これまで三大栄養素のうち炭水化物とたんぱく質についてお話してきました。

今回は残る一つ、脂質のお話です。

 

脂質というとカロリーが高く、太りやすいイメージが大きいでしょうか。

確かに三大栄養素の中で1gあたりのカロリーが最も高い脂質。知らんぷり

 

実はこの脂質には体を構成するという大切な役割もあります。

 

脂質には

①中性脂肪②リン脂質③コレステロール④遊離脂肪酸

の4種類があります。指差し

 

 

食べ物に入っているのが中性脂肪。もぐもぐ

中性脂肪はグリセロール(グリセリン)という多価アルコールに

三つの脂肪酸がついた形をしていて、エネルギーになる脂質です。

 

 

食事でとった中性脂肪は胆のうから出た胆汁酸で乳化され、ミセルになります。

(ミセルとは水に溶けやすくなった状態のこと)

膵臓から出るリパーゼ(脂質の消化酵素)で二つの脂肪酸が切り離され

小さくなった形で小腸に取り込まれます。

 

 

この時脂溶性ビタミンも一緒に体内に取り込まれます。

このため、脂溶性ビタミンA,D,E,Kをサプリで摂る時は食後がおすすめ。

脂溶性ビタミンの吸収には胆汁酸と膵臓のリパーゼが大切です。指差し

 

 

切り離された脂肪酸はリンパから血管を通り、脂肪細胞に貯蔵され

必要に応じて分解され、遊離脂肪酸となりエネルギーとして使われます。

 

 

グリセロールは解糖系で代謝され、脂肪酸はβ酸化を受け、

カルニチンの働きでミトコンドリアに入ってアセチルCoAになり、

TCA回路、電子伝達系に入りATPを生みます。

(この時生まれる脂質の代謝産物がケトン体です。)

 

 

リン脂質は細胞膜を構成する脂質です。指差し

先ほどのグリセロールに二つの脂肪酸とリンと塩基がくっついています。

グリセロールの部分は親水性(水に溶ける)で脂肪酸は疎水性(水に溶けない)。

二つの性質を持ち、細胞内(油が多い)と外(水が多い)を隔てる働きをしています。

 

 

コレステロールはエネルギーにはならず、ホルモンの材料になったり、

胆汁酸の材料となり脂肪の吸収を助ける働きがあります。指差し

胆汁酸を作ることでコレステロールを下げる作用につながります。

 

 

 

 

中性脂肪にもリン脂質にも脂肪酸が入っていますが、

この脂肪酸はいくつか種類があり、長さや結合の種類、結合の場所によって分類されます。

 

①脂肪酸の長さによる分類

 

短鎖脂肪酸は短い脂肪酸で腸のエネルギーになります。

バターに含まれる酪酸などがそうです。

 

中鎖脂肪酸はエネルギーに使われやすい脂肪酸で、

リンパを通らずに門脈から肝臓に運ばれ、素早くエネルギーになります。

カルニチンがなくてもミトコンドリアに入ることができ、

長鎖脂肪酸の10倍速く代謝されると言われています。びっくり

ココナッツオイルのカプリル酸・ラウリン酸などがそうです。

 

長鎖脂肪酸はエネルギー貯蔵に適しており、脂肪組織に運ばれます。

サラダ油に含まれるリノール酸やオリーブオイルのオレイン酸がそうです。

 

②結合の種類による分類

 

脂肪酸は炭素と水素が多く結合していますが

二重結合という炭素同士が二重に結合している部位があるものを

不飽和脂肪酸といいます。

 

ひとつあるのが一価不飽和脂肪酸。

 

二つ以上が多価不飽和脂肪酸。

 

全くないのが飽和脂肪酸。

 

脂肪酸が長くなるほど二重結合ができる確率が高まるのか

長鎖脂肪酸に不飽和脂肪酸が多い傾向があります。

 

