『いわさきちひろ～２７歳の旅立ち』

画家・いわさきちひろさんのドキュメンタリー映画。いわさきちひろさんの人生を追いながら、黒柳徹子さんや高畑勲監督など著名人が、いわさきさんの作品について語る。

まず冒頭の２０代の頃の自画像が、めっちゃ暗い…。そこから暗黒の２０代を振り返ります。画家になるという夢を両親に反対され、望まぬ結婚、戦争、大連での貧しい生活、夫の自殺、引き揚げ、敗戦…。あの美しい絵からは想像もつかないタフな人生。そしてすべてを捨てて上京したのが２７歳。

商品のポスターなどの下積みを経て、ようやく雑誌や絵本の挿絵の仕事ができるようになるも、当時は挿絵画家の地位は低く、描いた絵は勝手にハサミで切られるわ、返却されないわで、著作権を訴えたところ仕事が激減。仲間の画家たちと声をあげ、挿絵画家の権利を勝ち取ってきたいわさきさん。うーむ、今ではイラストの著作権とか当たり前だけど、その基盤がいわさきさんから始まっていたのですね。

そしてあの名作絵本『戦火のなかの子どもたち』の創作秘話へ。駆け出しの頃、社会運動を描くには甘すぎるといわれた作風。それでもベトナム戦争がはじまったとき、いわさきさんは、空襲から必死で逃げて逃げて生き延びた幼少期を思い出し、ちょうどそのときガンと闘病していたんだけど、これを描かずにはいられなかったという。で、これが生前最後の絵本になった。

このような闇を養分に、あの美しい絵が結実したのであるなあ、というのを垣間見た思い。