FEELING AROUND / 鈴木みのり | A Flood of Music

FEELING AROUND / 鈴木みのり

 鈴木みのりの1stシングル『FEELING AROUND』のレビュー・感想です。表題曲は現在放送中のTVアニメ『ラーメン大好き小泉さん』のOP曲となっています。

FEELING AROUND/フライングドッグ

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 本作はデビューシングルという扱いではありますが、鈴木みのりさんは既に『マクロスΔ』のフレイア役としてお名前が通っている方で、同作品から生まれた音楽ユニット・ワルキューレの一員でもあるため、彼女が参加した作品については当ブログでも過去にレビューを行っています。

■ 『絶対零度θノヴァティック/破滅の純情』(2016)
   (同記事内に『Walküre Attack!』のレビューを含む)
■ 『Walküre Trap!』(2016)
■ 『ワルキューレがとまらない』(2017)

 参考までにリンクしておきましたが、要するに彼女の歌手としての素晴らしさは重々承知の上で、改めて本作のレビューに入りますという宣言です。

 余談ですが、ワルキューレメンバーの個人名義(ソロ)作品については、東山奈央『イマココ/月がきれい』(2017)JUNNA『Here』(2017)、非単独記事ですが安野希世乃「ちいさなひとつぶ」(2017)に言及しているので、あとは西田さんがソロデビューすれば網羅することになりますね。




 『ラーメン大好き小泉さん』という作品には今回のアニメ化で初めてふれました。前にドラマ化(2015年)されていたのをたまたま観たような記憶はありますし、ネット上で話題になっていたのもその頃だった覚えがあるので、アニメ化のタイミングとしてはやや遅い気がします。しかし漫画原作はやはり実写化よりもアニメ化の方が嬉しいという認識なので、ファンの根強い支持があったのだろうと推測。

 キャラとしてはめげない悠ちゃんがいちばん好きです。現実逃避まがいのポジティブシンキングでストーカーばりの行動力を見せる彼女が居るからこそ、小泉さんの孤高っぷりが際立っていますよね。ラーメン描写もきちんとしている(ように思える)ので、内容にも惹き込まれる点があって良い。放送時間帯的には飯テロとしか言いようがありませんが。笑


 前置きはこのくらいとし、インストを除く全3曲を見ていくとしましょう。ちなみに本記事のブログテーマが「フレデリック」になっているのは間違いではなくて、これに関しては以下01.の項で説明を行います。


01. FEELING AROUND



 TVアニメ『ラーメン大好き小泉さん』OP曲。本作を買うに至った理由は、勿論楽曲自体を気に入ったからというのが大きいのですが、歌手としての才は既に折紙付と言える鈴木さんによるナンバーだからというのも当然あります。…が、それよりも更に購入の後押しとなったのは、作詞と作曲を三原康司さんが手掛けているという点です。

 以下更に掘り下げていきますが、直下の文字サイズが小さいセクションは裏話的な突っ込んだ内容となっているので、興味のある方だけお読みください。

 三原(康)さんはバンド・フレデリックのリーダー(ソングライティング担当)で、当ブログでは『かなしいうれしい』(2017)の記事にて初登場、その後『TOGENKYO』(2017)もレビューしている通り、アーティストレベルで好みの存在です。アニメ(『恋と嘘』)から存在を知った僕が言うと順序がおかしい気がしますが、こうしてアニメへの進出が増えてきているのは喜ばしいと言えます。A-Sketchは元よりアニメ方面に力を入れている印象ですけどね。

 企業名を出したついでに書きますが、【アニメ1話OPの楽曲クレジットが出る前の時点までで「これめっちゃ好きなやつだわ」と思う → クレジットが表示されたことで馴染みのある人によって書かれたものだとわかる → その出来の良さに大いに納得する】というパターン、フジファブリックが楽曲制作を担当した中島愛「サタデー・ナイト・クエスチョン」(2017)と全く同じ気に入り方だと思いました。笑

 奇しくも同じflying DOGレーベルの作品なので、JUNNAの記事で自虐的に書いた「フライングドッグの使者説」をまたも補強しかねない感じですが、レーベル単位で高く評価しているのだと素直に受け取っていただけたら幸い。おそらくバンド(トラックメイカー)と声優歌手との橋渡しが上手な企業なのでしょう、ゆえに両方好きな僕みたいなタイプには堪らないという道理ですね。



 フレデリックの三原(康)さんが骨子を作った曲だけはあって、主旋律(ボーカルライン)の至る所にフレデリズムというか三原節を感じることが出来ます。

 共感を得られるか微妙な表現をしますが、山なりの感があるAメロ前半("習慣づいた"~"吸い込まれ")には安定の美しさが宿っていると思いますし、リフレインするパート("止まらない")を挟んだ後に、ザクっと切り落とすようなメロディに移行する("もう止められそうにないな"の特に"ないな"の部分)という、この音運びが流石としか言いようがありません。

 以前にも書きましたが、僕はフレデリックの楽曲に関してはとりわけAメロの綺麗さを評価していて、キャッチーなサビメロやユニークな歌詞の陰に隠れて良い仕事をしていると思っています。この曲もその例に漏れず、Aメロが最も好きなパートでした。2回目でメロが変わる("あぁ妄想"~"大丈夫")のも飽きさせないつくりで素敵。


 サビも例に違わずひたすらキャッチーです。同一フレーズの繰り返しで畳み掛ける感じは実にフレデリックらしいなと。それが鈴木さんのフレッシュな歌声にもマッチしていますし、アニソンとしてのポップさも申し分ないので、提供楽曲としてのクオリティの高さも含め、デビュー曲に相応しいものだと誇れると思います。

