十代から二十代にかけて活躍した加山雄三と吉田拓郎が第一線から退いた。
記事には「引き際の美学」という言葉が多く用いられていた。
最初から趣味も仕事やる気もない寄り道人生の野人は引き際の美学など持ち合わせていないが、引き際の武士道学、つまり武学があった。
引き際の武学 名前は勇ましいのだが中身が伴わない。
ヤマハに23年在籍、その引き際はすべてイチャモン付き。
在籍中に辞表を3度出した。辞意の打診を入れれば4度だな。
1度目の辞意は29歳の時に入社時の予定通りに。
サラリーマン生活は4年と決めていたからであり、既に5年目。
支配人は決済出来ず、本社にお伺いを・・
「大塚君 ダメだって~」
「ダメって・・それだけ?」
「何考えているんだ バカ・・って」
「・・・ ・・」
やはり、
辞める理由が「仕事飽きた 退屈」・・では迫力も美学もなかった。
何が何でも辞めるという意志の強さがなかった野人は・・
「あ・・そう・・」 で この話は終わった。
最初に正式辞表を出したのは30過ぎ。
この時は確固たる覚悟で会社に迷惑がかからないように出した。
本社から社長が来て説得したが野人の意思は変わらず武学を貫いた。
詳細は省略するが、○○団相手に一戦交えるつもりで最強の武具も考案制作した。
「わかった 本物の弁護士を付けてやる」
この言葉に懲役覚悟の野人は感謝した。
すべて治まり、無血解決というやつだな、会社と社長へお別れのあいさつに出向くと、「何のことだ?」と、おとぼけ・・辞表は受理していなかった。
2回目の辞表は、小型船の1級免状を持って夏休みに船長として働いていた20歳のアルバイトスタッフをボートの事故で死なせてしまった時。 2年連続でキャリアも十分だったが・・
十数人のマリンスタッフに対して死守10か条のマニュアルを作り、運航に関しては4項。
一個でも破ったら「野人の拳かクビ、どちらか選べ」という強烈なもの。
その中には「女性客へのナンパ活動厳禁」というのもあったな。 マニュアルが完全でも事故は防げなかった。
取り調べ官が・・「4つの内の1つでも守っていたらこの事故は・・」
海上保安部の検証は短時間で終わり、見たことがない完璧な安全運航マニュアルと感心された。
法的な落ち度はなくとも前途ある若者を死なせたという道義的責任がある。
この時もまた辞表は受理されず戻って来た。
それからしばらく横浜まで彼の墓参りに足を運んだ。
3回目の辞表は希望退職制度ゆえに受理され、23年間の社員生活は終わった。
しかし、これまで同様にすんなりとは通らなかった。
ヤマハリゾートの社長から浜松本社まで呼び出され、考え直すよう説得された。
「何で辞めるんだ、困るんだよ、何か不満でもあるのか」
「希望退職制度だし 自由が欲しいから・・」
「お前ほど自由にした奴はヤマハ中探してもいない、昔からタイムカードは打たん、出退社は自由、提出物出さん、会議出ない、会議のたびに船で釣りに出るか山に入る・・」
かくしてお野人はやっと会社から解放された。
4年で辞める予定が23年・・
仕方なく寄り道にしては長かった。
それもまた人生であり、気にすることでもない。
人間、適当のほうが中立的なバランスが取れている。
引き際の美学ではなく武学・・
スパ~~っと気分よく引く美学はなかったが、武学はあった。
ヤマハに入社した以上、野人を強引に入社させた社長・じいさまに仕えるのは当たり前。待遇・命令に文句を言わず命がけでじいさまの夢の実現の為に働いた。
最初の辞意はいい加減だったが、最初の辞表は野人の生き方の問題であり会社は関係がない。
「お前は月光仮面か」と叱られたが、「そう~」と答えた。
「これまでの人生・実績を棒に振るのか」と言われ、「たかがヤマハじゃないですか」と答えると「コノヤロ」・・と激怒。
30代半ば、「2事業所掛け持ちで課長やれ」と命令された時、「勤務中に自由にパチンコ行けないからヤダ」と返答したら・・ 「お前はバカか~ もう知らん」
「たかがヤマハ」・・入社時から退社時までそう思っていたが、十分恩返しは済んだと思っている。 誰もやれない危ない仕事は必ず野人に回って来る。
用心棒稼業、サメの海で危険な単独潜水、黒潮本流を自在に走り回り、磯を荒らしまわる海賊瀬渡し船長、サラリーマンの仕事ではないな。
最初に仕えたじいさまが一線を退いてからも釣りの相手をし、息子の川上浩・元ヤマハ社長夫妻も何度かビレッジへ来てくれた。
お世話になったヤマハ発動機元社長も食べに来てくれた。
今年の2月も予約してきたが、「寒いし、休日だから・・」と断った。
武士道ともややことなる野人の武学、たった一人の武士道。
わかり辛いだろうが心はその人だけのもの。
理ではないのだから理解は困難。
真面目・努力とは縁がない怠け者
月光仮面 デリンジャラスむー 自由人
あれも野人 これも野人 きっと野人・・
仕方なく入社したヤマハは結構面白かったが、仕方なく興したこの会社も面白い。
やっと人生の折り返し点に到達したばかりだ。
これからもっと面白くなるだろう、きっと読者も・・
川上浩夫妻 むー農園
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