刺青写真「復古調ゲイジュツ」
今回はリクエストにお答えして、1952年に発行されたアサヒグラフ5月14日号の記事「復古調ゲイジュツ」に掲載された男女の刺青写真をご紹介します。
1936年に発行された「文身百姿」に紹介されていた方もいらっしゃいますので、見比べてみると面白いですね。
■アサヒグラフ 1952年5月14日号
玉石鏡(19) 復古調ゲイジュツ
講和の発行で、日本も益々旧に復しますについては、辰年にちなみ、昇天の気を現わす龍を主題の、刺青(ホリモノ)群像をお見せしたい。
ちかごろ、掌大のホリ賃で四百円也の高値、背中一面仕上げるには軽く八万円はかかろうという。まさに金と暇とそれと苦痛に耐える力、三拍子揃わないと成立しない筈だが、押すな押すなの盛況とあっては同好の士も多いもの。人肌から人肌へ刺青師の執念伝える わが国独特のこのゲイジュツは、日本を訪れる外人の探索癖を、怪奇な美しさで、十二分に満足しているようでもございます。
※アサヒグラフとは、1923年創刊-2000年休刊となった朝日新聞社刊行の写真を主体としたグラフ雑誌です。
まず、実名で堂々と写真を掲載していることに驚かされますが、当時は刺青に対して現在のように否定的な報道はなされていなかったためだと思われます。 文中でも"わが国独特のゲイジュツ"と評していますし、刺青の痛みに打ち勝つことが精神修養につながると捉えられていた印象を受けます。
また、1948(昭和23)年には1872(明治2)年から74年間続いた刺青の取締りが、占領国アメリカからの圧力で廃止されたことへの開放感、 日本に駐留していたアメリカ人水兵がこぞって横浜で日本の刺青を入れていたこと などが影響していたのでしょう。
■笹岡夫妻
このご夫婦は当時有名だったようで「文身百姿」にも写真が掲載されています。
また「武蔵野28巻9号 東葛田中村大室の盆綱引き」の口絵にも、夫妻の刺青姿が掲載されているそうです。
氏名: (夫)笹岡 勝次郎さん 85歳
職業: 無職 ※元下谷大門町の鳶頭
図柄: 背:一匹龍 両腕:昇り降り龍 腹:金太郎とうわばみ 首:男女の生首
彫師: 彫金
動機: 鳶職だったから
彫り初めの年齢: 24歳
刺青談義: 三年位 刺青勝の仇名で呼ばれる

氏名: (妻)笹岡 妙さん 65歳
職業: 無職
図柄: 背:雄雌の龍二匹 肩と腕:牡丹に唐獅子
彫師: 彫五郎
動機: 夫に対抗して
彫り初めの年齢: 47歳
刺青談義: 半年の間毎日彫りつづけ 刺青師が辛抱強いのに逆に音をあげた

■小川親子
氏名: (父)小川 善太郎さん 61歳
職業: 鳶職
図柄: 背:自雷也と大蛇 腕:昇り降り龍 右肩の龍の顔が特徴
彫師: 二代目彫宇之
動機: 仕事上
彫り初めの年齢: 16歳
刺青談義: 仕上げまで何人か刺青師が死んで昨年までかかった

氏名: (息子)小川 高久さん 23歳
職業: 鳶職
図柄: 背:雲竜九郎 両腕:昇り降り龍
彫師: 二代目彫宇之
動機: なんとなく
彫り初めの年齢: 21歳
刺青談義:一年かからず 「我慢と彫の立派なのに親も気が負ける」と父 善太郎氏

氏名: 山田 重雄さん 49歳
職業: 漁業
図柄: 背:上向きの飛龍
彫師: 初代彫宇之
動機: 祭礼用
彫り初めの年齢: 20歳
刺青談義: 兵役検査前後三年位
スジ彫(線描き)でもボカシでも生やさしい辛抱でできるものではない

氏名: 渡辺 国太郎さん 41歳
職業: 魚商
図柄: 背・両腕: 飛龍一匹づつ
彫師: 二代目彫宇之
動機: 祭礼用
彫り初めの年齢: 19歳
刺青談義: 二年半 彫ったあとの皮膚がこわばり手があがらなかった

