
TOGENKYO / フレデリック
フレデリックのミニアルバム『TOGENKYO』のレビュー・感想です。フルアルバムからはちょうど1年ぶり、ミニアルバムとしては約2年ぶりの作品となります。
TOGENKYO 通常盤CD/A-Sketch

¥2,376
Amazon.co.jp
僕にとってフレデリックは最近になってハマったバンドです。ということで紛うことなきニワカなのですが、かなしいうれしい』(2017)のレビュー記事の中で「過去作に手を出すことは確定」と書いた通り、この短期間で殆どの作品は一応揃えました。フルアルバム1枚・(本作を除く)ミニアルバム4枚・シングル2枚という内訳で、ライブ会場限定盤等の初期作は未所持といった具合。
こうして過去作をまとめて聴いた結果、期待通りの高い音楽性を備えたバンドであるという評価になり、現在進行形でますます好きになっている最中なのです。その魅力について色々と言葉を尽くしたいところですが、端的にまとめるならば「故きを温ねて新しきを知るバンド」だと表せると思います。
参考までに特に気に入っている曲をリリースの古い順に列挙してみますが、「うわさのケムリの女の子」(2014)、「オワラセナイト」、「真っ赤なCAR」(共に2015)、「オンリーワンダー」、「CYNICALTURE」、「ふしだらフラミンゴ」(3曲全て2016)、「かなしいうれしい」(2017)の7曲は、それぞれが異なる手腕でもって僕のツボを刺激してくれました。
曲名を列挙することでニワカなりに大好きなのだということは伝わったと思うので、さも昔から聴いていたかのようにしれっとレビューに入りますね。笑
01. TOGENKYO
表題曲で幕開け。MVもあるので本作のリードトラックと言えるでしょう。主にサビから受ける印象ですが、「オンリーワンダー」系統の疾走感を纏った曲だと思いました。
自身の中に眠る楽園について歌った含蓄のある内容で、ポップなメロディから微かに感じられる切なさは、この内省的な歌詞によって一層際立っていると受け取れます。以下、ちょっと説教じみた歌詞解釈を書いてこの点を補強していくので注意。
歌詞で特に好きなのは、サビの"悲しくたってそんな顔みせずに笑って過ごしてんだ"という一節です。別にこの表現自体を斬新だとは思いませんが、現代社会に於いてはこの事実を忘れてしまっている人が多いと感じているので、今こう歌い上げることには特別の意義があると主張します。
偏見が入りますし特定の人物像をディスるような内容を書きますが、安易に「偽善が嫌い」だの「優しさが信用出来ない」だの宣うような人ほど、自信に向けられた好意の裏に何があるのかを想像していないという、独り善がりな面がある気がします。たとえ誰かの好意が鼻に付いたとしても、「諸々を経た上で出たものだったのかも?」と頭を巡らせば、その誰かに「自分とは違う」というレッテルを貼ることを良しと出来ないはずです。
"僕の最低でとても単純な揺れる感情"、"とっかえひっかえやっちゃった君の折衷案"、"損得だって私欲だって楽園は君にあったんだ"あたりのフレーズには、常に一本調子の人などいないという当たり前が描写されていると解釈しますが、これを忘れて人や物事を二分法的思考でのみ判断していたら、さぞかし生きづらいのではないでしょうか。それこそ最も"桃源郷"から遠ざかるスタンスなので、そういうのは止めにしようというメッセージが込められていると僕は理解しました。
あとは細かいツボですが、1番Bの"もう嫌になっちゃうわ"の"嫌"を「(い)やん」と発音しているところに、本心からの嫌々感が醸されていて好きです。笑
02. スローリーダンス
フレデリックお得意の懐かしさが漂う、雨のダンスナンバー。こういう昔に連れ戻してくれるような楽曲が多いところが、僕が彼らの音楽性を気に入ったいちばんの要因かもしれません。メロディのアンニュイさや楽器の音ひとつひとつのどれをとっても、実にオールド&レイニーで表現力が高い。
年齢的にフレデリックの面々は僕の一つ下なのでほぼ同世代と言っていいのですが、リアルに体験して鮮明に覚えている懐かしさというよりは、朧気に耳に残っていたものを具象化したといった追体験的な感覚に浸れるのが堪らないんですよね。もっと若い世代にも人気があるようですが、その場合は「一周回って新しい」の感覚だと思います。
