『ペスト』

言わずとしれたカミュの代表作。カミュは『異邦人』が好きで、こちらはいつか読もうと思ってた本。このコロナ禍で積ん読しといたのを、ついに読みました。

194*年、フランス領オランで発生したペストが、準備のできていない人々の日常をゴリゴリと浸食し、そして解決…しない（笑）。人々はただ翻弄され、ペストが去ったことに安堵して喜ぶけど、誰かが解決したわけじゃなくて、なぜか突然去るんです。でもその性質上、また必ずやってくる、そのとき私たちはどうする？という問いだけを残して終わる。怖！ペストが何のメタファーかというのはいろいろ言われているけど、なぜか突然やってきて、なぜか突然去って行く、これはたしかに戦争にも似た不条理現象…。人間にはじめる／終えるという選択肢はないのだよ、と。

そして不条理ぶちあたったときの人間の行動パターンって、たしかにある程度分類できるかもしれないですね。みなさんは誰がいちばん好きですか？私はグラン、ぜったいこの人。医者でもない聖職者でもない、すごいフツーの小役人なんですよ。趣味で小説とか書いて、ちまちま生きてるんですよ。それでいて、自発的に組織された保健隊に参加するんです。この人の仕事は、ペストが終わったとき誰にも顧みられないし、褒められもしない、だけど不条理な状況でも想像力を持ち、自分にできることをただ淡々とやる、一市民にいちばんできるモデルロールはこれじゃないかと思う。

いや～でも私は『異邦人』のほうが好きかな～。それは若いからだろうか？10年後くらいにまた読み返して、自分がどう思うのか楽しみな小説。