Twitterでお知らせくださる方があり、急ぎ注文したのでした。
驚くやら、感謝するやら、冷や汗かくやら。
どうぞお近くの書店にて。
一点だけ、私から事実を書かせていただきます。
三浦先生が特に取り上げてくださった、熊本城大天守の忍び返しですが、正確に言うと、私が最初に発見したわけではありません。
熊本城の古写真には、富田紘一先生の先行研究があります。私も古写真観察の手法は、富田先生に大きな影響を受けています。
肥後上代文化研究会発行の『古写真に探る 熊本城と城下町』(富田紘一・著)がそれで、富田先生は「古写真考古学」の手法で、古写真をつぶさに観察して、その撮影年代を絞り込む成果を纏めておられます。
この本の中の、数寄屋丸から撮影された大小天守の観察を描写した本文内に、大天守の忍び返しへの言及があります(同書p15)。
ただ、私が拙著で取り上げた冨重利平の宇土櫓からの写真に忍び返しの影があることは、これまで発行された書籍においてはどなたの指摘も無かったと思います。
前掲書は全国に発売されたものではありませんので、正確に言うならば、全国発売の書籍で、冨重利平の宇土櫓からの大小天守の写真の中に、忍び返しの影が写っていることを、その部分を拡大して特に取り上げたのは、私が最初かもしれません。
この写真は日本橋高島屋での展覧会の折に、壁面いっぱいに拡大して展示してありましたので、そこで見つけられた方もおられたと思います。
新発見はかなりあるのですが、本の編集過程で、キャプションの文字数に限りがあったことと、専門書ではないため、最後に参考文献をまとめて掲載する方針を取ったため、どれが新発見か分かりにくいことになってしまいました。
しかしながら、新発見云々は別として、熊本城の古写真はその後も新たなものが出ていますので、おっしゃっていただいたように、確かに、熊本城の古写真を本丸全体に渡ってあれほど細かく観察して、建物の形状復元の視点から分析したのは他に例が無いと思います。
模型を作るためには、例えばある一面の壁についても、窓はいくつ、どの場所に、どんな幅で、どの高さに、ということをはっきりさせないと作れないわけなので、自ずと古写真を細部まで分析することになります。模型製作の副産物として、古写真分析はあるのです。さらに言うと古写真を分析するには、遺構(石垣)や古絵図も参照しないといけないので、各種資料をまたいだ総合的な分析が必要になります。逆に言うと、城郭の総合的な分析をするためには模型に起こすのが最適とも言えるかもしれません。
いずれにせよ、実際に建物を復元するという場合を除いて、城郭研究においての古写真研究は実はまだまだ進んでいないのが現状で、城郭古写真を集成した本の中で古写真の重要性と新発見の可能性を指摘して下さったことは、大変嬉しく思います。
お礼のお手紙書かなきゃ。