メロディでお気に入りなのはAメロ部で、特に2番は"雨の中で踊る事に喜びを知る意味がある"という本能的な歌詞とあわさって、浮遊感のある旋律がより浮足立って響いてきて素晴らしいです。
キャッチーなサビメロの曲が多いため印象に残りにくいかもしれませんが、フレデリックの曲は何気にAメロに美しさが宿っているものが多いと思っていて、そこも高く評価してるポイントです。例えば冒頭で挙げた7曲の中では、「うわさのケムリの女の子」と「真っ赤なCAR」のAメロは神懸っていると絶賛します。特に後者は最初の一回しか出てこない儚さも良い。
脱線したので戻しますが、フェードアウト終わりというのもいいですね。以前にも何処かの記事で書いた気がしますが、今って昔に比べてフェードアウトで終わる曲が凄く少なくなったと感じるんですよ。そりゃライブでは不便でしょうけど、段々小さくなる音の中で微かに演奏が聴こえるという、音源ならではの美学を捨てていないところにも好感が持てます。
03. かなしいうれしい
シングルリリース時にレビューした記事があるので、詳しくはそちらを参照してください。
ここで一つ付け加えるとしたら、この「かなしいうれしい」はそれまでの楽曲にはなかったタイプの新機軸トラックであったのだと、過去作にまで手を出した今ではそう思います。
04. たりないeye
最初「セーターを脱がさないで」(2015)が始まったかと思って驚きましたが、本作中で最も気に入った曲です。笑 これまた懐古のセンスが光る切ないナンバーで、02.よりはラブの趣が強い気がするところがロマンティックで素敵。
フックとなる"足りない"のパートは、コーラスワーク的なポップさのある旋律と艶っぽい美メロの応酬が堪りませんね。"景色"→"世界"→"宇宙"とどんどん肥大していく歌詞も、翻って"足りない"が強調されていて巧い。
続く"なぁなんもわかっていないくせに"のところはちょっと意外でした。このフワフワした曲の中では泥臭く感じるというか、地が出ていると解釈すれば収まりがいいでしょうかね。欲求が表れている歌詞ですから。
サビは歌詞もメロも流麗で誉めるところしかないのですが、ここに宿っているキラキラ感を最も効果的に演出しているのは、左で鳴っているセンチメンタルなギターだと思います。楽器も歌っているんだということがわかる演奏は至高。
05. ミッドナイトグライダー
これも懐かしい系ですが02.や04.とは毛色が違いますね。孤高のヒーローソングのような…という形容が伝わるかはわかりませんが、ともかく男性的な世界観で構築されていると言いたかった。ローンウルフという言葉を出した方が時代に即しているかも。
"グライダー"の飛行感覚を"ヒュールリヒュルリラいのままいのまま遊泳"と描写しているのは面白いですね。ともすればダサいと受け取られかねない表現な気もしますが、メロディの音運びとよくマッチしているのでこれ以上ない的確な言葉繰りだと思います。この危ういラインを絶妙に放り込んでくるところもフレデリックの魅力のひとつではないかと。
続く短いBメロ部には張り詰めた空気が漂っていてはっとさせられます。この曲は全編に亘ってベースがひたすらにグルーヴィーで格好良いのですが、ここからサビへ突入するまでのスピーディーさこそが、この曲の中で最も好きなポイントです。
サビはまさに滑空していると錯覚するほどの高い表現力を誇っています。メロディの伸ばし方やコーラスワークが技巧的で、風を読んで進んでいる感じがよく出ている。動力源を持たないグライダーだからこそ、誰かや何処かに届いてほしいという願いをより強く発するのでしょう。
06. パラレルロール
歌詞に英語が登場するからというわけではありませんが、洋楽的なセンスでもって生み出された曲だという印象です。日本語よりも英語が合いそうなメロディを持っていますし、アレンジもオーバーシーズの雰囲気。
特にBメロ部が気に入っていて、シンプルというか直球なAメロとサビに挟まれているおかげで複雑さが明確になっているのにグッときます。かっちりとしたプレイスタイルが鮮やかですよね。
