愛娘のなぎさはスースーといびきをかき静かに眠っていた。健二はなぎさを少し強く抱きしめた。この瞬間が永遠に続くことを祈った。同時に健二はいつも父親の事を思った。健二の父親は健二と同じく研究者であった。忙しい父親であった為、彼には父親の記憶がほとんど無かった。父親は自分を同じように抱きしめてくれたのだろうか?いつもその事が脳裏を横切った・・・健二が生きたその時代はちょうど世界が大きく変わり始めた頃であった。彼が住んでいた中国においてもソ連が覇権の手を伸ばし始めており日本はソ連との戦争を避けることが出来ないだろうと人々は思い始めていた。健二は日本軍の特殊な研究機関に所属していた。この研究機関の存在を知る者は軍部でもほんの数人しかいなかった。彼が研究をしていたのは四次元宇宙の研究であった。日本軍は四次元宇宙を支配することでこの三次元の世界を支配できると考えていた。研究はなかなか思うようには進まなかった。毎日が失敗の連続であった。研究が行き詰った時は特になぎさとのこの瞬間が一番心が和む時であった。できることならば、この瞬間を永遠に生きたいと考えていた。そして父親に直接、こう聞きたかった。自分がなぎさを愛している様に自分を愛してくれていたのかどうか? 時を遡って・・・・