常識人の変な人 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

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志村けんさんが亡くなって、はや2ケ月が経った。

志村さんが、2002年に書いた本『志村流』が、

彼の没後、増刷された。

そこには、彼の「成功哲学」が網羅されている。

成功哲学と言っても、大袈裟なことではなく、

毎日の習慣や行動、仕事やお金に対する考え方を少し変えるだけで

成功に近づけるかもしれないと、ごくごく当たり前のことがいかに大事かと説いている。志村さんは、極めて「常識人」だったことがわかる。

礼儀作法や時間厳守、努力と忍耐、蓄積と継続が当たり前に出来て、

少しの才能と個性、決断力があれば、「今日より明日は、いい生活が出来るかもしれない」と謙虚だ。

志村さんは、どんなときも約束の10分前には到着するよう心掛けていた。「最低限のルールが守れない人間は成功しない。常識をないがしろにする人間は、常識を超えたことは絶対出来ない。常識の2~3割増しを意識していれば間違いない」。

ものつくりの個性はトンガっても、社会人としての常識は絶対欠かせない。「常識人の変な人」「個性は変人、常識は凡人」が目指すところだと言っている。

 

「素の志村」「芸人・志村」「キャラ・志村」の一人三役を生きていたわけだが、それぞれの志村を監視しながら、厳しく自己責任を果たすように心していたようだ。

芸人としては、常に質の高い笑いを提供するネタ作り、自分だけの確固たる笑いの世界をいつもキープすること、芸能界全体でのポジショニングを考えていた。自分に負荷をかけ続けてきた。自分が納得する笑いの基準のハードルを上げ続けた。その分、私生活では執着を捨てていた。

「すべてがジグソーパズルのように適材適所にはまってこそ輝く笑いが作れるというものだ。すべては完璧な下ごしらえがあってこそ。だが、それが見透かされるようではだめ」

 

昨日までの常識や当たり前のことが、今日すでに当たり前でなくなっているようなことがあると、コロナのことを予見するような記述もあった。

そんなときは、自分で自分を縛るのをやめて、感覚も常識も、人生設計も変えてしまえばいいと断じる。世の中の物差しが急激に変わるという現実を素直に受け入れることが出来るかが肝と言い切る。

志村さん自身は、変える前に命を奪われてしまい、さぞ無念だったことだと思う。

 

志村さんは、人間の一生を24時間に置き換えて、残された時間をいかに有効に使うかが大事だと考えていた。まだ残り時間があったのにと思うと残念でならない。