中沢啓治さんの伝説のマンガをようやく読み始めました。

舞台は昭和20年4月の広島。中岡さんちのゲンくんは、父親が戦争に反対しているために近所や学校で非国民扱いを受けていた。その描写が、少年マンガだからってまったく容赦ないので、もう日本人が嫌いになりそうなトラウママンガ…。でも描かねばならんのじゃ、という中沢さんの覚悟に応答して、しんどいけど最後まで読む。

ゲンくんは困っている人は一も二もなく助けるくらいにまっすぐで、でもまっすぐだからこそ、理不尽な暴力には感情のまま仕返しもすれば、どっかで聞いた朝鮮の人たちへの差別の言葉も、素直にそのままマネしてしまうんですよね(そしてお父さんに殴られる)。ということは、もしも、ゲンくんのお父さんが戦争賛成で差別主義者だったら、ゲンくんも素直に戦争賛成の差別主義者になっていたんじゃないだろうか。教育の責任って重大…。

このゲンくんのお父さんは、死ぬまで戦争に反対しつづけ、「ひとにぎりの金持ちがもうけるため国民のわしらになにひとつ相談もなくかってにはじめたのだ。なにがお国のためじゃ」といって、最後は原爆で死んでいく。もう、いろんなエピソードから、国は国民を守るつもりなんかはじめからなかったんじゃ…、としか思えない。

でもそれって、昔の話っていえるか? コロナ禍も、原発事故も、水俣病も、足尾銅山も、結局一部の人たちの私利私欲のために、力を持たない人たちの命がほったらかしにされるのって、同じ構図じゃないか? だからあとから騙されたって文句いう前に、いったん疑うのって、必要なことじゃないか?

最近好きなキング牧師の言葉で、「世界の救済は、不順応にかかっている」(『それで君の声はどこにあるんだ?』より)っていうのがあるんだけど、世間のほうがおかしいと思うとき、いつまで不順応でいられるか、それは戦後でもいろんな場面で試されるなぁ。自分は、最後から何番目の不順応者でいられるんだろうか…という問いを突きつけてくるマンガ。しんど…。でもやっぱり読む。

 

 




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