歌詞では2番サビの"揺らいだこの想いを/明快な正解は自分だと唸ってはさ転がってやろう"が好きで、01.「TOGENKYO」の項でも取り上げた"僕の最低でとても単純な揺れる感情をわかってくれよ"という歌詞と絡めた解釈が出来そうだと思いました。01.ではまだ他人の理解を欲していたのに、06.ではもうその次元になくただ己を信じるという境地に入っている感じ。
とはいえ2番サビの歌詞は最後の最後で"と言いたいけど"と含みを持たせてあるので、この煮え切らないところも人間臭くて素直だと思います。
07. RAINY CHINA GIRL
ラストを飾るはまさかのチャイナガール。言うだけあって中華風のサウンドを基調とするご機嫌なナンバーです。良い意味でチープな雰囲気が醸されているのも、失礼ですがチャイナ感の付与に一役買っているではないでしょうか。笑
特に2番サビ後の間奏(というか実質アウトロ)が好きで、バンド的な音作りからは遠ざかっているのですが、それが効果的に働いているパートであると評します。タイトルの通り、雨粒に光が反射しているような煌きと、中国女(こう書くとゴダール作品やYMOの楽曲を連想しますが)らしさをフレデリック流のアレンジで可憐且つポップに仕立ててあるところがお気に入りです。
内容を見ていくと、この曲に於ける"China"及び"CHINESE"は"向こう側"の象徴として使われている感じですね。アナザー・フェイスと言い換えてもいいかもしれません。"君も知らない君の向こう側"と結ばれているのは、自身の中に楽園を見出す01.「TOGENKYO」と同じ感覚かな。
以上、全7曲でした。平均的なレベルが高く粒揃いだという感想です。シングル曲の03.「かなしいうれしい」や表題曲の01.「TOGENKYO」はキャッチーでわかりやすい良曲だと思いますし、02.「スローリーダンス」や04.「たりないeye」は僕の個人的な趣味にとても合致している楽曲だったので評価も高くなります。
後半の05.~07.もそれぞれ個性的なナンバーで聴き応えがありますし、楽曲を跨いだテーマ性を感じさせるところもあり、ミニアルバムといってもしっかりとした世界観に基づいている一枚だと言えます。
TOGENKYO 通常盤CD/A-Sketch

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僕にとってフレデリックは最近になってハマったバンドです。ということで紛うことなきニワカなのですが、かなしいうれしい』(2017)のレビュー記事の中で「過去作に手を出すことは確定」と書いた通り、この短期間で殆どの作品は一応揃えました。フルアルバム1枚・(本作を除く)ミニアルバム4枚・シングル2枚という内訳で、ライブ会場限定盤等の初期作は未所持といった具合。
こうして過去作をまとめて聴いた結果、期待通りの高い音楽性を備えたバンドであるという評価になり、現在進行形でますます好きになっている最中なのです。その魅力について色々と言葉を尽くしたいところですが、端的にまとめるならば「故きを温ねて新しきを知るバンド」だと表せると思います。
参考までに特に気に入っている曲をリリースの古い順に列挙してみますが、「うわさのケムリの女の子」(2014)、「オワラセナイト」、「真っ赤なCAR」(共に2015)、「オンリーワンダー」、「CYNICALTURE」、「ふしだらフラミンゴ」(3曲全て2016)、「かなしいうれしい」(2017)の7曲は、それぞれが異なる手腕でもって僕のツボを刺激してくれました。
曲名を列挙することでニワカなりに大好きなのだということは伝わったと思うので、さも昔から聴いていたかのようにしれっとレビューに入りますね。笑
01. TOGENKYO
表題曲で幕開け。MVもあるので本作のリードトラックと言えるでしょう。主にサビから受ける印象ですが、「オンリーワンダー」系統の疾走感を纏った曲だと思いました。
自身の中に眠る楽園について歌った含蓄のある内容で、ポップなメロディから微かに感じられる切なさは、この内省的な歌詞によって一層際立っていると受け取れます。以下、ちょっと説教じみた歌詞解釈を書いてこの点を補強していくので注意。
