私はめんどくさい人が好きなのだと思う。自分で自分のめんどくささを持て余して、どうしようもなくて人に押し付けたりして、でもそうしないと生きていけない人たちが、少数だけどたしかに生息している。

 

この小説の主人公、明日香も超絶めんどくさい。彼氏と別れ話の末に大喧嘩、腹いせに酒とクスリのオーバードーズで精神病院に担ぎ込まれ。ほんと、人間として終わってる。終わってる街道の袋小路が閉鎖病棟。でも明日香は最後に、自分のめんどくささを自分で引き受ける覚悟を決めるのです。

 

私がダメ人間を見て感じるのは劣等感です。私など、自分で飼い慣らせるくらいの微々たるめんどくささしか持ち合わせていないのに…と嫉妬に狂います。競うとこ間違ってるかもしれないが、私にとってはこの小説の登場人物が全員、自分よりも上等に見えます。「あっち側」の人たちに比べたら、「こっち側」の自分は、よっぽど自分で自分の世話ができているし、誰にも迷惑かけてないのに、ぜんぜん優越感とか感じないもんね。そんなに派手にフツーからはみ出られるなんてまじすげー。

 

あ、私も20代で隠居してるんだから、地味にはみ出てるか。いま虚栄心が満たされました。

 

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