健二は講義が終わり、大講堂を出た。やわらかい日差しが気持ち良く、次の講義まで時間があったので、中央芝生と呼ばれる庭園で横になって休憩をしようと庭園に向かっていた。その時、背後から声をかけられた。黒いスーツの男だった。「丹羽教授、講義を聞かせて頂きましたよ、研究も順調の様ですね。」「誰だね君は?うちの生徒ではないね・・・どんな用件なのかね?」健二は不意に現れた気味の悪いこの男が自分のこれからの人生をまた大きく変える事になろうかとは想像もできなかった。「丹羽教授、フィッシャーマンと言う人物をご存知ですか?」その男は唐突にこう切り出した。健二にはまったく聞いた事もない名前であった。「いや、聞いたことない名前だが・・」「そのフィッシャーマンと言う人物はドイツの「狼の巣」と呼ばれる中央司令室の地下300mに作られた研究所の所長であの有名なフォン・ブラウンの右腕と呼ばれている科学者です。もともとは心理学者なのですが、アインシュタインの相対性理論を発展させ、次元を超える研究をしていたんです。」健二はあまりにも唐突な話で驚きを隠せなかった。日本とドイツはこの分野で共同開発を行っていたわけだから当然、健二が知っていないとおかしい話ではあったがフィッシャーマンと言う名前は初めて聞く名前だったからだ。ドイツは日本にすべてを教えていた訳ではなかったのか?この男はいったい何者なのか?「君はいったい何者なんだ?」その男はこう答えた。「国の内閣官房室に作られた特殊機関に所属しています、原田と言います。」その男はそう言うと名刺を差し出した。確かに内閣官房室と書かれていたが健二にはにわかに信じる事はできなかった。「是非、お話をしたいことがあります。都合のよろしい時に内閣官房室にお越しください。待っていますこの事は丹羽教授の一番知りたい事だと思いますよ。」男はまたニヤリと笑いスッと健二に背を向けて去っていった。「狼の巣・・・フォン・ブラウン・・」何かとても、恐ろしいことに巻き込まれそうなイヤな予感がした。しかしフィッシャーマンと言う人物はどこまで次元宇宙を解明したのか?春の青い空にサクラが舞っていた。