歌詞で特に好きなのは、サビの"悲しくたってそんな顔みせずに笑って過ごしてんだ"という一節です。別にこの表現自体を斬新だとは思いませんが、現代社会に於いてはこの事実を忘れてしまっている人が多いと感じているので、今こう歌い上げることには特別の意義があると主張します。
偏見が入りますし特定の人物像をディスるような内容を書きますが、安易に「偽善が嫌い」だの「優しさが信用出来ない」だの宣うような人ほど、自信に向けられた好意の裏に何があるのかを想像していないという、独り善がりな面がある気がします。たとえ誰かの好意が鼻に付いたとしても、「諸々を経た上で出たものだったのかも?」と頭を巡らせば、その誰かに「自分とは違う」というレッテルを貼ることを良しと出来ないはずです。
"僕の最低でとても単純な揺れる感情"、"とっかえひっかえやっちゃった君の折衷案"、"損得だって私欲だって楽園は君にあったんだ"あたりのフレーズには、常に一本調子の人などいないという当たり前が描写されていると解釈しますが、これを忘れて人や物事を二分法的思考でのみ判断していたら、さぞかし生きづらいのではないでしょうか。それこそ最も"桃源郷"から遠ざかるスタンスなので、そういうのは止めにしようというメッセージが込められていると僕は理解しました。
あとは細かいツボですが、1番Bの"もう嫌になっちゃうわ"の"嫌"を「(い)やん」と発音しているところに、本心からの嫌々感が醸されていて好きです。笑
02. スローリーダンス
フレデリックお得意の懐かしさが漂う、雨のダンスナンバー。こういう昔に連れ戻してくれるような楽曲が多いところが、僕が彼らの音楽性を気に入ったいちばんの要因かもしれません。メロディのアンニュイさや楽器の音ひとつひとつのどれをとっても、実にオールド&レイニーで表現力が高い。
年齢的にフレデリックの面々は僕の一つ下なのでほぼ同世代と言っていいのですが、リアルに体験して鮮明に覚えている懐かしさというよりは、朧気に耳に残っていたものを具象化したといった追体験的な感覚に浸れるのが堪らないんですよね。もっと若い世代にも人気があるようですが、その場合は「一周回って新しい」の感覚だと思います。
メロディでお気に入りなのはAメロ部で、特に2番は"雨の中で踊る事に喜びを知る意味がある"という本能的な歌詞とあわさって、浮遊感のある旋律がより浮足立って響いてきて素晴らしいです。
キャッチーなサビメロの曲が多いため印象に残りにくいかもしれませんが、フレデリックの曲は何気にAメロに美しさが宿っているものが多いと思っていて、そこも高く評価してるポイントです。例えば冒頭で挙げた7曲の中では、「うわさのケムリの女の子」と「真っ赤なCAR」のAメロは神懸っていると絶賛します。特に後者は最初の一回しか出てこない儚さも良い。
脱線したので戻しますが、フェードアウト終わりというのもいいですね。以前にも何処かの記事で書いた気がしますが、今って昔に比べてフェードアウトで終わる曲が凄く少なくなったと感じるんですよ。そりゃライブでは不便でしょうけど、段々小さくなる音の中で微かに演奏が聴こえるという、音源ならではの美学を捨てていないところにも好感が持てます。
03. かなしいうれしい
シングルリリース時にレビューした記事があるので、詳しくはそちらを参照してください。
ここで一つ付け加えるとしたら、この「かなしいうれしい」はそれまでの楽曲にはなかったタイプの新機軸トラックであったのだと、過去作にまで手を出した今ではそう思います。
04. たりないeye
最初「セーターを脱がさないで」(2015)が始まったかと思って驚きましたが、本作中で最も気に入った曲です。笑 これまた懐古のセンスが光る切ないナンバーで、02.よりはラブの趣が強い気がするところがロマンティックで素敵。
フックとなる"足りない"のパートは、コーラスワーク的なポップさのある旋律と艶っぽい美メロの応酬が堪りませんね。"景色"→"世界"→"宇宙"とどんどん肥大していく歌詞も、翻って"足りない"が強調されていて巧い。
続く"なぁなんもわかっていないくせに"のところはちょっと意外でした。このフワフワした曲の中では泥臭く感じるというか、地が出ていると解釈すれば収まりがいいでしょうかね。欲求が表れている歌詞ですから。
