1974年公開の日本映画。

 

なんとも、気が滅入るような映画だった。1900年代初め、口減らしと外貨獲得のために、天草から東南アジアに売り飛ばされ、売春婦として働かされた、からゆきさんという人たちがいた。その一人、おサキさんの語りを書き取った、山崎朋子さんのノンフィクションが原作になっている。

 

ブローカーが娼館のことを本人たちには隠して連れて行き、借金漬けにして逃げられないようにするなんて、昨今の悪名高い外国人技能実習生の実態と変わんないじゃん。。。

 

で、ちょっと日本が豊かになってきて、国際的にも地位があがってきたら、今まで喜んで通ってた男たちまでが「日本の恥さらし」とかいって一斉にバッシング。娼館は廃業へ。そんなだから、歴史的になかったことにされていた事実。それをこのノンフィクションは日本に、世界に知らしめることになったという。

 

この話をしてくれた、田中絹代演じるところのおサキさん。こんな暗くて重くて悲しい経験をしてなお、人のために祈れるような、損なわれない人間の最後の思いやりに圧倒される。ちょっと映画のために美化されてないかな?と思うのは、原作者が、素性を隠して潜入取材するんだけど、最後にそれを打ち明けるとき、本当はおサキさん、怒ったりとかしたんじゃないかなぁ。これは原作のほうも読んでみよう。

 

おサキさんの話を聞いたあと、からゆきさんたちのお墓があるというボルネオ島へ、原作者は出かけてゆく。ジャングルのなかで発見した、荒廃した墓地で、すべての墓が日本に背をむけて建てられていたというくだりは、もうなんといってよいのか、言葉も見つからない。

 

それで、田中絹代の演技がすごかった。どことなくコミカルで笑っちゃうし、顔の筋肉がどうなってるのか、ものすごーーーーく細やかな表情をする。この演技で、ベルリン国際映画賞銀熊賞(最優秀主演女優賞)っていうのも、さもありなん。




 

 

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●文庫でました