こんにちは。永松昌泰です。
さきほど、スコットのブログ
を読んで翻訳について書きました。
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-10875475361.html
翻訳とは「似たもの」にすることです。
そして、「似たもの」には、ピンからキリまであります。
「直訳」という「似たもの」と、
「人生の舞台、人生そのものを背負っている似たもの」との違いを、
夏目漱石が教えてくれたこと書きました。
これを書いている時に、思い出したことがあります。
翻訳ではないのですが、現在形を過去形に変えることについて、
忘れられない超弩級のエピソードがあります。
このエピソードの出処については、
立教大学時代の追試問題だったという説もあり、諸説あるようですが、
「長嶋さん大好き」の徳光さんが書いていたエピソードの方を採ります。
長嶋が、巨人の監督を解任された後の80年代、
テレビのバラエティー番組にも出演していた時の話です。
あるクイズ番組で、最初は真面目な問題が出ました。
次の英語の文章を過去形に変えなさい、という問題です。
「 "I live in Tokyo." という文章を過去形に変えなさい」
という問題です。
ゲストの方々は、皆さん優秀な方ばかりで、
皆さん、なんでもない、という感じで スラスラと、書きました。
そして、一斉に、全員の答えが紹介されました。
I lived in Tokyo.
みんな正解! と思ったところ、
長嶋茂雄だけ、違う答えです。
I live in Edo.
みんなあっけにとられた後、ゲラゲラと笑い出しました。
というエピソードです。
しかし、これはすごい!ですね。
こんなすごい答えはめったにありません。
もう時空ごとワープしたような、凄まじい過去形です。
しかも、現在形をとりながら、過去にするという、
信じられないような離れ業。
長嶋茂雄は、本当に天才です。
まるで禅の「公案」のように、
「問い」に対して、自分の全存在をかけて対峙して初めて見えてくるような、
そういう凄まじい答えです。
この答えに比べると、
I lived in Tokyo. という答えは、
単なる「小手先の操作」のように感じます。
もちろん答えではあるのですが、
答えのレベルが違いすぎるのです。
ちょうど、「私はあなたを愛しています」と、
「君がいると、月が綺麗ですね」との違いのように、
まったく格が違うのです。