サビは歌詞もメロも流麗で誉めるところしかないのですが、ここに宿っているキラキラ感を最も効果的に演出しているのは、左で鳴っているセンチメンタルなギターだと思います。楽器も歌っているんだということがわかる演奏は至高。
05. ミッドナイトグライダー
これも懐かしい系ですが02.や04.とは毛色が違いますね。孤高のヒーローソングのような…という形容が伝わるかはわかりませんが、ともかく男性的な世界観で構築されていると言いたかった。ローンウルフという言葉を出した方が時代に即しているかも。
"グライダー"の飛行感覚を"ヒュールリヒュルリラいのままいのまま遊泳"と描写しているのは面白いですね。ともすればダサいと受け取られかねない表現な気もしますが、メロディの音運びとよくマッチしているのでこれ以上ない的確な言葉繰りだと思います。この危ういラインを絶妙に放り込んでくるところもフレデリックの魅力のひとつではないかと。
続く短いBメロ部には張り詰めた空気が漂っていてはっとさせられます。この曲は全編に亘ってベースがひたすらにグルーヴィーで格好良いのですが、ここからサビへ突入するまでのスピーディーさこそが、この曲の中で最も好きなポイントです。
サビはまさに滑空していると錯覚するほどの高い表現力を誇っています。メロディの伸ばし方やコーラスワークが技巧的で、風を読んで進んでいる感じがよく出ている。動力源を持たないグライダーだからこそ、誰かや何処かに届いてほしいという願いをより強く発するのでしょう。
06. パラレルロール
歌詞に英語が登場するからというわけではありませんが、洋楽的なセンスでもって生み出された曲だという印象です。日本語よりも英語が合いそうなメロディを持っていますし、アレンジもオーバーシーズの雰囲気。
特にBメロ部が気に入っていて、シンプルというか直球なAメロとサビに挟まれているおかげで複雑さが明確になっているのにグッときます。かっちりとしたプレイスタイルが鮮やかですよね。
歌詞では2番サビの"揺らいだこの想いを/明快な正解は自分だと唸ってはさ転がってやろう"が好きで、01.「TOGENKYO」の項でも取り上げた"僕の最低でとても単純な揺れる感情をわかってくれよ"という歌詞と絡めた解釈が出来そうだと思いました。01.ではまだ他人の理解を欲していたのに、06.ではもうその次元になくただ己を信じるという境地に入っている感じ。
とはいえ2番サビの歌詞は最後の最後で"と言いたいけど"と含みを持たせてあるので、この煮え切らないところも人間臭くて素直だと思います。
07. RAINY CHINA GIRL
ラストを飾るはまさかのチャイナガール。言うだけあって中華風のサウンドを基調とするご機嫌なナンバーです。良い意味でチープな雰囲気が醸されているのも、失礼ですがチャイナ感の付与に一役買っているではないでしょうか。笑
特に2番サビ後の間奏(というか実質アウトロ)が好きで、バンド的な音作りからは遠ざかっているのですが、それが効果的に働いているパートであると評します。タイトルの通り、雨粒に光が反射しているような煌きと、中国女(こう書くとゴダール作品やYMOの楽曲を連想しますが)らしさをフレデリック流のアレンジで可憐且つポップに仕立ててあるところがお気に入りです。
内容を見ていくと、この曲に於ける"China"及び"CHINESE"は"向こう側"の象徴として使われている感じですね。アナザー・フェイスと言い換えてもいいかもしれません。"君も知らない君の向こう側"と結ばれているのは、自身の中に楽園を見出す01.「TOGENKYO」と同じ感覚かな。
以上、全7曲でした。平均的なレベルが高く粒揃いだという感想です。シングル曲の03.「かなしいうれしい」や表題曲の01.「TOGENKYO」はキャッチーでわかりやすい良曲だと思いますし、02.「スローリーダンス」や04.「たりないeye」は僕の個人的な趣味にとても合致している楽曲だったので評価も高くなります。
後半の05.~07.もそれぞれ個性的なナンバーで聴き応えがありますし、楽曲を跨いだテーマ性を感じさせるところもあり、ミニアルバムといってもしっかりとした世界観に基づいている一枚だと言えます。
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