二重結合があるほど脂質は柔軟性が高くなりますが、酸化しやすく安定性は低くなります。

全くないと安定性が大きく、酸化しにくい性質を持ちます。

 

③二重結合の位置による分類

 

不飽和脂肪酸の二重結合がメチル基(炭素+三つの水素)から数えて何個目かで分類します。

 

3個目にあるのがオメガ3系。炎症や血栓を抑制する働きがあります。

魚油に多いEPAやDHA、亜麻仁油やえごま油に多いαリノレン酸です。

 

6個目にあるのがオメガ6系。炎症や血栓を引き起こします。

大豆油やコーン油、サラダ油に多いリノレン酸です。

 

9個目にあるのがオメガ9系。LDLコレステロールを下げる働きがあります。

オリーブオイルに多いオレイン酸です。

 

 

ものすごく種類がある脂肪酸。性質も様々ですね。キョロキョロ

同じ中性脂肪やリン脂質でも、ついている脂肪酸の種類によって性質が変わってきます。

 

 

細胞膜の材料のリン脂質には情報を伝える役割があります。

一部がちぎれ、エイコサノイドという情報伝達をする生理活性物質が生まれるのですが

それがオメガ3だと炎症を抑える性質の物質が

オメガ6の時は炎症を起こす生理活性物質が生まれます。

 

詳しくはこちらをどうぞ↓

 

 『食事で気を付けたこと⑤たんぱく質は魚がメイン』これまでお食事で控えたものについて書いてきましたが 前回までの記事『食事で気をつけた事①添加物フリー』結婚をきっかけに自分も今までのだめだめ生活を改めたいと思…リンクameblo.jp

 

 

 

 


また、細胞膜を固くしてしまう油にトランス脂肪酸があります。びっくり

 

トランス脂肪酸は植物油脂(大豆油やコーン油)に水素を付加したもので

自然界には存在しない脂肪酸。

不飽和脂肪酸なのに直鎖上で流動性が少なく

安定性が高いため、加工食品などによく使われます。

マーガリンやショートニング、ファットスプレッドがそうです。

 

 

トランス脂肪酸が細胞膜に使われると

細胞膜の変形や機能低下を招きます。ガーン

 

赤血球の細胞膜は固いと毛細血管に入り込みにくくなり、

酸素を届けられずミトコンドリア機能が落ちてしまいます。

赤血球の流動性の低下は冠動脈疾患のリスクを上げると言われています。

 

脳神経細胞の樹状突起も細胞膜が固くなると機能が低下し、

アルツハイマーのリスクを上げます。

 

リーキーガットやインスリン抵抗性の要因ともなります。無気力

 

 

 

アメリカでは2018年に食品の添加が禁止されたトランス脂肪酸。

諸外国でも上限値を設定したり、表示を義務づける動きがあります。

日本は特に規制がないので、成分表示を見て選びたいですね。指差し

 

 

脂質で気を付けるのは摂るといい油と避けたほうがいい油を取捨選択し

それぞれに合った使い方をすることだと思います。

 

 

例えば抗炎症作用の高いオメガ3脂肪酸は

多価不飽和脂肪酸で酸化しやすいため

加熱や長期保存を避けて保存することが大切です。

お魚は鮮度のいいうちに頂いて

亜麻仁油やえごま油は遮光して冷蔵保存するといいですよ。ウインク

 

 

 

 

素早いエネルギー補給にいい中鎖脂肪酸は

MCTオイルとしてすっかり有名ですね。

こちらも加熱すると煙がたつので、直火は避けて使います。

 

 

 

 

加熱料理には二重結合が0~1個のものが酸化しにくくおすすめです。

バターやココナッツオイル、ラードやオリーブオイルですね。

 

 

 

 

 

 

脂質の抗炎症効果はすぐには現れませんが

長期的にみるととても大切な働きです。

 

アレルギーやアトピー、がんやリウマチなど

慢性炎症由来の疾患にも非常に有効な方法と言われていますよ。ニコニコ