第283部隊、彼が所属していた部隊であった。あの悪名高い細菌戦部隊の731部隊のほかにも数多くの部隊が中国の東北部に集中して存在していた。それらの部隊では何の罪も無い中国人が裁きも無いままに特別移送扱いと称して連行され死刑宣告を受けたのだった。彼らはマルタと呼ばれ人体実験を繰り返されていた。マルタとはそう、丸太棒と言う意味だった。健二は美墨と言う助手と共に危険な研究をしていた。
「マルタを連れてきてください。」美墨は研究員に指示をした。そのマルタはすでに舌を抜かれ言葉を発する事も出来ない状態であった。美墨はマルタに加速器と呼ばれるヘルメットの様な物を装着した。「それでは実験1567開始する。」健二は実験室の隣のガラス張りになった司令室から実験の開始を告げた。「ウィーン・・・・・ウィーン」と言う低い周波数のかすかな音が徐々に大きくなり、そのマルタは次第に小刻みに震えだした。強固な椅子に縛り付けられてはいたのだが、最後にはその椅子がガタガタと言う大きな音を立てる位にマルタは苦しみもがき暴れた。ウィーン・・・ウィーンと言う音も耳を覆いたくなる位に部屋中に響きわたりマルタは泡を吹いてグッタリとしてしまった。マルタは完全に死亡していた。健二はガックリとうなだれ、美墨に言った。「しばらく休憩だ、ちょっと一緒に来てくれないか?」「判りました。」美墨はそう答え研究着を脱いだ。二人は司令室を出て、研究棟の中庭に出た。
愛娘のなぎさはスースーといびきをかき静かに眠っていた。健二はなぎさを少し強く抱きしめた。この瞬間が永遠に続くことを祈った。同時に健二はいつも父親の事を思った。健二の父親は健二と同じく研究者であった。忙しい父親であった為、彼には父親の記憶がほとんど無かった。父親は自分を同じように抱きしめてくれたのだろうか?いつもその事が脳裏を横切った・・・健二が生きたその時代はちょうど世界が大きく変わり始めた頃であった。彼が住んでいた中国においてもソ連が覇権の手を伸ばし始めており日本はソ連との戦争を避けることが出来ないだろうと人々は思い始めていた。健二は日本軍の特殊な研究機関に所属していた。この研究機関の存在を知る者は軍部でもほんの数人しかいなかった。彼が研究をしていたのは四次元宇宙の研究であった。日本軍は四次元宇宙を支配することでこの三次元の世界を支配できると考えていた。研究はなかなか思うようには進まなかった。毎日が失敗の連続であった。研究が行き詰った時は特になぎさとのこの瞬間が一番心が和む時であった。できることならば、この瞬間を永遠に生きたいと考えていた。そして父親に直接、こう聞きたかった。自分がなぎさを愛している様に自分を愛してくれていたのかどうか? 時を遡って・・・・
「それは、生まれ変わりのプログラムを奴らが操作すると言うことです。奴らに都合の良い人間だけを残しそれ以外の人間は生まれ変わりをさせないプログラムだと言われています。」「何か分からないけど困るんだ?」琢磨は早足で歩いているせいか少し息切れをしていた。また、由美から預かった小型のピストルがポケットの中にありそれが気になってしょうが無かった。大通りには大勢の人が行き来しており、この中には間違いなく奴らもいるに違いなかった。
10分ほど歩いただろうか?由美が言った。「着きました。ここがセントラルです。」そのビルはガラス張りの30階建て位のビルだった。太陽の光にまばゆく輝いていた「ここからが本番です。」和美たちに緊張感が走った。