東京ステーションギャラリーで開催中(2024年2月23日~4月14日)の「生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真」展を観に行って来ました。

 

 

安井仲治(なかじ)の作品を観るのは初めてだと思います。

 

大正から昭和の戦前を生きた写真家です。

 

38歳という若さで早世してしまい、写真家としての活動は約20年間と短いものでした。

 

亡くなってしばらくは忘れ去られていたようですが、1980年代になってから回顧展が開かれ、再評価がされてきたという経緯があります。

 

本格的な回顧展は、20年ぶりの開催とのことなので、これまでに触れる機会がなかったのも、頷けます。

 

観ての感想としては、今でも古さを感じさせない斬新な作品が多く、日本写真史のパイオニア的な存在だったことが分かりました。

 

本展では、”日本写真史において傑出した存在”、”日本近代写真の金字塔”と評しています。

 

題材、構成、技術ともに写真を芸術に高めるべく新しいものにチャレンジしたことが伝わってきました。

 

写真というよりは絵画のようであり、写実というよりも象徴主義的で内面にある本質をあぶり出そうとしているような作品です。

 

 

この作品などは凝った構成に仕上げています。ただ写真を撮影しただけでは作れません。

≪即興≫ 1935年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 

時代を写すものとしてメーデーの集会の様子を撮影した作品は、参加者の息遣いが伝わってくるようです。

≪旗≫ 1931年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 

労働者の鋭い眼差しを都市の風景と組み合わせて作品を構成します。

≪凝視≫ 1931年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 

社会性のあるテーマとしては、ヨーロッパから迫害を逃れて神戸にやってきたユダヤ人の姿を被写体にしています。

 

窓の片隅から顔が垣間見える姿にユダヤ人の不安な心情が象徴的に表現されています。

しかし構図が斬新すぎます。

≪流氓ユダヤ 窓≫ 1941年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託) 

 

こちらは逆にストレートに子供の鋭い視線を写しています。

≪流氓ユダヤ 子供≫ 1941年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 

 

山根曲馬団というサーカスの人々を写した連作もあります。

 

これは、ピカソがサーカスを題材に描いたことを意識してのことでしょうか?

 

≪道化≫ 1940年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 

こちらは構図が大胆です。

≪馬と少女≫ 1940年 個人蔵(兵庫県立美術館寄託)

 

会場では写真撮影は禁止でした。写真はパンフレットから引用させてもらいました。