?
生命力と魔除けの呪力
「桃栗三年柿八年」とあるように、桃の生長は早く、枝葉もよく茂り、短期間で驚くほど多数の実をつける。その生命力への驚異から、古代の中国人は桃の木に邪悪なものをしりぞける役割を与えたという。桃の木を鬼が恐れるとする観念は普代まで確実にあった。
回春の霊力
一般的には桃太郎は川上から流れてきた大きな桃から生まれるが、江戸期の絵巻物などでは、「流れてきた小さな桃を食べた老婆が、その場でたちどころに若返り、爺さんもまた恩恵にあずかる。かくして再生した夫婦から生まれた男の子」が桃太郎である。
以上のように、我々アジア人は桃に対して無意識に「呪力」を感じているのでしょう。もしかするとDNAに刷り込まれているのかもしれません。
ワンポイントの刺青ひとつで、桃太郎から仙女・西王母伝説まで語れるものは他に無いかもしれませんね!
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刺青の人体標本 「東京慈恵会医科大学の標本」
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刺青 女 画像「西尾善次氏の妻女」
刺青 画像「局部タトゥー」
太陽の座談会の記事で「桃の刺青」が話題に上がっていたので、その存在は以前から知っていましたが、施術中の画像は腕時計に隠れていたり画像サイズが小さく絵柄が判別できないものばかりでした。
今回 とうとう彫文師の「桃の刺青」を確認することができました。
太陽 1973 1 no.115 座談会 文身を語る より引用
江国 滋(評論家)
山田さん、左手首に桃かなんか、それは自分でやったんですか?
山田 文三(初代彫文)
自分で。これにはもういろいろあるんだけどね。
Wikipediaによると、幕末の侠客、柳川熊吉の系譜を引き継いだ森田常吉の一門は、手首に揃いの「桃の刺青」をいれていたとされる とのことですが、なんらかの関わりがあったのでしょうか?
※柳川熊吉1825年(文政8) - 1913年(大正2) は浅草の料亭の息子として生まれ、浅草の火消しを担当した「を組」の侠客・新門辰五郎の配下だったとも言われます。
函館繁栄の礎を支えた偉人⑥柳川熊吉
桃は墨一色の濃淡で彫られているようです。
デザインは、文身百姿に掲載されているものと同じように見えます。
左: 初代彫文師 浪切張順:初代彫宇之作
右: 天人:三代目彫宇之作
Burst vol.51 より
二代目の腰に朱を刺し直す初代彫文師 腕時計で桃の刺青が隠れています。
NATURAL HISTORY (DECEMBER 1973) より
桃の刺青について
『 文身百姿 』、『 艶麗 』、『 いれずみの文化誌 』 に
解説がありましたのでご紹介します。
『 文身百姿 』 玉林 晴朗 (著) 文身の図柄と型 寓意的の文身 より
信仰の程度を越した「迷信」の文身には渡邊綱の紋(1)、或は桃太郎の意味で桃の図(2)等を腕に彫る者が沢山ある。 これは、両種とも鬼退治を利かして魔除の意である。
又同じ魔除の意味で蛇とか鯉を彫る人もあり、客を沢山はさんで繁盛するようにと私娼が蟹を彫り、芸者とか待合の女将が狐を彫り、女の厄年を無事に越す為腕に墓を彫り、子供を望む人が苅萱を彫る等色々の迷信がある。
又「愛着」の意から魚屋だと魚を彫り、芸者だと三味線なり撥なりを彫り、騎士が馬を彫り、犬好きが犬を彫り、納札趣味者が千社札を彫り、水夫が錨を彫り、鳶が纏を彫る等の例も随分ある。
(3)博徒が賽(サイコロ)を彫る事は賭博を禁じた誓いに彫る事もあるが、又これが愛着の意からも随分彫る。(中略)必ず半目の方のみを出す。 従って裏側の見えない方へ全部丁目が隠れて居る訳である。
下岡蓮杖撮影 飛脚屋のサイコロの刺青
幕末明治古写真帖 より
『 艶麗 』 創刊記念いれずみ大特輯号 迷信と愛着の刺青 青山三郎 (著)より
こんな小型の刺青をよくお風呂などでごらんになるでしょう。 これは迷信と愛着の部類に入るもので右の端は渡邊綱の紋です。
次は桃太郎の旗印です。これはともに鬼退治した強い者の印を入れて魔除け、厄年のがれを意味するものである。
同じ魔除けでも蛇とか鯉を彫る人もある。蛇は無敵、鯉は強い男とか金太郎を意味するものである。公娼の腕に蟹を彫っている者が多い。これは客を沢山ハサミ取る意味である。
『 いれずみの文化誌 』 小野 友道・著
第三話 桃のいれずみ 霊力、性そして龍 より
日本人のいれずみの図柄としてよく選ばれるものの一つに「桃の実」があったといいます。磯川全次は「刺青の民俗学」の中で犯罪者のいれずみの集計から「女の名」、「人物」に次いで、215人中29名で「桃」が三番目に多かったとの報告を収載しています。
「女の名」や、水滸伝などの豪傑などの「人物」が好まれることは容易に想像がつきますが、可愛らしい「桃」の図柄が好まれていたとは正直意外でした。
では、なぜ
桃が好まれたのでしょうか?
生命力と魔除けの呪力
「桃栗三年柿八年」とあるように、桃の生長は早く、枝葉もよく茂り、短期間で驚くほど多数の実をつける。その生命力への驚異から、古代の中国人は桃の木に邪悪なものをしりぞける役割を与えたという。桃の木を鬼が恐れるとする観念は普代まで確実にあった。
回春の霊力
一般的には桃太郎は川上から流れてきた大きな桃から生まれるが、江戸期の絵巻物などでは、「流れてきた小さな桃を食べた老婆が、その場でたちどころに若返り、爺さんもまた恩恵にあずかる。かくして再生した夫婦から生まれた男の子」が桃太郎である。
以上のように、我々アジア人は桃に対して無意識に「呪力」を感じているのでしょう。もしかするとDNAに刷り込まれているのかもしれません。
ワンポイントの刺青ひとつで、桃太郎から仙女・西王母伝説まで語れるものは他に無いかもしれませんね!
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刺青 画像「局部タトゥー」