氏名: 小関 一さん 54歳
職業: 江戸消防記念会
図柄: 背:一匹龍 腕:菊水
彫師: 初代彫宇之
動機: 兄貴株が羨しくて
彫り初めの年齢: 17歳
刺青談義:丸二年 今日はおマケだよなどと刺青師に云われると身がすくむ思い

氏名: 白石 覚さん 40歳
職業: スレート業
図柄: 背:九紋龍史進 両腕:昇り降り龍
彫師: 二代目彫宇之
動機: 気が短いのを我慢する為
彫り初めの年齢: 17歳
刺青談義: 毎日続けて仕上りは四十日 その結果腹にゆとりが出来た

氏名: 天方 寅吉さん 51歳
職業: 針製造業
図柄: 背:妲己のお百 胸:南無妙法蓮華経と昇り降り龍
彫師: 初代彫宇之
動機: 他人のを見て
彫り初めの年齢: 19歳
刺青談義: 二年位 水兵のとき元某官の前でよく裸にされた

氏名: 高橋 新吉さん 53歳
職業: 魚商
図柄: 背:九紋龍 胸:飛龍
彫師: 彫金
動機: 土地柄 祭礼用
彫り初めの年齢: 15歳
刺青談義: 二年半位 近頃のは見た眼にはよいが遠目には勢が弱い

氏名: 高橋 仙太郎さん 54歳
職業: 大工職
図柄: 背:玉取姫と龍
彫師: 二代目彫宇之
動機: 行動を慎重にするため
彫り初めの年齢: 21歳
刺青談義: 一年 商売敵にマークされないよう銭湯も遠くで何度も変えた

【参考文献・資料】
驚きの大仏柄スカジャンを見つけちゃいました!
東洋エンタープライズの創立40周年記念モデルとして作られた、スペシャルエディションのスカジャン「Great Buddha 」が凄い!
胸と背中に大胆に刺繍された「大仏」に度肝を抜かれますが、1950年代に実際に販売されていた製品を、生地・刺繍・染め・リブ・ファスナーに至るまで すべて忠実に復刻したものなんだそうです。
なんと値段も50%offとかなり安くなってます。
しかし、Mサイズはすでに売り切れ…
※SとLサイズだったら、まだ少し残ってるようですよ!
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1936年に発行された「文身百姿」に紹介されていた方もいらっしゃいますので、見比べてみると面白いですね。
■アサヒグラフ 1952年5月14日号
玉石鏡(19) 復古調ゲイジュツ
講和の発行で、日本も益々旧に復しますについては、辰年にちなみ、昇天の気を現わす龍を主題の、刺青(ホリモノ)群像をお見せしたい。
ちかごろ、掌大のホリ賃で四百円也の高値、背中一面仕上げるには軽く八万円はかかろうという。まさに金と暇とそれと苦痛に耐える力、三拍子揃わないと成立しない筈だが、押すな押すなの盛況とあっては同好の士も多いもの。人肌から人肌へ刺青師の執念伝える わが国独特のこのゲイジュツは、日本を訪れる外人の探索癖を、怪奇な美しさで、十二分に満足しているようでもございます。
※アサヒグラフとは、1923年創刊-2000年休刊となった朝日新聞社刊行の写真を主体としたグラフ雑誌です。
まず、実名で堂々と写真を掲載していることに驚かされますが、当時は刺青に対して現在のように否定的な報道はなされていなかったためだと思われます。 文中でも"わが国独特のゲイジュツ"と評していますし、刺青の痛みに打ち勝つことが精神修養につながると捉えられていた印象を受けます。
また、1948(昭和23)年には1872(明治2)年から74年間続いた刺青の取締りが、占領国アメリカからの圧力で廃止されたことへの開放感、 日本に駐留していたアメリカ人水兵がこぞって横浜で日本の刺青を入れていたこと などが影響していたのでしょう。
■笹岡夫妻
このご夫婦は当時有名だったようで「文身百姿」にも写真が掲載されています。
また「武蔵野28巻9号 東葛田中村大室の盆綱引き」の口絵にも、夫妻の刺青姿が掲載されているそうです。
氏名: (夫)笹岡 勝次郎さん 85歳
職業: 無職 ※元下谷大門町の鳶頭
図柄: 背:一匹龍 両腕:昇り降り龍 腹:金太郎とうわばみ 首:男女の生首
彫師: 彫金
動機: 鳶職だったから
彫り初めの年齢: 24歳
刺青談義: 三年位 刺青勝の仇名で呼ばれる