 サビに限れば"全部残さないで"のところが非常にツボです。ここだけ他の旋律に比べてややエッジィというか、鈴木さんのボーカルがセクシーに感じられるので、ラーメン完食(完飲)後の充足感や官能感が漂っている気がしてゾクゾクすると表現したい。


 ここまでのレビュースタイルだと半ばフレデリックの楽曲紹介みたいになっているので、以降は作詞作曲以外の面を詳しく見ていきます。要するにアレンジ面ですが、編曲も非常に素晴らしいのです。

 その気合いの入りっぷりはクレジットからも読み解くことが出来ます。田中ユウスケさん・立崎優介さん・近藤隆史さん、ホーンアレンジ(田中さんと共同)も含めれば武嶋聡さんと、都合4名がアレンジャーとして記載されているので、楽曲が多層的になるのも頷けますよね。

 田中さん(Q;indivi)はYUKIやMEGの楽曲で個人的に耳馴染みがあった方ですが、一応調べたところ立崎さんと近藤さんとの共同ワークスは他にも存在するので、元より連携の取れた布陣なのだろうと理解しました。agehaspringsとQ.,Ltd.も関連会社みたいですし。また、武嶋さんはテナーサックスでプレイヤー参加もなさっている通り、奏者としての活躍がメインであるように見受けられます。


 イントロの中華風のギターとホーンセクションのギラギラ感は、まさにラーメンサウンドとしか言いようのない鉄板の解釈で安心。そのままチャイナ調で突き進むのかと思いきや、歌が始まるとバックのダンサブルなシンセの印象が強くなって、ニューウェイヴな趣が醸され始めるというのが凄く格好良い。

 とは言え、オリエンタルな要素はウワモノとして鳴っているシンセに控えめに受け継がれているので、全体的な印象は統一されていると感じます。サビ後の「チャラララチャンチャラン♪」に自然な疾走感が生まれているのもこのためでしょう。


 真に意外なのは2番後の間奏部です。きつくなるフィルターをバックに"変わらないように"がリピートされ、そのままボーカルチョップが鮮やかなセクションに突入するところは、エレクトロポップの(或いはボカロ楽曲的な)作法が入ってきて急に現代的になったように思えます。

 その後のギターソロにも痺れる。途中からシーケンスフレーズに移行している(重なっている?)のかギターの音に残響系のエフェクトをかけているのか…よくはわかりませんが、スピーディーで気持ちの好いアレンジです。


 そして何と言っても落ちサビとラスサビを繋ぐ「ちゅるっ♡」の可愛さよ。歌詞にないパートなので勝手にハートマークを付けてしまいましたが、これはランカの「キラッ☆」みたいなものだろうと思ったがゆえです。笑

 本作はとらのあなで購入したのでメッセージ付きのブロマイドが付いてきたのですが、そこには鈴木さんからの「ラーメンをすすりながら聴くべし!」というアドバイスがあるので、この「ちゅるっ♡」はいいアクセントですね。


 鈴木さんの実質的なデビューソングはフレイアがメインボーカルを務めた「ルンがピカッと光ったら」(2016)だと認識していますが、同曲もまたホーンセクションが特徴的な仕上がりを見せていました。「ホーンが映える歌声の持ち主なのかも」という判断でデビュー曲にもこれを取り入れたのならば、ナイス判断と言うほかありません。


02. 好きなものは好き!

 c/w一曲目は、ちょうど曲名を出したばかりの「ルンピカ」と同じく、作詞:西直紀|作編曲:コモリタミノルによるナンバーです。この曲にもまたホーンが取り入れられているので、フレイアで培われた好印象を素直に取り入れているのだと受け取りました。

 歌詞・メロディ・アレンジの何処を取ってもノスタルジックなところが好みです。90年代後半からゼロ年代前半ぐらいの感じがしません?その年代に放送されていたアニメのED曲やキャラソンにあってもおかしくなさそうだという意味での感想ですが、ひどく主観的なので異論反論はあって当然だと言い訳。

 歌詞にはネガティブな要素(と通常見做されるようなもの)があっても「好きなものは好き!」だという前向きな姿勢が描かれており、恋愛の解釈を取るのが自然な内容ではありますが、たとえば音楽の好みなど人以外に対する嗜好に当てはめてみても素敵だと思います。


03. 20才の約束

 c/w2曲目は、作詞を鈴木さん自らが手掛けたナンバーです。タイトルの通りですが、2018年現在20才である鈴木さんの決意表明とも取れる等身大の内容になっています。

 念のためJASRACのデータベースで正題を確認しましたが、曲名の読みは「はたちのやくそく」でいいっぽいです。「にじゅっさい(にじっさい)」では語呂が悪いですもんね。笑 ここから更に検索したところ、鈴木さんのブログ(2017/11/28)にも読みが「はたち」である旨が書いてあったので、間違いありません。

 素直な歌詞に合わせてかアレンジもナチュラルです。作編曲者である鈴木智文さんがエレキとシンセも担当なさっていますが、メインは石成正人さんによるアコギの優しいサウンドなので、すっと心に沁み入って来ます。


04.~05.は、01.~02.の「-Instrumental-」です。


 以上、インストを除いて全3曲でした。聴けば聴くほどに深みが増すというまさにラーメンのような中毒性を誇る01.、ワルキューレ(フレイア)っぽいニーズにはお誂え向きの02.、鈴木さんのストレートな感性と歌声をそのまま堪能できる03.と、三者三様に魅力を引き出すことに成功していると思います。


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