魏德聖監督の台湾映画。

 第一部「太陽旗」と第二部「虹の橋」、合わせて4時間超えの超大作。しかも宇多丸さんが2013年ベスト1に挙げていたやつ。元気のあるときに…と思っていて、外出自粛のこの際にやっと観れました。

 時は日本統治時代の台湾。南投・霧社で起きた、日本支配に対する原住民の蜂起、それに関わった人々を描く。

日本統治をよく思わない原住民、共生しようとする原住民、原住民を理解しようとする日本人、原住民を見下している日本人。いろんな立場の人をなるべく偏りないバランスで取り上げつつ、あの状況で絶対に勝てるわけがなかった原住民たちにスポットを当て続けるところに最後まで好感。語られることのなかった人々に寄り添ってこそ、映画なのであるなあ。

なんといっても第一部の前半、青年期のモーナ(マヘボ族の頭目)を演じる大慶がめちゃくちゃカッコよかった!輝くばかりのスター性、スクリーンに登場した瞬間に、あぁ、もうこの人しかおらんやろーと思ったのは、『太陽の季節』の石原裕次郎以来。はじめの3分間の息もつかせぬ狩猟シーンで一気に惚れた〜。ほぼ全裸で森や川を俊敏に駆け巡る野生動物みたいな肉体の美しさよ!観終わったあとに、この前半部分だけもう一回観たもんね(笑)。

 原住民の小道具とか、衣装を観てるのも楽しい。烏來のタイヤル族博物館で見たのと同じ口琴、三日月形の刀、織物。白い岩肌の色した簡単服に縞模様のストール、あれすごい動きやすそう。一枚ほしい。霧深い台湾の森に溶け込む感じとか、いつまでも観てられる。

第二部は、ほとんど蜂起からの戦闘シーン。戦闘シーンっていうのは人間をモノみたいに撮り捨てていく感じが苦手なんだけど、でもこれハリウッド映画じゃないんだよ。あの小さな島国からこのスケールの映画が出てきたってことに感激して、やっぱり最後まであっという間だった。どんなに侵略者に破壊されても、天上の祖先のもとへ渡る虹の橋だけは誰にも破壊できないさ、というクライマックス。
 
ところで、事件の陰にソチンありと私は思っているんだけど(隠居調べ)、霧社事件の引き金になったのは、とある日本人巡査。こいつが超ソチンで、ふだんからいばりちらしてる上に、原住民の結婚式を通りかかったとき、もてなしの口かみ酒を拒否って原住民を殴打。虎の威を借り、自分が偉いと勘違いするソチンは、いつか絶対なんかやらかすんですよ。ソチンに権力与えたら、ダメ絶対!ってこれ何の話……?
 
とにかく観てよかった、これからの台湾映画界が何を観せてくれるのか、本当に期待してる。