氏名: (妻)笹岡 妙さん 65歳
職業: 無職
図柄: 背:雄雌の龍二匹 肩と腕:牡丹に唐獅子
彫師: 彫五郎
動機: 夫に対抗して
彫り初めの年齢: 47歳
刺青談義: 半年の間毎日彫りつづけ 刺青師が辛抱強いのに逆に音をあげた

■小川親子
氏名: (父)小川 善太郎さん 61歳
職業: 鳶職
図柄: 背:自雷也と大蛇 腕:昇り降り龍 右肩の龍の顔が特徴
彫師: 二代目彫宇之
動機: 仕事上
彫り初めの年齢: 16歳
刺青談義: 仕上げまで何人か刺青師が死んで昨年までかかった

氏名: (息子)小川 高久さん 23歳
職業: 鳶職
図柄: 背:雲竜九郎 両腕:昇り降り龍
彫師: 二代目彫宇之
動機: なんとなく
彫り初めの年齢: 21歳
刺青談義:一年かからず 「我慢と彫の立派なのに親も気が負ける」と父 善太郎氏

氏名: 山田 重雄さん 49歳
職業: 漁業
図柄: 背:上向きの飛龍
彫師: 初代彫宇之
動機: 祭礼用
彫り初めの年齢: 20歳
刺青談義: 兵役検査前後三年位
スジ彫(線描き)でもボカシでも生やさしい辛抱でできるものではない

氏名: 渡辺 国太郎さん 41歳
職業: 魚商
図柄: 背・両腕: 飛龍一匹づつ
彫師: 二代目彫宇之
動機: 祭礼用
彫り初めの年齢: 19歳
刺青談義: 二年半 彫ったあとの皮膚がこわばり手があがらなかった

氏名: 小関 一さん 54歳
職業: 江戸消防記念会
図柄: 背:一匹龍 腕:菊水
彫師: 初代彫宇之
動機: 兄貴株が羨しくて
彫り初めの年齢: 17歳
刺青談義:丸二年 今日はおマケだよなどと刺青師に云われると身がすくむ思い

氏名: 白石 覚さん 40歳
職業: スレート業
図柄: 背:九紋龍史進 両腕:昇り降り龍
彫師: 二代目彫宇之
動機: 気が短いのを我慢する為
彫り初めの年齢: 17歳
刺青談義: 毎日続けて仕上りは四十日 その結果腹にゆとりが出来た

氏名: 天方 寅吉さん 51歳
職業: 針製造業
図柄: 背:妲己のお百 胸:南無妙法蓮華経と昇り降り龍
彫師: 初代彫宇之
動機: 他人のを見て
彫り初めの年齢: 19歳
刺青談義: 二年位 水兵のとき元某官の前でよく裸にされた

氏名: 高橋 新吉さん 53歳
職業: 魚商
図柄: 背:九紋龍 胸:飛龍
彫師: 彫金
動機: 土地柄 祭礼用
彫り初めの年齢: 15歳
刺青談義: 二年半位 近頃のは見た眼にはよいが遠目には勢が弱い

氏名: 高橋 仙太郎さん 54歳
職業: 大工職
図柄: 背:玉取姫と龍
彫師: 二代目彫宇之
動機: 行動を慎重にするため
彫り初めの年齢: 21歳
刺青談義: 一年 商売敵にマークされないよう銭湯も遠くで何度も変えた

【参考文献・資料】
- 文身百姿 (1956年)/玉林晴朗
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- イレズミの世界/河出書房新社
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- いれずみの文化誌/河出書房新社
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驚きの大仏柄スカジャンを見つけちゃいました!
東洋エンタープライズの創立40周年記念モデルとして作られた、スペシャルエディションのスカジャン「Great Buddha 」が凄い!
胸と背中に大胆に刺繍された「大仏」に度肝を抜かれますが、1950年代に実際に販売されていた製品を、生地・刺繍・染め・リブ・ファスナーに至るまで すべて忠実に復刻したものなんだそうです。
なんと値段も50%offとかなり安くなってます。
しかし、Mサイズはすでに売り切れ…
※SとLサイズだったら、まだ少し残ってるようですよ!

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