『続・刺青の人体標本 「皮の提供者」』

前回の刺青の人体標本「皮の提供者」 では「初代彫宇之」氏が手がけた有名な一枚般若（背中いっぱいに般若の顔面を大写ししたもの）の刺青皮の献体者「滝さん」 をご紹介しましたが、今回は四代目鶴屋南北作の歌舞伎狂言『桜姫東文章』に登場する「桜姫と清玄」を彫った刺青皮の提供者「M.T.」氏(77歳男性)をご紹介します。

1931年(昭和6年)に南山堂書店から発行された、東京帝国大学皮膚科教授 土肥慶蔵(1866-1931)・遠山郁三(1877-1951)著「彩色皮膚病図譜」に、「M.T.」氏が1919年(大正8)に皮膚科を受診した際の生前の姿と、死後 福士政一博士(1878-1956)によって刺青標本とされた姿が掲載されています。

この書籍は、国立国会図書館HPの「近代デジタルライブラリー」で無料で読むことができるんですよ！
「彩色皮膚病図譜」⇒「彩色皮膚病図譜　中巻，下巻（第１，３，４帙）」⇒「本文をみる［第2冊］下巻(第1帙)」という順で検索すると、文身に関する記述の本文画像を見ることができます！

さらに、河出書房新社発行の小野友道著「いれずみの文化誌」の「東大のいれずみ標本」の章には、「M.T.」氏の献体のいきさつ、刺青の題材『桜姫東文章』や、福士政一博士を題材に書かれた刺青標本にまつわる小説について詳しく解説されています。

いれずみの文化誌/小野友道

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国立国会図書館近代デジタルライブラリー
彩色皮膚病図譜［第2冊］下巻(第1帙)より

頭部にできた皮膚癌がもとで亡くなった「M.T.」氏(77歳男性)
皮膚科を受診した理由は、刺青とは全く無関係だったそうです。

解説によると左腕に綱手姫、右腕に大蛇丸の刺青、児雷也とヒキガエルは未完成。

クリックで拡大します。

「彩色皮膚病図譜」と同じ土肥慶蔵氏による『日本皮膚病黴毒図譜』1903年（明治36）発行にも刺青の挿絵が描かれています。

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